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廣岡達朗コラム

菅野智之よ、中6日ローテに革命を起こせ!/廣岡達朗コラム

 

「中5日でヒーヒー――」


開幕から負けなしの菅野


 菅野智之が開幕8連勝を飾った。開幕投手を務めての8連勝は、1990年の斎藤雅樹以来だという(8月25日のヤクルト戦で9連勝)。それ自体、褒めてやりたい。菅野は重心を下に置いて投げている。ピッチングというのもほかの投手に比べて知っている。

 しかし、本来、あの体で勝てるというのはおかしい。昨年よりは引き締まっているが、巨人の選手はなぜ太めの体型が多いのか。田口麗斗にしても胃袋が膨らんで見える。おそらくサプリメントを摂り過ぎているのだと思う。それよりも、自然のエネルギーを吸収することだ。深呼吸で空気を吸い込んで、食事のときにはよく噛んで唾液を混ぜる。そうすると消化が楽になるから五臓六腑は狂喜して働く。結果として、選手寿命は延びる。そういう基本が分かっていない。菅野が体をもっと絞り込んでほうったら、いまの何倍も良い記録が作れるのだ。そこを指摘する評論家がいない。結果においてよければそれでいいと言うだけだ。

 今回、中5日で完封した菅野は「中5日でヒーヒー言ってたら先発投手は務まらない」と言って東京ドームの観客をどよめかせていた。

 最近の野球中継を見ていると、先発発投手の球数が100球に達すると、実況アナウンサーは決まって、そのことに触れる。100球という目安はどこから来ているのか。

 アメリカでは、1イニング15球として3イニング(45球)投げた翌日に1日休ませれば肩は回復するという考え方がある。9イニング投げると135球。45球×3だから3日の休養で肩は回復するが、もう1日余分に取って中4日に。さらに、135球を100球にしたほうが効率よく回るということで、各チームは100球をメドに先発投手を交代させるようになった。5人の投手が中4日のローテーションで回る。その「100球理論」を日本球界は上っ面だけマネをして、先発投手は1週間に1回登板。それが5日に1回になってオタオタしているようでは、楽をしてきた罰である。

 だから、菅野が「中5日でヒーヒー――」と言うのは当たり前のことであって、驚くことでもなんでもないのだ。

 だいいち投手というのは1週間に1回の登板では、エネルギーを持て余す。私が西武の監督時代、東尾修は登板翌日に、ゴルフに興じていたことがあった。高校のゴルフ部だった私の娘とクラブでバッタリ顔を合わせ、東尾は「親父さんには内緒にしてほしい」と言ったらしい。シーズン中にゴルフをするのは不謹慎といえば不謹慎だが、人間はそれぐらいエネルギーがある証拠。中6日で回していたら投手は何人いてもキリがない。菅野には中6日の常識をブチ破る革命を起こせと言いたい。

高い次元の球界に


 菅野に記録を作らせている野球界も情けない。今後、各球団が体作りから思考、投球の何たるかについて研究していったら、菅野もこれまでどおりの投球を続けるわけにはいかなくなる。それくらい高い次元の球界にしてほしいのだ。

 最後に、巨人が大量リードされていた8月6日の阪神戦(甲子園)で増田大輝がサプライズ登板した件についても言及しておきたい。あれはダメだ。巨人は投手があり余っているのに、なぜ野手が代理でほうるのだ。戦力がないチームがああいう起用をするのなら反対はしない。しかし、巨人ではそういうことは絶対にやったらいかん。

『週刊ベースボール』2020年9月7日号(8月26日発売)より

廣岡達朗(ひろおか・たつろう)
1932年2月9日生まれ。広島県出身。呉三津田高、早大を経て54年に巨人入団。大型遊撃手として新人王に輝くなど活躍。66年に引退。広島、ヤクルトのコーチを経て76年シーズン途中にヤクルト監督に就任。78年、球団初のリーグ制覇、日本一に導く。82年の西武監督就任1年目から2年連続日本一。4年間で3度優勝という偉業を残し85年限りで退団。92年野球殿堂入り。

写真=BBM

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