生え抜きでは40年ぶりの快挙

「ミスタータイガース」と呼ばれた掛布氏は、阪神・佐藤輝の「40本塁打」について、一つの見解を示していた[写真=幡原裕治]
千両役者である。
阪神・
佐藤輝明が10月2日、
ヤクルトとの今季最終戦(甲子園)で40号2ランを放った。生え抜き選手で40本塁打の大台を突破したのは1985年の
掛布雅之氏以来、40年ぶりの快挙となった。佐藤輝はこの日、3打点でシーズン102打点。生え抜きでの「40本塁打&100打点」は49年の
藤村富美男(46本塁打、142打点)、85年の掛布雅之(40本塁打、108打点)に次ぐ3人目の快挙である。「ミスタータイガース」と呼ばれたレジェンド2人と、肩を並べた。
掛布氏は9月28日、週刊ベースボール通算4000号記念のトークイベントに出演。1955年生まれの同級生である
江川卓氏(元
巨人)と「伝統の巨人・阪神戦」を語り合った。
話題は2年ぶりのセ・リーグ制覇の原動力となった佐藤輝に。
中日戦(バンテリン)が組まれた28日の試合前の時点で39本塁打。掛布氏は残り2試合、節目まであと1本とした縦縞の後輩に対して、こう見解を示していた。

10月2日のヤクルト戦で今季40号を放った佐藤輝[写真=宮原和也]
入団5年目、今季の本塁打量産の要因として「軸足がうまく使えている」と指摘。ところが「残り試合が少なくなってきた中で、ホームランだけ狙えばいいのに、ボールが上がらないんだよね」と、悪い時のフォームに戻ってしまっていると明かした。一流選手の誰もが通る道である。掛布氏は、こう続けた。
「(トークイベントの時点で残り2試合で)残り8打席(実際には9打席)。まだまだ伸びシロがある選手だと思うので。あと1本はホームランを意識して打たなきゃいけない。意識して打てれば、来年も40本打てると思う」
伝統球団・阪神の四番打者として、ついに金字塔を打ち立てた。ライトからレフトへ吹く甲子園特有の浜風に、多くの左打者が苦しんできた。引っ張った打球が、押し戻される形になるからである。佐藤輝は持ち前のパワーと技術で、この壁を打ち破った。球団創設90周年、背番号8が歴史に名を刻んだ。
文=岡本朋祐