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6月は未勝利も…他球団が「MVP獲得した時よりいい」警戒の右腕は

 

ストライク先行の投球


6月27日のヤクルト戦では勝利を飾れなかった村上


 勝負の厳しさを再認識するマウンドとなった。リーグ戦が再開した6月27日のヤクルト戦(神宮)。阪神村上頌樹は6回まで走者を再三出しながら要所を締めていたが、3点リードの7回に並木秀尊に左越えソロを被弾すると、二死一塁でオスナにカットボールを左翼席に運ばれた。1イニングに2被弾は2021年8月28日の広島戦(マツダ広島)以来自身2度目。同点に追いつかれ、7回8安打3失点で降板した。試合はサヨナラ負けを喫し、村上は悔しさを押し殺した表情で三塁ベンチから引き揚げた。

 ストライク先行でテンポよく投げ込んでいくのが身上だ。4月18日の広島戦(甲子園)の3回から28イニング連続与四死球ゼロと抜群の制球力で、5月2日のヤクルト戦(甲子園)に完封勝利を飾ると、10日の中日戦(甲子園)でもスコアボードにゼロを並べる。初回、一死二塁から上林誠知に右前打を浴びたが、右翼・森下翔太が好返球で二塁走者の本塁生還を阻止したことで波に乗った。2回以降は二塁を踏ませず、98球で2試合連続完封勝利。100球未満の完封で自身初の「マダックス」を達成し、藤川球児監督は「本当にいつも締まったピッチングをしてくれる。内野の守備も守りやすいですしね」と絶賛した。

 他球団の首脳陣は「MVPを受賞したときより投球の質が上がっていると思います。状態が良いときは投げミスがほとんどないので攻略が非常に難しい」と分析していた。2年前の23年。セ・リーグ史上唯一の新人王とMVPのダブル受賞したシーズンは、野球人生の分岐点になった。前年は一軍登板なしに終わるなどプロ未勝利だった右腕は、10勝6敗をマークし、最優秀防御率(1.75)のタイトルを獲得。リーグ制覇、38年ぶり日本一の立役者となった。

野手のリズムを崩さないように


 大ブレークした右腕は高いレベルのパフォーマンスを持続できた理由を週刊ベースボールのインタビューで聞かれ、以下のように答えている。

「そこは誠志郎(坂本誠志郎)さんがいろいろな組み立てをしてくれたからです。試合前などに『このバッターはこうやから、こういうふうに攻めていこう』とか『こういう攻め方だといけるよ』というようなことも話し合ったりしていましたので。僕自身も、その意図を理解して投げられていたので、すごくありがたいですね。もちろん野手の皆さんがしっかり守ってくれたことも大きいです。僕自身も、野手のリズムを崩さないように無駄な四球は出したくはないと思っています。やはりそういう四球から失点するという確率が高まると思っていますので、そこは意識して投げています」

打者へのアプローチが変化


 先輩からの助言を受け、打者へのアプローチが変化したことも覚醒のきっかけになった。

「打者も3割、10回打席に立って3回ヒット打てばいいほうですよね。つまり7回は失敗するということでもあります。ど真ん中でも7回は打ち損じがある可能性が高いので……それであればしっかりとストライクゾーンの中で勝負して打ち取っていったほうがいいかな、と思っています。自主トレのときにヤギさん(青柳晃洋)と配球の話をしていて、そういうことを話していました。そこで『7回は失敗するのだから、自分を自分自身で苦しめなくていい』ということを言われていたので……。それと誠志郎さんから試合中に『ここ本塁打を打たれても、ソロで1点のみやし、得点差あるから気にせずにゾーンで勝負してこいよ』と言われ、ああ、ゾーンを通していこう! と思ったりしました。そのおかげで四球を少なく投げられていると感じています」

 だが、プロの世界は活躍し続けることが難しい。昨年は25試合登板で7勝11敗、防御率2.58。打線の援護に恵まれない試合が目立ったことを考慮しなければいけないが、「このままじゃダメだと、自分もそう思っています。来年はいい姿を見せなければいけない」と危機感を口にしていた。

 今季は14試合登板で7勝2敗、防御率1.79。V奪回を果たすためにも、真のエースを目指す。

写真=BBM
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