週刊ベースボールONLINE

HOT TOPIC

球宴での意外な行動にファンが涙…他球団の評価高い「31歳の守備型捕手」は

 

才木とのバッテリーで完封勝利


強力な阪神投手陣を巧みなインサイドワークでけん引する坂本


 阪神が後半戦初戦となった7月26日のDeNA戦(甲子園)で2対0と快勝。先発の才木浩人が散発4安打で今季2度目の完封勝利を飾った。バッテリーを組んだのは坂本誠志郎。4月1日のDeNA戦(京セラドーム)以来のコンビだったが、巧みなリードが光った。

 初回二死三塁のピンチでは四番・牧秀悟を内角低めの直球で見逃し三振。6回二死三塁のピンチでは牧に投じたフォークが高めに浮いたが、中飛に仕留めた。才木が先発の際は梅野隆太郎がマスクをかぶる機会が多かったが、坂本を起用したことが藤川球児監督の信頼の高さを物語っている。その期待に100点満点の結果で示した。

併用した前監督の意図


 阪神の捕手は坂本と梅野を併用する起用法が続いている。2023、24年に監督を務めた岡田彰布氏は週刊ベースボールのコラムで、その意図を明かしている。

「この2人に偏ったのは続く若手との力量差がはっきりしていたから。だから2人をどう起用し、どう生かしていくか。これに注力した。その結果が投手による組み分けやった。梅野は時に相手の裏をかく配球を考える。それに合う先発投手は力の才木(浩人)や青柳(青柳晃洋)とした。一方の坂本は安全運転というか、オーソドックスなタイプ。それに合うのはコントロールのいい先発投手やった。制球がよければ、裏をかく必要はない。それに合致したのが村上(村上頌樹)に大竹(大竹耕太郎)やった」

「そら打てる捕手なら、いいに決まっている。でもオレはキャッチャーにバッティングまで多くを求めないでいた。打てるに越したことはないが、そこまで求めることはない。まずは守りよ。ここさえしっかりやってくれれば、ホンマ、十分なわけ。その点においてはこの2年間、2人はよくやってくれた、と思い返すことができる」

目立つ打撃での活躍


 先発マスクをかぶった数字を見ると、23年は梅野が63試合、坂本が76試合、昨年は梅野が81試合、坂本が62試合だった。リーグ優勝、日本一に輝いた23年は梅野が8月上旬に左手首骨折で離脱している。坂本は「第2捕手」のイメージが強かったが、藤川球児監督が就任した今年は起用法に大きな変化が生じている。今季の先発マスクは梅野が25試合に対し、坂本が65試合。課題と言われていた打撃で活躍が目立つ。

 7月12日のヤクルト戦(甲子園)では、2点リードの8回二死二塁で、前進守備の右翼手を越える適時三塁打。今年の坂本は好機の場面で外野の頭を越える長打が目立つ。19日の巨人戦(東京ドーム)では、佐藤輝明の2ランで先制した延長11回に、さらに二死一塁で船迫大雅のスライダーを完璧に捉えるダメ押しの2号2ラン。通算8本塁打のうち巨人戦で半分の4本とキラーぶりを発揮し、守備でも6人の投手の継投策で完封リレーに導いた。

FA権を行使せずに残留


 昨オフはFA権を行使せずに残留を決断。「第一に優勝したい気持ちが強い。(昨年2位の)悔しい気持ちをより大きく感じている」と意気込んでいた。扇の要に対する信頼は厚い。村上頌樹は「これを投げたいと思ったときサインが出るのは、ほとんどその球」と明かし、藤川監督も「捕手はグラウンド上の監督の代わり。リーダーシップをプレーの中で発揮してくれるはず」と期待を込めていた。来年に開催予定のWBCでも、侍ジャパンのメンバーに選出される可能性が十分にある。スポーツ紙記者は「国際大会では失点をいかに防ぐかがポイントになる。坂本は守備面で言えば球界トップクラスです。打撃でも力をつけていますし、現場のコーチ、選手の評価が非常に高い選手です」と語る。

 監督推薦で初出場となった今年の球宴で、話題になった場面があった。第2戦で5回から登板した大西広樹(ヤクルト)がリリーフカーに乗ってグラウンドへ向かう際、つば九郎の人形を手にしていた。大西はマウンドへ向かう際、座席につば九郎が置かれたリリーフカーがUターンして戻ろうとしたところ、坂本が車に近寄った。停車させると、つば九郎人形を手に取り、全セのベンチの柵上に置いた。この行動に「大西さんだけでなく、坂本さんの気遣いに涙が出た」とSNS上で大きな反響を呼んだ。グラウンド上のあらゆるところに気を配っている坂本らしい行動と言える。経験を積み、31歳と捕手として脂が乗り切る時期に入る。2年ぶりのV奪回へ、攻守でチームを引っ張る

写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング