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【大学野球】杏林大学硬式野球部が2026年の目標に「全国1勝」を掲げる理由

 

新たな先発二本柱に期待


2026年の投手二本柱として期待されている内野[左]と古宇田[右]の2年生右腕。お互いを認め合うライバルだ[写真=矢野寿明]


 杏林大は硬式野球部創部40年の昨秋、東京新大学リーグ戦で悲願の初制覇を遂げ、明治神宮大会出場をかけた横浜市長杯でも3試合を勝ち上がり初優勝。全国大会初出場となった明治神宮大会は名城大との初戦(2回戦)で敗退したものの、確かな足跡を残した。

 2026年のチームスローガンは「繋ぐ 全員が主役」に設定した。そして、目標は「全国1勝」である。明治神宮大会後、最上級生を中心に、話し合って決めた。主将・岡田昂大(4年・佐久長聖高)は意図を明かす。

「先輩が築き上げてくれた伝統を、自分たちの代もつないでいく。同級生の横のつながり、1年生から4年生まで学年間での縦のつながりを大切にしていく。誰かが引っ張ってくれると依存するのではなく、120人の部員全員ですべてを共有する。その上で、先輩たちが果たせなかった全国1勝を目指していきます」

 硬式野球部は「強化指定部」となっており、昨秋までの旧チームの4年生は「1期生」だった。投手2本柱としてけん引した右腕・松本悠希(日本通運)、左腕・岩井拓巳(西濃運輸)を含め、中心選手のほとんどが卒業。23年秋まで母校・立大を10年指揮し、杏林大で就任3年目の溝口智成監督は新たな「投手2本柱」として、新2年生をキーマンに挙げる。

 リーグ戦通算3勝の古宇田烈(2年・聖光学院高)、同4勝の内野大翔(2年・東村山西高)の右腕コンビだ。2人は1年春から経験を積んでおり、溝口監督は「お互いに刺激をし合っている良い関係です。他校さんもマークされているのでは」と大きな期待を寄せる。

 東京都足立区出身の古宇田は2歳上の兄・来さん(武蔵大4年)が聖光学院高に在籍していた縁があり、同校に進学した。修徳中時代には2年秋の都大会優勝の実績があり、高校では3年夏の甲子園に出場。背番号10を着け、鶴岡東高との1回戦では救援登板した。

 最速148キロ。変化球はカットボール、チェンジアップ、カーブ、スプリットを投げる。目標の投手は聖光学院高で2学年上の右腕・佐山未來(立大4年)、そして、昨秋まで引っ張ってもらった3学年上の松本と岩井である。

「身近な先輩を尊敬してきました。この春のリーグ戦では最多勝を狙っています。ただ、個人としてというよりは『全国1勝』するには、何ができるのかを考えていきたい。高校時代は『負けられない』というプレッシャーの中で戦っていましたが、大学では常にチャレンジャー。下克上の精神で投げています」

都立高校出身右腕が主戦へ


 全国舞台を経験してきた古宇田と対照的な道を歩んできたのは143キロ右腕・内野だ。八王子市立第四中時代は部員不足で同級生は5人。連合チームを組んだ2年秋は市大会準優勝、同冬は優勝を遂げた。「1学年下が部員ゼロで、2学年下は13人が入部してきたんですが、単独チームの3年夏は初戦敗退でした」。

 高校は野球に力を入れていた第一志望の都立校が不合格となり、二次募集で東村山西高に進学。同期が5人。実績が乏しい高校で、本気で取り組もうとしていた内野と他の部員とは、熱量の部分で温度差があった時期もあったという。2年秋から主将を務め、3年春は部員11人で一次予選を突破し、本大会に出場した。新1年生が入部し「3年春以降、チームの意識が著しく変わった」と、3年夏の西東京大会はベスト32進出。4対5で惜敗した4回戦では強豪・東海大菅生高を苦しめた。

「高校入学の時点では、就職を考えていましたが、3年夏の登板で自信がつき、上のレベルでプレーしたいと思うようになりました。八王子市内の家から近いということで、杏林大学を志望し、キャンパスとグラウンドまでは片道自転車で20分。急こう配の坂道もありますが、良いトレーニングになっています」

