巧みな配球術で投手陣をリード

首脳陣からの信頼が厚いベテラン・小林
2位以下が大混戦のセ・リーグ。
巨人は4連敗中で借金3と苦戦を強いられている。首位・
阪神を追いかけるためにもこれ以上負けられない。
今年は捕手の起用法がシーズン途中から変化している。
ソフトバンクからFA権を行使して移籍してきた
甲斐拓也を開幕からスタメン起用し続けてきたが、5月中旬以降は
岸田行倫の出場機会が増えている。そして、
小林誠司も
赤星優志が先発登板の日は先発マスクをかぶるように。昨年は15勝をマークし、最多勝に輝いた
菅野智之(現オリオールズ)が登板する全試合でバッテリーを組み、好リードで復活を支えた。
今年も巧みな配球術で投手陣を引っ張っている。「八番・捕手」で出場した6月29日の
DeNA戦(東京ドーム)では、4人の投手をリードして1対0で完封勝利。主砲の
牧秀悟に対し、1打席目から内角への直球を果敢に突き、7回の第3打席でも初球に内角の直球で見逃しでのストライクを奪うと、2球目も内角の直球を要求してファウル。2球で追い込むと、3球目は外角低めのカットボールで3球三振。牧は徹底して突かれた内角の直球が頭にあっただろう。小林のリードが完全に上回っていた。他球団のスコアラーは「小林は投手の良さを最大限に引き出すと同時に、試合を逆算して1打席目からリードができる。もちろん経験が大きいと思いますが、打者の狙いを察知する感性が鋭いのだと思います。捕手としての能力は間違いなく一流です」と評する。
レジェンドが語る「リードの基本」

現役時代の古田。捕手としてすべてにおいて高い能力を備えていた
投手が痛打を浴びれば、配球を組み立てる捕手が批判されることは少なくない。現役時代に球界を代表する名捕手として活躍し、
ヤクルト黄金時代の中心となった
古田敦也氏は「リードの基本」について、週刊ベースボールで以下のように語っている。
「まずは投手のいいところを引き出す『投手主体のリード』。ただ、それだけでは勝てません。打者の弱点を探して、そこを突く『打者主体のリード』も必要です。さらに、絶対にゲッツーを取りたい、三振を奪いたいと状況に応じてリードも考えないといけません。いわゆる『状況主体のリード』。この3つをうまく組み合わせるのがベストですが、これは経験がないと難しい。基本的に、若手捕手は『投手主体のリード』になっているはず。そこから経験を積んで、幅を広げていくといいでしょう」
「ただ、同じことを繰り返していると、そのうちやられてしまう。特に後半戦での大事な試合。シーズン前半はそのことを意識してリードをすることも必要です。例えばこの球は絶対に打てないという打者がいたとします。そこばかりを投げて打ち取っていては、大事な試合で打者がそこを待ち構えていれば痛打を浴びてしまう。だから、春先から夏場にかけて、得意なところにあえて意識的に投げておかないといけません。プロ野球は143試合の長丁場です。目の前のことだけを考えていては頂点に立てない。もちろん、短期決戦用のリードもあります。とにかく、リードを向上させるには経験を積むしかないのです」
立ち位置は「3番手捕手」
小林の現在の立ち位置は「3番手捕手」。だが、ベンチスタートの試合も声を常に張り上げてナインを鼓舞するなど、数字に表れない貢献度が高い。課題の打撃では、今季初のスタメン出場となった6月20日の
西武戦(東京ドーム)で、同点の6回二死二塁で
高橋光成のスライダーを詰まりながらも中前に落とす決勝適時打。伏兵の貴重な一打にベンチは大盛り上がりだったが、7月20日の阪神戦(東京ドーム)では、4回無死一、二塁で犠打に失敗。5回の守備から交代となった。
限られた出番で最高のパフォーマンスを発揮する。難しい役割だが、小林はチームに不可欠な存在だ。
写真=BBM