ホームランキング独走態勢

今年は進化したバッティングを見せている佐藤輝
球界を代表するスラッガーに進化しようとしている。
阪神の
佐藤輝明だ。今年は88試合終了時点で25本塁打とコンスタントに打ち続け、チームメートで2位につける
森下翔太に9本差をつけて独走態勢に入っている。
7月13日の
ヤクルト戦(甲子園)では、6回無死一塁で
ペドロ・アビラのチェンジアップを右翼席に運ぶ2ラン。ライナーの一撃は浜風をものともしなかった。佐藤輝は打った瞬間に本塁打の確信歩き。2021、23年に記録した自己最多の24本塁打に84試合目の出場で到達すると、19日の
巨人戦(東京ドーム)で0対0の延長11回に、
船迫大雅のカットボールを右中間のスタンド上段に運ぶ自己最多の25号決勝2ラン。この打球も打った瞬間に本塁打と分かる特大アーチだった。
追い込まれて見せる軽打

7月19日の巨人戦で延長11回に決勝2ランを放った
四番に座る今年は豪快なアーチがフォーカスされるが、2ストライクに追い込まれると軽打で走者をかえす活躍が光る。7月8日の
広島戦(マツダ広島)で見せた打撃が象徴的だった。初回一死二、三塁の好機でフルカウントから左腕・
床田寛樹のカットボールに反応して中前適時打。鋭いゴロが床田の足下を抜けた。コンタクトを重視した打撃で先制点をもたらし、この一打が決勝打になった。他球団のスコアラーは「フルスイングが大きな魅力ですが、今年の佐藤輝は2ストライク以降にミートを重視した打撃に切り替える。ボール球にバットが止まるようになったので、投手はストライクゾーンで勝負せざるを得ない状況に追い込まれている。走者を出した場面で回したくないですよね。対戦していて最も怖い打者です」と警戒を強める。
25本塁打に加え、64打点はいずれもリーグトップ。打率.287で首位打者も狙える位置につけている。今年のセ・リーグは現時点で打率3割に到達している選手がいない。後半戦も失速せずにこの打撃を貫けば、22年の
村上宗隆(ヤクルト)が達成して以来となる「令和史上2人目の三冠王」も現実味を帯びてくる。
前監督が打撃を絶賛
昨年まで阪神の監督を務めた野球評論家の
岡田彰布氏は、今年6月の週刊ベースボールのコラムで佐藤輝の成長ぶりを絶賛していた。
「佐藤輝明はホンマ、ええ感じで打席に入っているわ。『どうですか? サトテルはタイトル獲れますか?』と聞かれるたびにオレはこう答えている。『ハイ、本塁打王は当確です』と。シーズンはまだ半分も残っているのに、ちと先走り過ぎ? いやいや、周りを見渡してください。ライバルが不在なんよ。岡本(
岡本和真=巨人)が故障で長期離脱し、村上(村上宗隆=ヤクルト)は復帰のめどが立っていない。ライバルになりそうなのは牧(
牧秀悟=
DeNA)、森下(森下翔太=阪神)といったところだけど、彼らはやっぱりホームランバッターやない。だから佐藤輝の本塁打王の確率は極めて高いわけよ」
「プロ通算100号を記録したが、そのあとも順調に本数を伸ばしている。その理由は技術的な進歩がある。先日の
日本ハム戦(エスコンF)で形が崩れながらライトにホームランを放った。それを右手一本で、それも泳ぎながら……と解説する声もあるけど、オレはまったく違う見方をしている。あれは泳いでいるのではない。しっかりとスパイクで砂をかみ、体を残してインパクトまでもっていっている。理にかなったバッティングが身に付いてきた、ということなんやろな」
「昔のことになるけど、引退した
T-岡田のことを思い出していた。Tには「まず率を残すことを考えること。極端にいえばショートの頭を越すヒットを狙うこと。率を高めていくと、お前ならホームランが増える」と伝えたことがある。それ以降、打率が上がり、それにつれて本塁打も増え、タイトルを獲るまでになった。佐藤輝も同じような軌跡を歩んでいるように思える。今シーズン、打率が極端に上がっている。その原因は反対方向に逆らわずにヒットを打てるようになったこと。ボール球を見極め、四球が取れるようになったこと。これらによって率を高め、持ち味のパワーによって、ホームランの確率が増したのだ。これから先、どこまで本数を伸ばすか、楽しみだよね」
阪神が首位を独走していることも、心身が充実している要因になっているだろう。他の選手が殊勲打を打つと、ベンチで誰よりも喜びを爆発させている。頼もしい四番のさらなる進化が楽しみだ。
写真=BBM