 まさしくたたき上げ。研究熱心で、好きな投手は元中日中里篤史。「SNSで動画が回ってきたんです。そこで見た衝撃。『これだ!!』と思いました」。キレのあるストレートを追い求めており、カーブ、カットボール、スライダー、チェンジアップをコーナーに投げ分ける。同級生・古宇田は特別な存在だ。

「負けたくないという気持ちが、成長の原動力になる。春のリーグ戦では1回戦の先発、開幕投手を目指しています。古宇田と5勝ずつを挙げ、勝ち点5の完全優勝が目標です」

 冬場に溝口監督と面談し、2人は卒業後の進路を「プロ志望」と伝えた。古宇田は「もっと、上を見据えていきたい」と意気込む。内野は心に秘めた思いをこう明かしている。

「高校時代は『プロ』なんて、口にすることはできませんでした(苦笑)。周囲からは『何、言っているんだ』という反応でしたから……。公言した以上は、行動にも責任が伴う。常日頃の生活面、学校生活もしっかりやっていきたい。そして当時『何、言っているんだ』と言われた方を、見返したい思いが強いです」

中学&高校で公式戦未出場


3年生・長田は今春から遊撃手に挑戦。中学、高校で公式戦未出場から、努力で這い上がってきた[写真=矢野寿明]


 内野だけでなく、杏林大という環境下で潜在能力を開花させるケースが多い。野手では3年生・長田裕海(相洋高)が筆頭格と言えるだろう。

 中学時代に在籍した中本牧シニア、相洋高を通じて「公式戦に出場したことがありません」と語る。杏林大への進学は「自分のレベルを考えて、試合に出られそうなチームで、なおかつ勝てる大学を志望しました」と話す。

 地道に努力を重ね、昨年2月末からの大分キャンプでのアピールが実り、昨春から三塁のレギュラー奪取。秋には打点王(11)とベストナインを受賞し、明治神宮大会初出場を決めた横浜市長杯でも打率.600(10打数6安打)、6打点の活躍で、最優秀選手を受賞した。

「出場機会のない選手でも、一つのきっかけをつかめば、成長できる。今年1月2日、玉城秀一コーチと中本牧シニアに挨拶に行ったんですが、村上林吉監督は自分の成績を知っていて『うれしいよ』と喜んでいただけたので良かったです。中学時代は何もできませんでしたので、ようやくラインに立てたと言いますか、実力を認めていただき良かったです。昨年までは下級生で、4年生についていくだけでしたが、今年は自分が中心選手として、チームを引っ張っていく役割が求められる」

 昨秋までの不動のレギュラー・浦本大河(エイジェック)が抜けたショートに挑戦中だ。「肩には自信があります。ショートでノーエラー。首位打者とベストナインを狙っていきたいです」と意気込み「大学卒業後は、上のレベルで野球を続けたい」と語った。

三大指針を遵守


主将・岡田は溝口監督も認める抜群のリーダーシップでチームをけん引している[写真=矢野寿明]


 主力組のAチームは2月23日から3月3日まで、鹿児島県指宿市内でキャンプに入る。心身を鍛え上げ、秋春連覇へ向けた万全の準備を進めていく。

 溝口監督は2024年1月の就任時「三大指針」を定めた。年を重ねていくごとに、その「精度」は上がっているという。

一、ちゃんと生活をする
二、ちゃんと練習する
三、全員でチームを作る

 主将・岡田は決意を示す。

「昨秋の実績を受けて、より見られる立場となるため、自覚ある行動が求められる。一人ひとりの意識レベルを上げていくのと同時に、チーム全体として同じ方向を向いていかないといけない。AチームとBチーム(2月15〜22日、鹿児島・枕崎)は別々にキャンプを行っていますが、4年生を窓口に情報共有をしています。三大指針を遵守するとともに、当たり前のレベルを上げていきたいと思います」

 育成力の高い杏林大が所属する東京新大学一部リーグは創価大、共栄大、東京国際大、流通経大、駿河台大と実力が拮抗する群雄割拠である。昨年のチームはスローガンの「Challenger〜1へのこだわり〜」を徹底して頂点へと登り詰めた。26年は「繋ぐ 全員が主役」を合言葉に、一致団結で戦いに挑む。

取材・文=岡本朋祐
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