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【大学野球】ヤクルト1位の法大・松下歩叶 担当スカウトは「1位にふさわしいプレーの連続」と感嘆

 

神宮ネット裏最上段で視察


学生ラストゲームとなった東大3回戦でリーグ戦通算14号を放った[写真=矢野寿明]


【10月28日】
東京六大学リーグ戦第7週
法大10-1東大(法大2勝1敗)

 NPBスカウトにとって、ドラフト直後の視察ほど、充実の時間はない。交渉権を獲得した選手は、子どものようにかわいいからだ。

 ヤクルト・余田雄飛はスカウト2年目である。昨年はドラフト1位の愛知工大・中村優斗を担当。今年も担当である法大・松下歩叶を一本釣りで1位指名することができた。

「会社の事情で、昨年は東海地区、今年は関東地区と、偶然にもそういったご縁をいただき、本当にありがたいことだと思っています。松下選手は競合するものだと思って、第1回1位入札をさせていただきましたが、まさか単独指名できるとは想像もしませんでした」

 スカウトの極意は「惚れ込む」ことである。そして、何度も足を運ぶのが流儀と言われる。

 余田スカウトは神奈川県川崎市内にある法大グラウンドに練習だけで4回、視察した。一般的にオープン戦などの実戦を見るケースが多いが、余田スカウトには独自の視点がある。

「トレーナー出身でして、ウォーミングアップから見たいんです。そこが、大事なんです。技術を見ることも大切ですが、常日頃からどんな準備をしているのか、そこをチェックポイントにしています。松下選手は非常に意識が高い。ものすごく魅力的に映りました」

松下はヤクルト1位指名。担当の余田スカウトは神宮で熱視線を送った[写真=BBM]


 学生ラストゲームになった東大3回戦を、神宮ネット裏最上段で視察した。球場全体を見渡せる場所である。この試合、松下は6打数4安打4打点と、チームの勝ち点奪取に貢献。歴代17位タイの通算14号を放った。また、三塁守備でも三塁線の打球をダイビング好捕し、素早い一塁送球と一段と目立っていた。

「1位にふさわしいプレーの連続でした。現状でも素晴らしいですが、伸びシロがある。スワローズに入団して、存分に暴れてほしいと思います。青木宣親GM特別補佐の言葉ですが『プレーを見ていて“何とかしようという気持ち”とか“あきらめない気持ち”とかがすごく出ていた。それを野球を通して感じたので。人間的な部分がプレーに出る選手って、そうはいない』と。今年は法政大学で主将を務め『チーム・松下』としてけん引し、周りへのサポート役にも徹していたと聞いています。プロではまず、自分のことに集中してもらい、いずれはスワローズの中心選手として引っ張ってくれれば、と思います」

まずはプロの流れに順応することからスタート


 巷では「ポスト・村上宗隆」の声もあるが、余田スカウトは慎重に語る。

「アマチュアとプロのレベルの差は昨今、乖離していると思っているんです。『即戦力』の期待はしても、その言葉は見直さないといけない時期にきているかもしれません。高校生、大学生は学業も疎かにしてはいけませんから、どうしても豊富な練習時間を確保するのが難しい状況となっています。松下選手をはじめ、私たちも焦らせるつもりはありません。まずはプロの流れに順応することからスタートしてもらいたいと考えています」

 周囲からの期待が大きいのは覚悟の上で、松下は控えめに語った。「一つひとつキャンプから積み上げていき、その結果、ここで活躍できたら」。松下は大学日本代表でも主将を務め、人間力の高さは誰もが認めるところ。慣れ親しんだ神宮球場で躍動する日が待ち遠しい。

取材・文=岡本朋祐
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