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過小評価されている? 巨人で貢献度高い「縁の下の力持ち」は

 

スタメンマスクで存在感を発揮


「2番手捕手」としてチームを支えている岸田


 巨人の「扇の要」はFA移籍で加入した正捕手の甲斐拓也だけではない。6月に入り、4試合連続スタメン出場で存在感を示しているのが岸田行倫だ。

 来日3年目左腕のフォスター・グリフィンは今季7試合登板で4勝0敗、防御率0.92と抜群の安定感を誇るが、先発したすべての登板で岸田が先発マスクをかぶり、全幅の信頼を寄せられている。6月8日の楽天戦(東京ドーム)では春先から本来の投球ができず、ファーム降格を味わった戸郷翔征を好リードで引っ張り、7回3安打無失点の快投。打撃でも1点リードの8回二死満塁で藤平尚真が初球に投じた150キロ直球を左中間へたたき込む自身初の満塁アーチを放った。全5打点を挙げる申し分ない働きぶりで、交流戦初の2連勝の立役者に。

 試合後のお立ち台で性格が表れる。「(戸郷は)いや、もう完璧でしたね。真っすぐの精度も良かったですし、戸郷の持ち味であるフォークでも空振り多く取れていたので。今日はこっちのペースで試合を進められたかなと思います」と自身の活躍よりエースの復調を喜んだ。

いい緊張感の中で準備


 入団以来なかなか一軍に定着できなかったが、昨年は大きく飛躍した。自己最多の88試合出場で打率.242、4本塁打、26打点をマーク。守備面で巧みなリードに加えてリーグトップの盗塁阻止率.475を記録し、4年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献した。試合に出続けることでしか得られない経験がある。岸田は週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っていた。

「キャッチャーって、試合になったら“監督”と言うじゃないですか。でもそれって、やっぱりちょっと試合に出ただけじゃ分からないんですよ、そういうのって。出始めは周りも見れへんし、自分に必死なんで。去年はあれだけ試合に出させてもらう中で、段々と『これ、チームの勝敗を背負ってるな』ってめっちゃ感じるようになって。やっぱり勝ち負けもそうですし、ピッチャーもリードしてっていうところで、勝ってるときは全然しんどくないんですよ。やっぱり負けが続いたりすると、気持ち的に何か落ちるときがあった」

 勝った試合、負けた試合。喜びも悔しさもすべてが貴重な財産になる。だが、勝負の世界は厳しい。ソフトバンクで常勝軍団の中心選手だった甲斐が今季から加入したことにより、「2番手捕手」に戻る形に。だが、23年までの立ち位置に戻ったかというと、そうではない。

「前まで(23年まで)は本当に大差で勝ってるときとか、負けているときの楽なところで出ることが多かった。そのときは周りの人も『思い切ってやれ』とか『結果を気にすんな』みたいな言葉を掛けてくれていたけど、今はもう違う。どういう展開でも出ていかないといけないし、いつスタメンが来るか分からない。そこでしっかり結果を出さないと、終わっていく世界。甲斐さんがマスクをかぶってるときと同じようなものが求められる。そういうプレッシャーを自分の中では感じつつ、いい緊張感の中で準備はしている」

正捕手が2人いる感覚


 試合に出ていない期間が続いても、下を向くことはない。甲斐が開幕からスタメンで出続け、岸田が今季初の先発マスクをかぶったのは5月4日のDeNA戦(横浜)。今季初先発となったグリフィンとバッテリーを組み、3対1と白星をつけた。同月31日の中日戦(バンテリン)では難敵・高橋宏斗から3回に中前打、5回に遊撃内野安打、9回は相手守護神・松山晋也から中前打を放って猛打賞の活躍。チームは敗れたが、この試合から4試合連続でスタメン出場を勝ち取った。

 他球団のコーチは「岸田はいい捕手ですよ。投手の良さを引き出し、強気のリードの甲斐とは違う良さがある。もっと評価されていい選手です。2番手捕手という位置づけではなく、正捕手が2人いる感覚で対戦しています」と評する。

 首位を快走する阪神梅野隆太郎坂本誠志郎を併用しているように、一人の捕手で固定している球団の方が少ない。リーグ連覇に向け、縁の下の力持ちで支える岸田が巨人の重要なキーマンであることは間違いない。

写真=BBM
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