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川口和久のスクリューボール

川口和久コラム「急場(キューバ)しのぎじゃいけないよ?」

 

マウンドでのA.マルティネス[右]。口元を隠しているということは日本語なのか……


亀井、おめでとう!


 ようやくお客さんを入れるようになったと思ったら、九州を中心に集中豪雨……。今の日本は、本当に何が起こるか分からない。

 プロ野球も中止が相次ぎ、120試合ができるのかという状況になってきた。もう一つ心配なのは、試合の消化を優先し過ぎ、悪条件の中の試合が増えてしまうのではないか、ということ。7月9日、DeNA戦(マツダ広島)の森下暢仁がそうだったが、足元が滑り、球速がろくに出ない状態でも試合を継続した。

 それじゃなくても過密日程の中、クソ暑い時期に試合を強引に続けることで、故障者が増えてしまうかもしれない。今の選手は、体も心も弱いからね。

 体が弱いと言えば、俺が巨人のコーチ時代、亀井善行がそうだった。胸が痛い、足が痛いと、いつもどこか痛いと言っていた気がする。ただ、あいつは心は強かった。自分が苦しい時期も笑顔を絶やさず(弱音は吐いたが)、俺が「あんまり痛い、痛いと言うなよ!」と冗談で言っても笑顔で返してくれた。

 その亀井が通算1000安打か。彼はプロ入り後、4回骨折しているらしいが、顔面骨折も指の骨折も俺のコーチ時代だった。ケガがつきものの選手は、なかなか一流になれないけど、まさに亀の歩みで来て、昨年は一番打者として結果を残し、優勝に貢献。16年目の今季もチームに欠かせぬ戦力だ。

 1000安打達成には、心から、おめでとうと言いたい。

違和感が……


 話は変わるが、テレビで中日戦を見ていて、少し違和感があった。マスク越しだが、キャッチャーが外国人みたいな顔をしてるんだ……と思ったら本当の外国人でアリエル・マルティネスとか。すぐ週べの名鑑を見たが、いない……。と思ったら育成のページにいた。キューバ出身で7月1日に支配下に入った選手だったんだね。

 外国人がキャッチャーをしていただけの違和感じゃない。俺のメジャーの捕手のイメージは、和式と洋式トイレの違い。彼らはヒザや足首が固くて、どうしても尻が浮く。でも、アリエルは、ふつうに日本人っぽく座っていた。キューバのトイレも和式なのかな(ジョークです)。

 この間、テレビ番組でキューバ野球の特集をしていたが、アメリカがトランプ大統領になって国交が悪化し、今の野球少年の夢がメジャーではなく、日本球界になってきたらしい。あこがれの選手に「デスパイネ」と言っていたからね。

 過去、外国人捕手はロッテのディアズとか何人かいたけど、言葉の問題もあって、まず成功しないポジションだと思っていた。偏見かもしれないが、リードも雑なイメージがあったしね。

 ただ、与田剛監督が支配下にしたということは、必要性があったからだ。1つは打撃だろう。あのバッティングは十分戦力になる。そして、もう一つはセオリーを崩すことかもしれない。

 以前も書いたが、落合博満さんが監督を辞めて以降、中日は能力の高い投手が多いのに、どうしても伸び悩む傾向があった。俺が見ていて感じたのは、過剰なデータ重視だ。

 インコースが好きな打者には徹底してアウトコースを投げさせることが多かったが、打者だってアウトコースにしかこなければ目が慣れる。その中でもアウトコースで勝負しようと思ったら、より厳しいコースに投げさせるしかなく、ボール球が増え、投球が窮屈になってしまう。インコースを織り交ぜたり、コースは甘めでもいいから思い切って腕を振らせたりしないと、なかなか若い投手は育ってこない。外国人は忖度(そんたく)がないから、意外と思い切ってできるんじゃないかなと思っていたら、11日、カープに11安打を食らった捕手がアリエス……アリエないっス。まだまだ経験不足だったか。

 どんな選手でも時間はかかるということか。与田監督、急場(キューバ)を救うための抜てきだったかもしれないが、あとで単なる急場(キューバ)しのぎだったと言われないようにね。

PROFILE
川口和久/かわぐち・かずひさ●1959年生まれ。鳥取県出身。左投両打。鳥取城北高からデュプロを経てドラフト1位で81年に広島入団。3年目の83年に先発の一角を確保し、86年からは6年連続で2ケタ勝利を挙げた。95年にFAで巨人へ移籍、98年限りで現役引退。巨人のコーチも務めた。通算成績435試合登板、139勝135敗4セーブ、防御率3.38。

関連情報

川口和久

広島、巨人で活躍した川口和久氏が独自の視点でプロ野球に斬り込む連載コラム。

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