抑えとしての高い能力

ケガから復活して、今季はクローザーを務める入江
登板を重ねるたびに凄味が増している。度重なる右肩痛からマウンドに戻ってきた
DeNA・
入江大生が守護神としての座を確立しつつある。
3月28日の開幕戦・
中日戦(横浜)は一生忘れられない日になるだろう。5点リードの9回に597日ぶりに一軍のマウンドに上がると、先頭打者の
板山祐太郎に四球を与えたが、
オルランド・カリステ、
石川昂弥、
細川成也を三者連続三振に仕留めて吠えた。30日の同戦では1点リードの9回に登板し、無失点の投球でプロ初セーブをマーク。その後の登板でも常時150キロを超える直球と、140キロ前後の高速フォークで打者をねじ伏せる。
5月21日の中日戦(横浜)で同点の9回に
田中幹也にソロを被弾して黒星を喫したが、敗戦のショックを引きずらない。その後は8試合連続無失点。直球とフォークが投球の9割以上を占めるシンプルな投球スタイルだが、打者のバットが空を切る。25試合登板で2勝1敗14セーブ2ホールド、防御率1.11。24回1/3を投げて26奪三振を記録している。メジャーのスカウトは「球の力強さだけでなく、走者を出しても落ち着いていて精神的にたくましい点も評価できる。
平良海馬(
西武)、
松山晋也(中日)と並び、抑えとしての能力は日本球界でトップクラスでしょう」と評価する。
ケガとの闘いの日々
本格派右腕としてドラフト1位で入団したが、プロではケガとの闘いの日々だった。新人の2021年は4月に4試合登板したが、同月下旬に登録抹消されると右肘の状態が芳しくないためクリーニング手術に踏み切った。救援に配置転換された翌22年は57試合登板で5勝1敗10ホールド、防御率3.00と頭角を現し、23年も32試合登板で1勝1敗7ホールド、防御率2.70と奮闘したが、夏場以降に上半身のコンディション不良で登録抹消に。ここからマウンドに上がれない日々が続く。昨年は一軍登板なし。5月下旬に右肩のクリーニング手術を受け、チームがCS、日本シリーズを勝ち抜いて26年ぶりの日本一になった瞬間を複雑な思いで見つめていた。入江は週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っていた。
「もちろんうれしかったですが、やっぱり悔しさがありました。それに、夏場の厳しい時期に自分は力になれなかった。リハビリが終わって、家に帰ってご飯を食べながら仲間が戦っている試合を見る。この生活が続くのは本当にキツかった。腐りそうな時期もありましたが、一軍のマウンドに戻る、絶対にやってやるぞと言う反骨心と共に、桑原(
桑原義行)二軍監督(兼投手コーディネーター)や入来(
入来祐作)二軍投手コーチ兼アシスタント投手コーディネーター兼投手コーチ、康晃(
山崎康晃)さん、宮崎(
宮崎敏郎)さんなどいろんな方に声を掛けてもらい、乗り切ることができました」
シーズンを通して投げ切る
復活ではなく、進化への階段を駆け上がっているが、地に足がついている。今年の目標はブレない。
「1年間、しっかり投げきることです。具体的には最低でも50試合登板はしたい。防御率はもちろん低ければ低いほど良いですよね。ただ、どれだけ良い成績を残してもシーズン後半にいなかったり、途中で抜けたりするとチームに迷惑が掛かってしまう。もちろん打たれたら二軍になりますが、そういうことではなく、自分本位な理由で迷惑を掛けたくない。シーズン通してしっかり投げきりたいです」
「チーム誰一人として、リーグ優勝や日本一という目標は変わっていません。だからこそ、そこに向かって突き進んでいきたいですし、そのための一つのピースになれるようにやっていきたい。去年、日本一を味わっていない分、その思いは強いですよ」
入江は作新学院高の3年夏に54年ぶりの全国制覇を達成している。当時のエースは同学年の
今井達也(西武)で、入江は甲子園で1試合登板にとどまったが3試合連続アーチを放つなど打撃で大きく貢献した。8年の月日が経った今、最速159キロ右腕が絶対的な守護神としてDeNAを2年連続日本一に導く。
写真=BBM