天敵相手に一発

9月13日の中日戦では高橋宏から16号2ランを放った
広島は3位・
巨人と5ゲーム差。シーズン残り11試合で逆転でのCS進出が厳しい状況だが、可能性がある限り白星を積み重ねるしかない。打棒爆発が期待されるのが主砲のサンドロ・ファビアンだ。
9月13日の中日戦(マツダ広島)では、2点リードの5回二死一塁で
高橋宏斗のカーブをすくい上げ、左中間へ16号2ラン。高橋宏にはこの試合前まで今季4試合で0勝4敗、防御率1.13と完璧に抑え込まれていただけに、天敵相手の一発は大きな価値があった。打った瞬間に本塁打を確信すると、一塁ベンチに向かってガッツポーズを繰り出して喜びをあらわにした。
変化球への対応能力
助っ人外国人が日本球界で1年目から活躍するケースが少なくなっている中、ファビアンは奮闘している。131試合出場で打率.280、16本塁打、62打点。巨人史上最強の助っ人と評される
ウォーレン・クロマティ氏は「近年は、僕らの現役時代よりずっと中南米出身の外国人選手が増えている。彼らは北米出身の選手とは、バットスイングのスタイルが少し違うように思う。北米出身選手よりも、変化球打ちがうまいのだ」と指摘。
さらに「例えば、北米出身選手は日本人投手が多投するフォークボールをあまり見慣れていない。そこは中南米出身選手のほうが、フォークをうまく打つ傾向にある。また中南米出身選手は、大振りしてばかりじゃないのもいい。彼らが日本で活躍できるのは、そうした特長があるからだろう。中南米出身選手は、北米出身選手とは違った味付けを、日本球界に与えてくれる。日本人選手にないパワー、技術、そしてウインター・リーグでの経験などが、彼ら独自の味付けだ」と週刊ベースボールのコラムで分析していたが、ドミニカ共和国出身のファビアンも変化球への対応能力が高いのが特徴だ。
6月に月間MVP受賞
6月は11試合でマルチ安打を記録し、交流戦で12球団トップの15打点をマーク。18日の
ソフトバンク戦(マツダ広島)では、2点を追いかける6回一死満塁から逆転満塁弾を放った。月間打率.348、5本塁打、17打点で月間MVPを受賞。広島の外国人野手では2014年3、4月度の
ブラッド・エルドレッド、9月度の
ライネル・ロサリオ以来11年ぶりの受賞に、「あきらめない気持ちを持って、今日までできていることが良い結果につながっていると思います」と笑みを浮かべていた。他球団のスコアラーは「打席での修正能力が高い。きっちりコンタクトしてくるので、抑えるのが難しい打者であることは間違いない」と警戒を強める。
仲間への感謝の思い
ファンからの人気も高く、7月1日から「チームの顔」に抜てきされた。マツダスタジアム正面グッズショップの高さ6.6メートル、幅5.8メートルの巨大壁面に、ファビアンの笑顔の写真が採用されることに。新設された23年から
新井貴浩監督が2年間、今年は開幕投手を務めた
森下暢仁、ドラフト1位・佐々木泰に続き、4人目だった。
フォア・ザ・チームに徹する姿勢も、異国で結果を残している要因だろう。週刊ベースボールのインタビューで、新井貴浩監督、チームメートに感謝の思いを繰り返していた発言が印象的だった。
「監督はとてもコミュニケーションが取りやすい方で、最初に調子が出なかったときも、気にせず『大丈夫、慣れるから。勉強してほしい』と言ってくれていました。本当に自信を持つことができましたし、悪いときでもプレッシャーを感じずにできたのが、メチャメチャ良かったです。なかなか、ああして選手と明るくコミュニケーションを取れる監督はいません。『ちゃんとやって!』と、すごく厳しい人が多いと思う。新井監督は、いいときでも悪いときでも変わらなくて、すごくありがたく思います。監督がそういう感じでいてくれることが、一番大事だと思います」
「
秋山翔吾選手からは、日本に来てから本当にいろいろなアドバイスをもらっています。特に守備の面ですね。日本の守備のやり方や、守る位置といったところを教わり、すごく印象に残っています。秋山選手は最初から、日本の野球についてたくさんのことを教えてくれて、すごく感謝しています」
「チームメートは若手からベテランまで優秀で、すごくいいチームです。
菊池涼介選手、
矢野雅哉選手の守備は素晴らしい。バッティングでも、いろいろな形で貢献している。
坂倉将吾選手はとてもいいバッターだと思いますし、
羽月隆太郎選手や
大盛穂選手の走塁は素晴らしい。1人ではなく、全員が大事で、みんなの力でいいチームをつくっていると思います」
信頼できる仲間と共に、最後まで全力を尽くす。
写真=BBM