変化球中心の配球にも対応
首位・
阪神を4ゲーム差で追いかける広島。打線の核になっているのが新外国人のサンドロ・ファビアンだ。
調子の波が少なく、コンスタントに打ち続けている。5月に17試合連続安打をマークすると、6月も月間打率.348、5本塁打、17打点と絶好調だった。18日の
ソフトバンク戦(マツダ広島)で2点差を追いかける6回一死満塁の好機に打席が回ってくると、
尾形崇斗のスライダーを左翼席に運ぶ来日初の満塁アーチ。最大4点差をひっくり返し、連敗を3で止める立役者になった。21日の
楽天戦(マツダ広島)でも2回二死一塁で
内星龍のフォークをすくい上げて左越え2ラン。4回2死一塁も
松井友飛の内角に入ったカットボールを左翼席に2ランをたたきこんだ。6回にも中前打で猛打賞4打点の大暴れ。お立ち台に上がると、「カープファンノミナサン、スキジャケェ!」と広島弁で叫び、スタンドに詰めかけたファンから大歓声が注がれた。
来日する助っ人外国人は、変化球中心の配球に苦しむケースが珍しくないが、ファビアンはコンタクト能力が非常に高い。来日初の四番に起用された29日の
中日戦(バンテリン)では、4回に左腕・
松葉貴大の内角に食い込むカットボールを左翼に先制の10号ソロ。さらに6回二死三塁では外角低めチェンジアップに食らいつき、左前に落とす適時打。見逃せばボール球だっただろう。緩急に崩されず長いリーチを生かした技ありの一打に、打たれた松葉が苦笑いを浮かべていた。
打率.315、91安打はいずれもリーグトップ。
新井貴浩監督が「こちらの想像以上の速さでアジャストしてくれている」と称賛する。球宴までの残り16試合で100安打に到達すれば球団外国人で史上初の快挙で、12球団でも2013年の中日の
エクトル・ルナ以来12年ぶりとなる。
岡田彰布氏も高評価
ファビアンの活躍で、広島打線の破壊力が増している。昨年はリーグ5位の415得点。投手陣が踏ん張り8月まで優勝争いを繰り広げていたが、9月以降は7勝22敗と大きく負け越し、Bクラスに転落した。だが、今年は違う。234得点は阪神に次いでリーグ2位。昨年まで阪神で指揮をふるった野球評論家の
岡田彰布氏は広島のキーマンとして、ファビアンの働きぶりを高く評価していた。
「今シーズンの始め、広島をあまり高くは評価してなかった。でもここにきて、ガラリと変わったわけよ。それは課題とされた得点能力が大幅に改善されたからである。原動力はなんといっても新外国人よ。ファビアンは5月22日現在、リーグの首位打者。これほどまで日本の野球に順応できるとは、思ってもいなかった。彼が結果を残し始めてから、広島の打線はつながりを示し、そこに
モンテロよ。彼も日本の野球に慣れてきて、下位打線の軸になりつつある」
「もともと投手陣は力があり、質量とも豊富やったし、これで十分に戦える形が出来上がった。新井(新井貴浩)監督も自信の采配やし、この分だと、
巨人に取って代わり、阪神のライバル一番手になる……といった感触も生まれている」
同僚が心強い存在に
同じく新加入のエレフリス・モンテロも心強い存在になっている。開幕3戦目に左脇腹肉離れで離脱したが、5月上旬に復帰。同13日の巨人戦(マツダ広島)で同点の延長12回に決勝のサヨナラ中前適時打、同16日の阪神戦(甲子園)でも同点の9回二死二塁で中前に抜ける決勝適時打を放つなど勝負強さが光る。
助っ人外国人の活躍はチームの命運を大きく左右する。巨人は春先に打撃好調だった
トレイ・キャベッジが6月は月間打率.129と調子を落とし、来日2年目の
エリエ・ヘルナンデスも今季は打率.218、2本塁打、8打点と精彩を欠き、現在はファーム暮らしだ。昨年首位打者に輝いた
DeNAの
タイラー・オースティンは打率.211、2本塁打、12打点と状態が上がらず、6月6日に登録抹消されている。
打撃好調のファビアンに対する相手バッテリーのマークは、さらに厳しくなるだろう。気温が上昇する夏に真価が問われる。
写真=BBM