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戦力外で退団も争奪戦の可能性が 阪神で今季防御率0.00の「成り上がり右腕」は

 

質、量ともに豊富な救援陣



 今オフに戦力外通告を受けた選手の中で、大きな反響があったのが阪神を退団した漆原大晟だ。2023年のシーズンオフに現役ドラフトで阪神に移籍すると、移籍2年目の今季は11試合登板で2ホールド、防御率0.00をマークした。

 戦力構想から外れたのは、質、量ともに阪神の充実した救援事情が背景にある。結果だけでなく、投球内容が良くなければブルペン陣に生き残れない。漆原の今季一軍で最後の登板となった試合は6月14日の楽天戦(楽天モバイル)。1回を無失点に抑えたが3四球と制球が定まらなかった。7月3日に登録抹消されると、再昇格は叶わなかった。

 阪神に別れを告げることになったが、闘争心は消えていない。野球人生を振り返ると、まさに成り上がりだ。オリックスに育成ドラフト1で入団すると、1年目の19年にウエスタン・リーグで最多の23セーブをマーク。2年目の翌20年に支配下昇格すると、シーズン終盤に抑えに抜擢された。21年は34試合登板で2勝2敗4ホールド2セーブ、防御率3.03。さらなる飛躍が期待されたが、22年は状態が上がらず一軍登板なし、23年は16試合登板にとどまる。

「最初のほうは期待も込めて投げさせてもらっていたと思う。そこで結果を出せなかったのは力不足。期待されて支配下に上げてもらったのに申し訳なかったです。4年目に1試合(一軍)も投げられず、時間ができて、いろいろ考えちゃいました。一軍が試合をしているときに家にいたので……。見たくなくても情報が入ってくる世界なんですよね。そこは歯がゆかったです」と週刊ベースボールの取材で胸中を語っている。

現役ドラフトで阪神へ


 23年オフに現役ドラフトで阪神に移籍が決まると、強い覚悟を口にしていた。

「オリックスには育成で指名してもらって、支配下に上げてもらって、勝ちも負けも、ホールドもセーブも全部、経験させてもらった。成長につながった。感謝しかないし、本当にありがたかったです。5年間の思い入れはあったけど、現役ドラフトで指名されて、よし、やってやろうと思いました。ましてや日本一の阪神から指名をいただいた。ありがたい気持ちだし、しっかりしないといけないという気持ちのほうが大きかったですね」

「この1年が野球人生の分岐点だと思っています。その日、そのときのベストを出す。言い訳しないように、万全の準備を心掛けて。これまでも危機感はあった。でもなかなか結果が出せずにここまで来て、現役ドラフトでチャンスをいただいた。1年間、やれることをやってダメなら仕方ないと思っている。ここでやれるか、やれないかで、今後の野球人生が変わってくる。そこの気持ちが今までとは違います」

野球人生の大きな財産


 移籍1年目の昨年は自己最多の38試合登板で、1勝4敗5ホールド、防御率3.89をマーク。9月29日のDeNA戦(甲子園)では救援登板で1点を失ったが、味方が直後の攻撃で5点を奪い、オリックス時代の21年4月30日のソフトバンク戦(京セラドーム大阪)以来3年5カ月ぶりの白星を飾った。新潟医療福祉大で3学年後輩だった桐敷拓馬は「不思議な感覚です。ウルシさんとこうやってブルペンで一緒にやっている。あこがれの先輩でした。僕はプロのレベルを初めて意識したのは、大学に入ってウルシさんと出会ってからです」と尊敬の念を口にしている。

 オリックスで21年からリーグ3連覇、阪神でも今季リーグ優勝と常勝軍団の一員としてプレーしたことは野球人生の大きな財産になるだろう。救援陣の層が薄い球団は多いだけに、争奪戦になる可能性がある。阪神から昨オフに戦力外通告を受け、楽天に移籍した加治屋蓮は今季54試合登板で2勝1敗1セーブ18ホールド、防御率3.50と3球団目となる新天地で貴重な戦力となった。漆原も29歳とまだまだ老け込む年ではない。オリックス、阪神でプレーした7年間を成長の糧にして、マウンドでもう一度輝く姿を見たい。

写真=BBM
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