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目指すは「野球界のフロントランナー」 西武・広池浩司球団本部長が見据える“球団のあり方”

 

 チーム名に「ライオンズ」を冠して75周年の埼玉西武ライオンズ。パ・リーグで最多優勝回数を誇る同球団は近年、運動数値も踏まえて評価する入団テストなど球界で新たな取り組みを行なっているが、どのような球団のあり方を目指しているのだろうか。今年就任した広池浩司球団本部長に聞いた。

影響力のあるチームに


影響力のあるチームになるためには、勝ち続けていく必要がある


――ライオンズは1980年代から90年代まで優勝を重ね、「黄金時代」「常勝西武」と言われました。その間にフリーエージェント制度の導入もあり、球界にはさまざまな変化がありますが、現在はどのような球団のあり方を目指していますか。

広池 すごく大きなところで言ったら、「野球界のフロントランナー」ですね。われわれの先進的な取り組みによって、いい影響を野球界のみならず、スポーツ界にどんどん波及させられるような、影響力のあるチームになりたいというところです。

――獅考トレーニング(思考トレーニング)やコーチの育成など、野球界が他競技に比べて「遅れている」と指摘されてきた部分の取り組みですか。

広池 そうですね。でも、これって本当に遠い理想で、弱いチームが何を一生懸命取り組んでいても、プロ野球の世界では影響力を与えることはできないですよね。なので、やっぱり勝たなきゃいけない。勝った中でみんなに振り向いてもらって、「ライオンズって何をやっているの?」となる。そこからだと思います。まずはプロ野球チームとして勝つこと。勝つことによってさまざまな取り組みを注目してもらって、スポーツ界に向けていろんな発信ができるようなチームになりたい。

 もう1つは、「育成のライオンズ」を確立することです。ドラフトで獲得した選手が投打ともにどんどんチームの主力になっていき、継続的に勝つチームとなるのが私たちの理想です。そこで足りない部分に関して補強していく。目指すのはそこです。

――過去数年、「ライオンズ、いい取り組みをしているんだけどな……」という声は少なからず聞きました。

広池 今、仕掛けていることが「実を結んだね」と言われるためには、やっぱり勝たないといけない。「弱いのに、何やっているんだ」ともとられかねない。実際、「(やるべきは)そういうことではないんだよ」という声も少なからずいただきました。そこは勝つことによって、両輪が回り始めるというか。「チームは強いし、こういう取り組みもしている」と。逆に、「こういう取り組みをしているから、強い」となるのか。勝つことで皆さんにそう考えてもらえるので、まず勝とうというのは正直あります。

芽吹き始めている育成の取り組み


――獅考トレーニングに取り組んだから勝利や育成にすぐに結びつく、というものではないと思いますが、一方で成果も感じていますか。

広池 今の選手たちの取り組みは、われわれの世代と全然違います。われわれは強制されることにすごく慣れているし、叱られる中で自分のやり方を見つけるのが当たり前でした。今の選手は自分で自分をやる気にさせて、さらに納得した上で体が動く。それが当たり前の時代です。いろんなコーチ、スタッフが頭をひねりながら、選手の自立を促しながら動かしていくことは継続的にやっていますが、同時に限界もあって。「ここはある程度強制しなきゃいけない」という部分もあるから、今後課題があるとしたら、そこですね。強制しなければいけない部分を見定めて、時には「よし、これやるぞ」と引っ張っていく。

 三軍の試合を見ていても、今取り組んでいることの成果が出て来ている選手もいっぱいいます。徐々にですけれども、育成の取り組みが芽吹き始めているのかなと感じています。

――指導者が選手にどこまで言うのか。今の時代は難しい部分もありますか。

広池 「これをこういう理由でやるんだ」とちゃんと述べた上で、「あなたはこれが足りないからやるんだ」と言うのは当たり前だと思います。ずっと待って寄り添っていても、気づかないことは気づかないと思うし。最初は気づいてもらえるようにやりますけど、気づかないのであれば、次の段階では「じゃあこういうやり方もあるぞ」と伝える。これは昨今のコンプライアンスとはまったく別の話。そこは何もためらわず、やるべきだと話しています。

――選手の気質が変わってきた以上、自分から取り組むように仕向けないといけない。その意味でコーチのレベルアップが必要になっていますか。

広池 コーチも学び続けることが非常に大事です。コーチングのスキルもそうですけど、データもそう。選手たちは学生時代からいろんな情報を持っているので、一緒に話ができるレベルにないとダメだと思います。情報過多になっている選手も多いので、取捨選択してあげられることも必要。そのためには全部知らなきゃいけない。そこで足りない部分はコーチだけではなく、スタッフがフォローしていく。

――コーチが選手を育てる、という時代ではなくなってきましたか。

広池 コーチは影響力として一番核になる指導者だと思いますけど、それ以外のスタッフも連携していく。特にファームはそういった体制でやっています。いろんな知識をみんなで補完しながら一人の選手としっかり向き合うことが、できるようになってきています。野球界だとコーチが上に立ってやっていくみたいな考え方がありましたけど、特にファームにおいては同じ立場で選手を育てていく。いい連携ができるようになってきていると思います。

取材・文=中島大輔 写真=BBM
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