あくまで立場は「助っ人」。活躍できず、居場所がなくなればお払い箱になるのが常だ。それでも、日本での“実績”は新たに契約する球団にとって大きな信頼となる。ここでは移籍を機に輝きを取り戻した3選手にスポットを当てていく。 ※成績は8月18日現在 愛され続けるハクション大魔王
●ゼラス・ウィーラー(
楽天→巨人)
楽天でそうであったように、ウィーラーの愛されキャラは変わらない。「ウチにはいないタイプ」は、
原辰徳監督が新戦力を評するときに用いる常套句なのだが、何に対しても全力で、明るくて愛嬌抜群のキャラクター(しかもハクション大魔王似)は、確かに巨人にはなかったものだ。
6月25日、外国人枠の関係で開幕一軍から漏れたところに目を付けた巨人サイドが楽天に獲得を打診。4年目左腕の
池田駿とのトレードが成立したのだが、加入直後から即一軍に合流し、相手先発の左右に関わらず三〜七番(四番を除く)の幅広い打順で起用されている。8月18日時点で規定打席には及ばないが、打率.283、6本塁打、15打点は十分な働き。楽天時代に守ることが多かった一、三塁だけではなく、左翼に加えて二塁にも就くなど、起用に全力で応えている。
それまでチームには一軍戦力となる助っ人野手はG.
パーラのみ。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、新たな選手を容易には海外から獲得できない中、楽天で5シーズンを過ごすなど、日本での経験豊富なウィーラーは、助っ人獲得に付きまとうさまざまなリスクを回避できる最適な選択肢だったわけだが、早くも打線に、ベンチに、欠かせない存在となっている。
加速する“第2の主砲”
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ステフェン・ロメロ(
オリックス→楽天)
オリックス時代には3シーズンで打率.268、69本塁打、192打点と申し分ない成績を残したロメロ。オリックスとは2年目の2018年から3年契約を結んでおり、3年目の20年については球団とロメロ側で残留交渉が行われたが、まとまらず。2億7500万円という高額年俸と、19年の右ワキ腹痛などで3度にわたる故障離脱がネックとなったようだ。
すると楽天がこの大砲に目をつけ、今春のキャンプイン直前に6500万円(金額はすべて推定)という破格の値段で獲得に成功。ここまでは主砲・
浅村栄斗らの15本に並ぶリーグ2位タイの本塁打をマークするなど絶好調だ。シーズン中にウィーラーをトレードに出す決断できた要因にもなった。
怖いのが故障離脱だが、首脳陣は起用法に細心の注意を払っている。ロメロ、
ブラッシュ、浅村で指名打者起用を回し、守備での負担を軽減。休養日も設けている。スタメンを外れた7月28日の
ロッテ戦(ZOZOマリン)では4回に代打で登場すると、1点差に迫る満塁本塁打を放った。「しっかりと1年間ケガをすることなく、日本一を取れるように頑張りたい」。五番、六番に座る“第2の主砲”が有言実行へ加速中だ。
腕がしっくり、虎にもしっくり
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ロベルト・スアレス(
ソフトバンク→阪神)
入団会見を行った1月のときに、誰が155キロ以上を連発し、勝ち試合の最後にスアレスがマウンドに立っていると予想しただろうか。
その時点では助っ人投手の中でも3番手と見られていた。つまり先発をするなら
ガンケルの次。中継ぎなら
エドワーズの次、という存在でしかなかった。その大きな要因が2017年にトミー・ジョン手術を受けたことにある。苦しいリハビリを行い、18年に復帰。しかしソフトバンクで先発として期待された19年は0勝4敗、防御率5.74と期待外れに終わったことで戦力外になった。
しかし、阪神が救いの手を差し伸べた。トミー・ジョン手術を受けた場合、腱が腕に馴染むのが2〜3年目と言われており、今年はそのシーズンに当たるのだ。実際に春季キャンプから順調な調整を続けてきたスアレスは、開幕一軍、しかもセットアッパーの座をつかむ。その後も160キロを計測する速球でチームに欠かせない存在になった。
抑えの
藤川球児が再調整で二軍降格になると、クローザーを任される。「チームを勝利に導けるように務めていきたい」と意気込むスアレス。現在リーグトップタイの7セーブで存在感を増している。
写真=BBM