連敗を3で止める活躍

9月13日のオリックス戦で9回に同点犠飛を放った牧原
熾烈な優勝争いが繰り広げられる中、
ソフトバンクが貴重な白星をつかんだ。9月13日のオリックス戦(京セラドーム)で逆転勝利を飾り、優勝へのマジックが13に。苦しい試合展開で試合の流れを引き寄せる一打を放ったのが、修羅場をくぐり抜けてきた
牧原大成だった。
1点差を追いかける9回無死二、三塁の好機で左犠飛。2ボール2ストライクと追い込まれたが、相手守護神・マチャドのスライダーにきっちり反応した。この一打で同点に追いつくと、さらにマチャドの牽制悪送球で一気に勝ち越して逃げ切り、連敗を3で止めた。
育成入団からはい上がって
プロ15年目。育成契約で同期入団の
千賀滉大(現メッツ)、
甲斐拓也(現
巨人)と共にはい上がってきた。内外野どこでも守れることからユーテリティープレーヤーとして、チームに不可欠な存在に。だが、意外なことに規定打席到達したシーズンがない。14年にウエスタン・リーグで首位打者を獲得するなど打撃面も非凡な能力を見せていたが、ネックになったのは故障の多さだ。身長172センチの小柄で全力プレーは体に大きな負担が掛かる。22年は120試合出場で打率.301、6本塁打、42打点をマークしたが、規定打席にあと2打席足りなかった。昨年も右内腹斜筋損傷で4月下旬から2カ月半戦列を離れた影響で、78試合出場して打率.283、2本塁打、13打点だった。
だが、今年は違う。
栗原陵矢、
柳田悠岐、
今宮健太、
近藤健介と春先から主力に故障者が続出する中、開幕から一度も登録抹消されずチームを支えている。七番、九番など下位でチャンスメークすることが多かったが、夏場以降は六番、二番、一番、三番など打線の核となる打順で起用されるように。直球に滅法強く、得点圏打率.350と勝負強い。8月は月間打率.385、3本塁打、18打点をマーク。現在のリーグトップは
村林一輝(
楽天)の打率.299だが、牧原が打率.306と上回る。このまま試合に出続けて1試合4打席をクリアすれば、自身初の規定打席に到達する。首位打者も見えてきたが、今の牧原はリーグ連覇しか頭にないだろう。
食らいつく気持ち
チームを思う気持ちは誰よりも強い。ソフトバンクは17年からパリーグ史上初の4年連続日本一を達成したが、21年から3年連続V逸。オリックスが3連覇を飾り、悔しい思いをした。牧原は昨年の開幕前に、熱い思いを週刊ベースボールのインタビューで吐露していた。
「一軍にいる選手だけが優勝したいという気持ちを持っていても、たぶん勝てないと思う。一軍から四軍までの選手、チーム全体が『優勝したい』と思って、『そのために一軍で活躍したい』という気持ちが一つにならないといけません。結局、主力選手に何かが起きてケガをしたときなど、代わりに出てきた選手が結果を出さないことには絶対に強くはならないので。やっぱり、そういったところじゃないですかね」
「まったく結果を出していないというわけではありませんが、もうちょっと必死に食らいついてやってやろうという若い子たちが出てきてほしいなというのは正直、思ってはいますね。僕自身、一軍で試合に出始めたときにすぐに結果を出したかと言われると全然でしたが、それでも何とか食らいついてやろうという気持ちはたぶん、今の若い選手たちよりはあったとは思うので」
リーグ連覇への思い
優勝することで人生が変わることは、肌身で体感している。選手や首脳陣だけでなく家族や、支えてくれた裏方、スタッフにも恩返しができる。
昨年は圧倒的な強さで4年ぶりのV奪回を果たし、優勝旅行へ。「家族で行っていて、子どもが何をしても楽しそうにしていたので、それが良かったですね。でも疲れました(苦笑)。海は(子どもが)『行きたくない』って言ったんで、本当にホテルの近くで遊んでいました。だから、ハワイらしいことをしたかと言われると特にしてないんですけど、気候もいいですし、それだけでも十分ですよね。やっぱり家族が楽しみにしてくれているので、25年も行けるように頑張りたいなとは思います。まあ、僕の場合はハワイどうこうよりもリーグ連覇、そして日本一は絶対。その上で、またみんなでハワイに来たいですね」と意気込んでいた。
今年のソフトバンクは故障者が出ても、若手の台頭でカバーするたくましいチームに成長している。シーズンは残り16試合。大きな目標を叶えるためにも、一戦必勝で白星を積み重ねる。
写真=BBM