二軍で防御率1.36

今季は一軍でここまで1勝のみに終わっている助っ人右腕
阪神が強い。首位攻防戦となった7月8日の
広島戦(マツダ広島)で、6対1と快勝。リーグ優勝した2023年以来2年ぶりの9連勝をマークし、広島と今季最大の7.5ゲーム差に広げた。
初回に一死二、三塁の好機で四番・
佐藤輝明の2点中前適時打で先制すると、4回に一死一塁から
前川右京の左中間適時二塁打で突き放す。5、7回は
大山悠輔が2打席連続適時打と着実に得点を積み重ねた。強力投手陣は62年ぶりの9試合連続2失点以内を記録。投打ががっちりかみ合い、貯金は今季最多の16に。盤石の戦いぶりで首位を快走している。
チーム防御率1.92。この数字が示すとおり投手陣が圧巻の安定感を誇るが、ファームにも先発の軸になれる右腕が控えている。来日3年目の
ジェレミー・ビーズリーだ。7月4日のウエスタン・くふうハヤテ戦(SGL)で、7回3安打7奪三振無失点の快投。4回無死二、三塁のピンチではギアを上げて、相手のクリーンアップを三者連続三振に切り抜けた。
一軍では今季6試合登板で1勝2敗、防御率4.29。5月22日に登録抹消されたが、ファームで直球の威力、変化球のキレを取り戻している。ウエスタン・リーグで9試合登板し4勝2敗、防御率1.36の好成績をマーク。53回で63奪三振と三振奪取能力も高い。他球団の関係者は「阪神以外の球団だったら、先発ローテーションの軸になれる投手です。ファームでの投球はずっと安定していますし、一軍に昇格したら必ず戦力になるでしょう」と評価する。
球数がかさむ才木
阪神の先発陣は
村上頌樹、
才木浩人、新外国人右腕のジョン・デュプランティエ、ドラフト1位左腕の
伊原陵人、
伊藤将司、
大竹耕太郎とエース級の投手たちがそろっている。だが、夏場に向けて不安がないとは言えない。
気になるのは才木だ。今季14試合登板で7勝4敗、防御率1.58。数字だけを見れば申し分ない活躍に見えるが、7イニングを投げ切ったのが5試合と決して多くない。制球が定まらずに球数がかさむケースが多く、一歩間違えれば大量失点のリスクをはらむ。7月8日の広島戦も毎回のように走者を背負った。4回に押し出し四球で1点を失うなど、このイニングだけで3四球と制球に苦しみ、114球を投げた5回で降板。最少失点で切り抜けたが、6安打4四球で綱渡りの投球だった。
「マネジャー」として
才木が万全の状態とは言えない中、シーズン終盤に向けて先発ローテーションから一度外し、ファームでリフレッシュする期間を与えることも選択肢の一つとして考えられる。才木が抜けたときに、その穴を埋める最有力候補とみられるのがビーズリーだ。
今年から就任した
藤川球児監督は、勝利にこだわると共に大局的な視野で選手を起用している。週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っていた。
「もちろん、チームの中で、自分が見えているところはしっかりケアしながら、ケガなどが起こらないように、察知するようにしています。その責任者ですからね、私が。監督は現場をコントロールし、選手たちを携えながら前に進むものだと思っています。こういう考え方は、これまでの日本の監督像とは少し違うのかなと思います。私が考える、理想の監督とは『マネジャー』という意味合いが強いでしょうか。メジャーを経験したことで、アメリカの監督の影響をかなり受けている部分がありますので、その良いところを取り入れていけたらとは思っています。私がメジャーでケガをしたときに、監督や周りが、すごくケアをしてくれました。そういう経験が、現在の私の中での監督の理想像ですし、そうなりたいな、という思いがあります。つまり、メジャーの監督の良い部分と日本の監督の良い部分を取り入れた、ハイブリッドな『マネジャー』としてやっていきたいです」
ビーズリーがファームで好調を維持していることを、指揮官は当然理解しているだろう。首位を独走する中、用兵術が注目される。
写真=BBM