替えの利かない存在

本塁打、打点でリーグトップと強打を発揮しているレイエス
日本ハムが8月26日の
西武戦(ベルーナ)で2対2と引き分け、首位・
ソフトバンクとゲーム差なしの勝率2厘差に迫った。もちろん勝ちたかったが、8人の継投策で西武に勝ち越しを許さなかったのは今後につながる。その中で心配なのが、途中交代したフランミル・レイエスだ。「四番・指名打者」で先発出場し、初回に四球を選んで
清宮幸太郎の先制適時打をお膳立て。3回は空振り三振に倒れ、5回二死一、二塁の好機で打順が回ってきたが、かかとに痛みを覚えたため代打を送られた。
快進撃を繰り広げる日本ハムは選手層が厚い。各ポジションでレギュラー級の選手を2人以上そろえるが、レイエスは主軸で替えの利かない存在だ。来日2年目の今年は春先から打撃の調子が上がらなかったが、4月26日の
ロッテ戦(エスコンF)で同点の7回に左腕・
小島和哉の浮いたフォークを右翼席に運ぶ3号ソロ。この一打が決勝弾となり、週刊ベースボールの取材で以下のように語っていた。
「最高だったよ。オフにファイターズとの契約を延長してから何度か『ファイターズ以外に戻る気はなかった』とか『ファイターズを選んだことにまったく後悔はしていない』って言ってきたけど、あの試合はそれが色濃く出た試合だね。打撃の状態が悪かった中でも、ポジティブに考えるってことをチームメートやスタッフ、
新庄剛志監督やコーチ全員が言ってくれたんだ。だから試合中に『一人ではありませんでした』というコメントを出したんだ。みんながポジティブな声掛けをしてくれたから、いいマインドで打席に入れた。このチームを選んだことにまったく後悔はないっていうことを確信できたね」
7月の月間MVPを受賞
首脳陣の助言に耳を傾ける謙虚な姿が、異国で成功している証しだ。気温の上昇と共に、スイングの鋭さが増していく。7月は打率.324、6本塁打、19打点で月間MVPを受賞した。
「7月の月間MVPを受賞できて、本当にうれしいよ。毎月、この賞をもらいたい気持ちで100%の力を出して臨んでいるんだ。7月は
楽天戦で
藤井聖投手から打った満塁弾は印象に残っているかな。5月もいい活躍ができたと思ったけど、西武のネビン選手が受賞した。少し悔しい思いもあったけど、ネビン選手は自分の友達。だから素直に祝福する気持ちだったよ。とにかく7月はこの賞をいただけて本当にうれしい。今回の賞金でチームメートを遠征先で食事に連れて行きたいね。北海道にいるときは家族と過ごす選手も多いから、遠征に出ているタイミングを見て、みんなで行けたらいいなと思っているよ」と喜びを口にしていた。
優勝への強い思いを持って
疲労がたまる夏場で、コンディションが万全とは言えない。腰痛を抱えているが、グラウンドに立ち続けている。日本ハムで大切な仲間たちと優勝したい。その思いが集中力を最大限に研ぎ澄ませている。首位攻防戦となった8月23日のソフトバンク戦(エスコンF)では、今季2度目の1試合2発でチームに勢いをもたらした。2回に
有原航平のフォークを左翼席に運ぶ先制26号ソロを放つと、7回も
前田悠伍の145キロ直球を完璧に捉えてバックスクリーンへ27号ソロ。リーグトップの27本塁打、76打点をマークしている主砲は試合後のお立ち台で、「35本のホームラン打って、100打点に到達できるように頑張ります」と力強く宣言した。
レイエスは本塁打、打点だけでなく、首位打者を狙える位置につけている。現在はリーグ4位の打率.287で、リーグトップの
太田椋は打率.308。打棒が爆発すれば残り試合で逆転が可能な位置につけている。三冠王を獲得すれば2022年の
村上宗隆(
ヤクルト)、外国人選手では1986年に2年連続獲得した
ランディ・バース(
阪神)以来39年ぶりの快挙となる。ソフトバンクと熾烈なデッドヒートを制するためには、レイエスの活躍が不可欠だ。残り28試合。一戦必勝で、打ち続ける。
写真=BBM