ネックは稼働率の低さ

度重なる故障で登録抹消を繰り返したが一軍登板では好投を見せた
ソフトバンクが9月27日の
西武戦(ベルーナ)で4対1と快勝し、リーグ連覇を飾った。
楽天は同日の
オリックス戦(京セラドーム)に0対2で敗れ、CS進出を4年連続逃してBクラスが確定。来季に向けてチームをどう立て直すか。チーム編成で気になるのが、
スペンサー・ハワードの去就だ。
来日1年目の今季は度重なる故障に泣かされた。腰の張りを訴えて開幕は二軍スタート。来日初登板となった5月14日の
ロッテ戦(楽天モバイル)で7回5安打無失点に抑え、その後も安定した投球を続けていたが、指先のコンディション不良で6月18日に登録抹消に。7月1日のロッテ戦(楽天モバイル)で復帰すると6回2安打無失点の好投で、外国人投手では球団史上初となる先発登板でデビューから無傷の4連勝を記録した。しかし、再び故障に見舞われる。先発予定だった同月9日の西武戦(ベルーナ)で上半身の張りを訴えて先発を回避し、登録抹消に。一軍復帰に2か月以上かかった。
復帰2試合目となった9月23日の
日本ハム戦(エスコンF)で7回途中まで2安打無失点の好投を見せたが、自らベンチに合図を送って緊急降板に。29日のオリックス戦(京セラドーム)では3回1/3を3失点だったが、9試合登板で5勝0敗、防御率2.22。稼働率が低いため評価が難しい投手だが、他球団のスコアラーは「直球に力があり、奪三振能力が高いという触れ込みだったが、スライダー、チェンジアップ、
ナックルカーブと変化球の質が非常に高い。
巨人で活躍した
マイルズ・マイコラス(カージナルス)と投球スタイルが重なる。来季以降に楽天と契約延長するか気になりますね。獲得に動く球団が複数あっても不思議ではない」と実力を高く評価する。
好投の要因は抜群の制球力
2020年にフィリーズでメジャーデビューを果たし、昨季はジャイアンツとガーディアンズでプレー。メジャー通算47試合登板で4勝13敗、防御率7.00で来日当初は「日本人打者に対してどうアプローチしていくか分からないところもあった」と語っていたが、日本野球に見事な適応能力を見せている。好投を続けている要因は制球力だ。45回1/3を投げて10四死球。ストライク先行でテンポよく投げ込み、アウトを重ねる。
マイコラスも抜群の制球力が持ち味だった。150キロを超える直球、スライダー、ツーシーム、カーブとすべての球種の質が高い。15年から巨人で3年間プレーし、通算31勝13敗、防御率2.18をマーク。17年は27試合登板でリーグ最多の188回を投げ、14勝8敗、防御率2.25で最多奪三振(187)のタイトルを獲得している。翌18年にカージナルスでメジャー復帰。18勝4敗、防御率2.83で最多勝に輝くなど先発の軸として大輪の花を咲かせている。
先発としてフル回転できるか
ただ、ハワードの場合は8試合登板と少なすぎる。推定年俸1億5000万円に見合ったパフォーマンスを果たしているとは言えない。「無事これ名馬」ということわざがあるように、実力が一流でもコンディションに問題を抱えていては先発要員として計算できない。
阪神の助っ人外国人投手で歴代史上最多の10年在籍し、8年連続規定投球回到達、来日通算1475奪三振とNPB外国人選手記録を樹立した
ランディ・メッセンジャーは、週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っていた。
「このシーズン(13年)は、さらに190イニング以上を投げたことで、先発として成長し、チームからの信頼にもつながっていったことが実感できたよ。翌14年シーズンは、13年の成績よりも上を目指そうと思い、最多勝と2年連続の奪三振王の2つのタイトルと200イニング超え(208回1/3)につながっていくんだ。14年を終えて4年連続2ケタ勝利したことで、
ジーン・バッキーの5年連続2ケタ勝利に並ぶ権利を得ることができた。15年への大きな弾みとなった。それにしても200イニング近く投げるとさすがに『たくさん投げたなあ』と思ったね。一方で、やはりスターターは長いイニングを投げなくてはいけないと強く思ったし、200イニングはスターターとしての責務で、毎年目指すべきところだと思ったね」
ハワードは日本球界で成功できるか。楽天ファンは、エースとしてシーズンをフル回転する勇姿を見たいだろう。
写真=BBM