質量豊富な巨人中継ぎ陣
2位でのCS進出を狙う
巨人。先発のコマがそろっているとは言えない状況で、カギを握るのが救援陣だ。
絶対的守護神のR.マルティネスは53試合登板でリーグトップの42セーブ、防御率1.23と抜群の安定感を誇る。8回は昨年まで守護神を務めていた
大勢が託され、リーグトップタイの42ホールドをマーク。この「勝利の方程式」につなぐセットアッパーもそろっている。度重なる故障から復活した
中川皓太、昨年新人王に輝いたサイド右腕・
船迫大雅に加え、新戦力の奮闘が光る。
昨オフに現役ドラフトで
日本ハムから移籍した
田中瑛斗は右打者に食い込むシュートを武器に、58試合登板で1勝3敗34ホールド、防御率2.30とキャリアハイを大幅に塗り替える大活躍。「移籍することに関してはポジティブだったので、『ヨシ!』という気持ちだったんですけど。『ジャイアンツか……いい投手多いよな』って。12球団で一番防御率が良かったのは知っていたんで、『大丈夫かな』ってちょっと不安はあった」と週刊ベースボールの取材で語っていたが、新天地で見事に素質を開花させた。
DeNAから戦力外通告を受け、巨人で再出発した左腕・
石川達也も献身的にチームを支える。今年はチーム事情で春先は先発でスタートし、その後に救援へ配置転換。40試合登板で5勝4敗3ホールド、防御率2.05は立派な数字だ。
来日4年目の助っ人リリーバー
その中で、自身の存在価値を証明したいのが来日4年目のカイル・ケラーだ。9月13日の阪神戦(東京ドーム)で3点リードの5回からマウンドに上がったが、一死しか取れず4四球5失点とまさかの大乱調。一死から3者連続四球で満塁のピンチを招くと、
坂本誠志郎に適時打を浴びた。
熊谷敬宥にも押し出し四球と制球が定まらずに降板。
高梨雄平が継投したが、息を吹き返した阪神打線の勢いを止められず、このイニングに一挙7失点で逆転を許した。その後に同点に追いついてサヨナラ勝利を飾ったが、ケラーは悔しさが残っただろう。
日本で進化を遂げた右腕だ。阪神で2022年から2年間プレーし、昨年に巨人に移籍。52試合登板で2勝2敗1セーブ20ホールド、防御率1.53と安定感が際立ち、4年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献した。今年はオープン戦で5試合に登板して防御率1.80と順調な仕上がりを見せていたが、外国人枠の関係で開幕二軍スタートに。4月4日に一軍昇格したが、ピリッとしない投球が続く。5月31日の
中日戦(バンテリン)で同点の8回に登板して2つの四球からピンチを招き、代打の
板山祐太郎に2点適時打を浴びて敗戦投手に。防御率5.28となり登録抹消された。
約2週間の調整期間を経て、一軍再昇格後は安定した投球を取り戻していた。阪神時代から気温の上昇と共にパフォーマンスが上がる傾向があり、今年も6月下旬からの2カ月間で13試合連続無失点。快投を続け、防御率は2点台前半まで改善した。
高い奪三振能力
ケラーの魅力は、手元でホップするような軌道の最速157キロの直球だ。8月27日の
広島戦(マツダ広島)では
菊池涼介、佐々木泰、
會澤翼をいずれも球威十分の直球で3者連続三振。他球団のスコアラーは「直球と分かっていても捉えるのが難しい。直球の質だけで言えば、大勢、R.マルティネスに引けを取らない。制球が不安視されますが、ストライクゾーンにどんどん投げ込まれたほうが嫌ですね。縦に落ちる落差の大きいカーブとのコンビネーションで連打が続くのは難しい」と分析する。
チームメートにもすっかり溶け込み、日本の生活に適応している。注目されるのは来季の去就だ。今年は41試合登板で1勝1敗6ホールド、防御率3.40。昨年より成績を落としているが、42回1/3を投げて43奪三振と三振奪取能力は相変わらず高い。昨年はリーグ優勝を飾ったが、CSファイナルステージでDeNAに敗れて日本シリーズに進出できなかった。短期決戦はリリーバーのパフォーマンスが勝敗のポイントになる。ケラーが救世主になれるか。
写真=BBM