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巨人の秘密兵器? 強烈にアピールした最速153キロの「苦労人左腕」は

 

唐突なタイミングでプロ初登板


今季で4年目を迎えた山田


 交流戦で3勝6敗1分けと波に乗れない巨人。貯金1に減らしたが、首位・阪神も5連敗を喫して4ゲーム差とまだまだ混戦模様だ。逆転でのリーグ連覇に向け、新たな力の台頭が期待される中でリリーバーに楽しみな素材がいる。プロ4年目で一軍デビューを飾り、アピールに成功した左腕・山田龍聖だ。

 6月10日に一軍昇格。プロ初登板は唐突なタイミングで訪れた。同日のソフトバンク戦(みずほPayPay)で先発左腕の井上温大が2回一死一、二塁から周東佑京への頭部死球により危険球退場に。一死満塁のピンチに抜擢されたのが山田だった。今宮健太をチェンジアップで三ゴロ併殺打に打ち取ると、左拳を握りしめて雄叫びを上げた。3回は先頭打者の柳町達に死球を与えたが、近藤健介を遊ゴロ併殺打に仕留めて得点を許さない。

 直後の攻撃で坂本勇人中山礼都の連続適時打で勝ち越し。試合の流れを手繰り寄せると、4回も無失点に抑えた。初登板初勝利の可能性が出てきた5回に一死一、三塁のピンチを招いて交代。継投した石川達也が近藤に同点適時打を浴びたが、山田の投球は十分に合格点をつけられる。42球を投げて3回2安打1失点。逆境で力強い投球を見せた姿は、これまで歩んできた野球人生と重なった。

育成契約も経験


6月10日のソフトバンク戦でプロ初登板を果たした


 高岡商高のときから世代で名が知れた左腕だった。3年夏は県大会で本来の投球ができなかったが、甲子園の大舞台で輝きを取り戻す。印象的だったのが、藤原恭大(ロッテ)、根尾昂(中日)を擁する大阪桐蔭高戦で見せた投球だった。この大会で春夏連覇を飾った絶対王者と3回戦で激突すると、8回11奪三振3失点の力投。「大阪桐蔭の史上最強世代」を最も苦しめた投手として話題になった。

 その後は社会人・JR東日本を経てドラフト2位で巨人に入団。だが、プロ入り後に一軍のマウンドにたどり着くまでの道のりは険しかった。プライベートで仲が良いドラフト1位・大勢が1年目から抑えで大活躍し、3位の赤星優志も先発、救援にフル回転する中、山田はプロ入り後3年間で一軍登板なし。課題の制球難を解消できずに苦しんだ。昨季はイースタン・リーグで29試合に登板して防御率1.65をマークしたが、オフに育成契約に。この逆境からはい上がる。今年3月からくふうハヤテに派遣され、ウエスタン・リーグで9試合に先発して2勝2敗、防御率1.79の好成績をマーク。安定した投球内容を評価され、5月28日に当初の派遣期間終了予定よりも約1カ月前倒しで巨人に復帰。6月9日に支配下復帰を果たしていた。

さまざまな経験を糧に


 一軍の舞台で活躍することが助言を送ってくれた尊敬する左腕や、コーチに恩返しになる。山田はプロ2年目に日米通算165勝をマークし、当時現役でプレーしていた和田毅氏の自主トレに参加している。

「やっぱり長く現役を続けていますし、年齢を重ねてもさらに球速が上がったり、進化を続けている投手なので、何か盗めるものがあるんじゃないかと思っていました。昨年は副寮長をされていた吉武さん(吉武真太郎、元ソフトバンク・ダイエー、巨人。現ジャイアンツアカデミーコーチ)に紹介していただいて、自主トレに参加させていただくことができました。練習量がすごかったですね。あれだけ実績があって、MLBにも行かれた方が、あれだけの練習をやっているってことは、僕らはもっとやらなければいけない、というのは感じました」と週刊ベースボールのインタビューで振り返り、「(和田氏は)フォームのバランスというのは、すごいなと思いましたし、自分の中でも今、少しは生かせているのかなと思います。それでも映像を見たりすると、当たり前なんですけど全然違うなと思いますし、まだまだ改善していかなければいけない部分です」と刺激を受けていた。

 同年は春季キャンプでも一軍で過ごし、「いろいろな一流の選手を間近で見ることができて、すごく刺激になりました。アドバイスという意味では、二軍に落ちたときに久保(久保康生)コーチから『腕を速く使うことができるタイプだから、もっと並進運動を意識しよう』という話をしてもらって。前への意識を強くしたことでボールに強さが生まれてきましたし、コントロールも良くなっていって、変化球も思い切って投げることができるようになりました」と手ごたえを口にしている。

 苦労した経験は決して遠回りではない。一軍定着へ、最速153キロ左腕の挑戦は続く。

写真=BBM
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