宮本効果でタフになった
今季、打率.315、34本塁打、33盗塁で3度目のトリプルスリーに輝いた山田
今回は、前年球団ワースト96敗の最下位から2位に躍進した
ヤクルトについて書いてみたいと思います。
ヤクルトは今季から私のPL学園高時代の後輩でもある
宮本慎也君がヘッドコーチとなり、キャンプから注目してきたチームです。宮本コーチはしっかりとした理論があり、かつ選手に厳しい言葉が言えます。いくらケガ人が多かったとはいえ、96敗とは負け過ぎです。選手にも甘さがあったと思います。コーチ就任を聞いたとき、それを打破するには最適な人物だなと思いました。
序盤は投手陣の不振もあって、なかなか勝ち切れず、最下位が続きましたが、交流戦から一気に急浮上し、最終的には9つの貯金も作っています。おそらく昨年のヤクルトなら一度低迷すると、そのまま抜け出せなかったのではないでしょうか。キャンプから厳しい練習を積み重ねる中で、メンタル的にもタフになっていたのだと思います。
交流戦からの急浮上の最大の要因は、投手陣、特にリリーフ陣の確立です。
カラシティーから代わってクローザーに座った
石山泰稚、そこにつなぐセットアッパーの
近藤一樹と勝利の継投が固まったことで、戦いが安定してきました。終盤8、9回の逆転負けは、チームの雰囲気を悪くし、後々まで尾を引きますが、それが一気に減りました。
彼ら2人がいることで先発も「7回まで投げ切れば」と安心感が生まれますし、打線も「これだけ点を取ってもダメなのか」という展開が少なくなり、投打がどんどんかみ合っていきましたね。
山田の復活が原動力
打線は、もともと力を持っている選手が多いのですが、何と言っても3回目のトリプルスリーを達成した
山田哲人選手の復活でしょう。
山田選手については、若手時代から注目してきました。足を大きく上げて、ゆったりした間を作り、軸回転で強い打球を弾き返す。能力もセンスも非常に高いものがあり、どこまで伸びていくのだろうと思っていました。
それが昨年はプロ入り後、初めての壁にぶち当たりました。ほかのバッターが故障や不振に陥る中、相手チームのマークが集中し、厳しい攻めを受ける中で少しずつバッティングが崩れていったということだと思います。
彼のように足を大きく上げるタイプは足を着いたとき、少し体が前に突っ込んでしまい、ボールとの距離を取れなくなることがあります。もちろん、自分でも分かっていたはずですが、昨年は自分もチームも結果が出ない中で、知らず知らずのうちに自分を追い込んでいたのかもしれません。
それが今季は宮本コーチの厳しさもあって、うまく初心に返ったというのでしょうか、春季キャンプを見ても、明るく、うまく気持ちが切り替えられたように思いました。さらに
青木宣親選手の復帰に加え、
坂口智隆選手、
バレンティン選手、
雄平選手とほかの選手も好調。こうなると、相手投手も山田選手だけ警戒するわけにはいきません。打席でもいい意味の余裕が感じられ、軸足に乗った本来の素晴らしいスイングをシーズンで通し、キープすることができていました。
不振を乗り越えたというのは、選手にとって大きな自信にもなります。2019年の山田選手がさらに楽しみになってきました。
写真=BBM