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黄金ルーキーに定位置を明け渡す形も…首位打者狙える「ドラフト7位の巧打者」は

 

自らの力で切り拓いた道


リーグトップの打率.301を誇る村林。あらゆる面でチームをけん引している


 難敵をどう攻略するか。楽天村林一輝が見せた一つのプレーが、試合の流れを大きく変えた。9月9日の西武戦(楽天モバイル)。相手右腕は通算20敗と相性が悪い今井達也だった。1点差を追いかける2回一死一、三塁で、3ボール1ストライクから一塁線にセーフティースクイズを敢行。内野安打となり同点に追いつくと、黒川史陽の中前適時打で一気に逆転した。今井を2回でマウンドから引きずり下ろすと、その後に同点に追いつかれたが、延長11回の末にサヨナラ勝利を飾った。

 昨年は自己最多の139試合出場し、プロ9年目で自身初の規定打席に到達。打率.241、6本塁打、50打点をマークした。遊撃の定位置をつかみ、侍ジャパンにも選出された。今年はリーグトップの打率.301を記録。だが、その道は自らの力で切り拓いたものだ。

 背番号が66から6に変更となった昨オフ。村林は週刊ベースボールのインタビューで、特別な思いを語っていた。

「やはり自分が着けたかった番号なので、今はすごく新鮮な気持ちで野球ができています。また、この番号は自分一人の力では着けられなかったと思いますし、たくさんの人のサポートがあってここまで来られたので、6番を背負って自分がしっかりとしたプレーをすることが、チームやファンの皆さま、そしてお世話になった人たちへの恩返しだと思っていますので、この番号でしっかり活躍したいなという思いが強いです」

「僕はずっとショートのレギュラーで出たいと思っていたので、やはりショートと言えば6番というイメージがありますし、藤田一也さん(現DeNAディフェンスチーフ兼内野守備兼ベースコーチ)や自主トレでお世話になっている今宮健太さん(ソフトバンク)など素晴らしい方々が背負っている番号。野球だけではなく、1人の人間として素晴らしい人が身近にいたというのも、すごく着けたいなと思う要因の1つではありました」

魅力はスランプが短いこと


 目指すは球界を代表する遊撃――。だが、強力なライバルが現れる。楽天は昨オフのドラフト1位で、5球団競合の末に宗山塁を獲得。「20年に1人の逸材」と評される黄金ルーキーが加入したことで状況は一変した。開幕から宗山が遊撃を守り、村林は三塁、二塁を守ることに。春先はスタメンを外れることもあった。だが、集中力を切らさない。4月17日のソフトバンク戦(みずほPayPay)で、2点差を追いかける9回無死二塁の場面に代打で登場すると、ロベルト・オスナのスライダーを左中間テラス席に運ぶ1号2ラン。起死回生の一撃で同点に追いつき、逆転勝利の立役者となった。

 内野の高い守備能力に定評がありどこでも守れるが、ユーテリティープレーヤーでは満足できない。存在価値を証明するために打撃で広角に安打を量産する。村林の魅力はスランプの期間が短いことだ。4月以降で3試合連続無安打だったケースが一度もない。チャンスメークするだけでなく、得点圏打率.391と勝負強さも光る。スタメンで不可欠な選手であることをアピールし、三塁のほか遊撃で試合に出続けている。

逆転でのCS進出へ向けて


 大阪府立大塚高では「四番・投手」として野球センスが光る選手だったが、ドラフト7位で入団した当時は無名の存在だった。コツコツと努力を重ねると10年の月日を経て、首位打者に一番近い位置につけている。打率は常に変動するため大きな重圧が掛かるが、地に足がついている。

「難しいですよね。正直そこもコントロールできないことですから。自分が打てればいいですが、ほぼ打てないので(苦笑)。野球は確率が低いスポーツですから、そこでどう自分が、自分をコントロールできるか、その中でできる最善の準備をしていくことが大事になるのかなと。打つ、打たないに関しては、僕ら打者は基本的には受け身なので。もちろんそれが数字に表れるのですが、自分の中でうまくできたからといってヒットになるわけでもないですし。だからこそ、自分ができることをするだけ。結果がどうなるかは分かりませんから」

 残り20試合。最優先されるのはチームの勝利だ。3位・オリックスに6ゲーム差を離されているが、逆転でのCS進出に向けてチームを引っ張る。

写真=BBM
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