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今オフに複数球団の争奪戦か 去就注目される「DeNAの強打者」は

 

万全ではないが一軍復帰


一軍復帰初戦でいきなり本塁打を放ったオースティン


 この男がスタメンに名を連ねると、打線の迫力がガラッと変わる。DeNAのタイラー・オースティンだ。

 今年は開幕直後に下半身のコンディションでファームに降格。1カ月の調整を経て5月5日に一軍昇格したが、打撃の調子が上がらない。6月6日に右膝の違和感を訴えて戦列を離れた。球宴に選出されたが出場を辞退し、懸命にリハビリを続けてきた。夏場に入っても借金生活から抜け出せないチームは苦しい局面を迎えていた。大黒柱の牧秀悟が8月1日に登録抹消の緊急事態が発生。左手の「左MP関節尺側側副靱帯修復術」の手術を受けて早期復帰が絶望となった。オースティンは患部の状態が万全とは言えないが、一軍の舞台に戻ってきた。

 2カ月ぶりの復帰戦となった8月5日の広島戦(横浜)で、1点差を追いかける2回に床田寛樹のスライダーをバックスクリーン左に運ぶ同点アーチ。ファームの実戦4試合で打率.417、1本塁打と格の違いを見せていたが、一軍でも鋭いスイングですぐに結果を出した。ヒヤリとする場面も。7日の同戦では、2点リードの8回無死一塁に代打で登場したが、塹江敦哉の150キロ直球が左太腿を直撃。代走が送られてベンチ裏に下がったが、ケガにつながらずファンは安堵しただろう。8月に復帰以降は12打数6安打で打率.500、1本塁打。他球団のスコアラーは「最も怖い打者であることは間違いない。オースティンがスタメンに入るとDeNAの得点力が一気に上がりますから」と警戒を口にする。

 昨年は4月に右太腿肉離れで離脱した期間があったが、5月以降はスタメンに名を連ね、6月には打率.346、5本塁打、17打点で月間MVPを受賞。夏場以降もコンスタントに打ち続けた。得点圏打率.388と勝負強さが光り、8月以降は四番に定着。10月に自身初の規定打席に到達すると、2位のドミンゴ・サンタナを1厘差でかわし、自身初の首位打者を獲得した。CSを勝ち抜き、ソフトバンクと対戦した日本シリーズでも5試合出場し、打率.375、1本塁打、3打点の活躍。26年ぶりとなる日本一の原動力となった。

フォア・ザ・チームを貫く姿勢


 オースティンは首脳陣、ナインの人望が厚い。その理由がフォア・ザ・チームに徹する献身的な姿勢だ。ヤンキースではメジャー屈指の強打者で知られるアーロン・ジャッジと共に育成メソッドを受けてきた。「もちろんそうした側面はありますが、本当に小さいころから周りの人に勝利の大切さを教わってきました。リトルリーグや中学、高校での選抜チーム、マイナー・リーグ、そしてメジャーに上がってからも、です。どのコーチにも勝利については口酸っぱく言われてきました。それが今の私のプレースタイルにつながっているんです」と週刊ベースボールのインタビューで語っている。

 代名詞は打撃、守備、走塁とすべてのプレーに全力を注ぐプレースタイルだ。

「シーズンが長いということはもちろん理解しているのですが、やはり1試合1試合の積み重ねであることも間違いありません。そして、勝利と敗北の差は、ワンプレーの成功で1点差で勝利することもあれば、逆もあり得るほど些細(ささい)なもの。だからこそ、自分自身が目の前のプレーに対して、全集中できるかどうかが大事だと思っています」

チームへの強い愛着


 ハッスルプレーの代償で懸念されるのが、故障の多さだった。来日6年間で規定打席に到達したシーズンは昨年のみ。今年も34試合出場で138打席にとどまり、打率.240、3本塁打、13打点と満足できる数字を残していない。コンディションが万全なら球界屈指の強打者であることは間違いない。今オフの去就はどうなるか。DeNAが契約延長を決断する場合は推定年俸4億9500万円から減俸は必至の状況だが、力の衰えは感じられない。複数球団が獲得に興味を示す可能性が十分にある。

 オースティンはDeNAへの愛着が強い。「野球をする上でも生活する上でも横浜は本当に美しい街だと感じています。人も優しい」、「満員になっているスタンドを見ると、選手としてありがたいと感じますし、自分自身も勇気をもらいます。特に打席に向かうときに一番ファンの方の声が聞こえて後押ししてくれています」と感謝の思いを口にしている。

 熾烈なCS進出争いに向けて戦いは続く。ファンの期待に応えるためにも全力を尽くす。

写真=BBM
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