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デーブ大久保 さあ、話しましょう!

巨人・岡本は何十年に一人の逸材です。タイミングの取り方は天才ですよ/デーブ大久保コラム

 

24歳ながら巨人の四番の風格が漂っていませんか!? 貫録も出てきています。まさに大砲とは岡本のことですね/写真=桜井ひとし


 暑い夏が続いています。猛暑の中、プロ野球も新型コロナウイルス感染者を出すことなく、観客の皆さんを入れての試合を続けています。このまま、この方向性を保ちながら、観客数を増やせていけるようになったらいいですよね。

 そのプロ野球、セ・リーグでは巨人が首位に立っていますが、最近は必ずしも圧勝というか、相手をねじ伏せてという戦い方があまりできていません。それも主将の坂本(坂本勇人)や丸(丸佳浩)などの打撃不調が響いていると思います。それでも得点がリーグ1位(240点=8月23日時点)で本塁打も73本とトップなのは、開幕から四番に座り続ける岡本(岡本和真)がいるからだと思います。

 現在本塁打は単独トップの18本。打点はリーグ1位タイの45打点と素晴らしい四番ぶりを見せています。

 個人的に、すごい打者が育ったなあ、と感心しています。デーブ的視点から言いますと、岡本は「タイミング」を取るのが天才的にうまいんです。バッティングで一番大事なことが、ピッチャーの投げるタイミングを測ること。これができないと、ボールを打つことは当然のようにできませんよね。

 しかし、実はこれが一番難しいことなのです。私などはコツをつかむのに最後まで苦労しました。ピッチャーの投球を見ながら「1、2、3」のリズムだな、とか「1、2の3」だな、などと研究したものなのですが、岡本は、そこはあまり気にすることなく、タイミングを取れるのです。第1打席で、初めて対戦する投手に対しても、これはタイミング合ってないぞ、と思っていても、その打席の中で、いつの間にか合わせている。これはなかなかできないことです。

 私の知っている限りでは、キヨ(清原和博)、イチロー、さんぺい(中村剛也)もタイミングを取る天才です。岡本は彼らに匹敵するすごい打者ですよ。そして何より内角のさばき方も一流です。内角に来たボールを、体を回転させながら、バットを遅らせてものすごいインサイドアウトのバット軌道を作りながら打っていくことができる。これができるとゴルフのフェードボールのように、レフトのファウルゾーンからフェアゾーンに打球を飛ばすことができます。こんな打ち方ができる打者はなかなかいません。

 そしてかなり太い太ももが、この高い技術を支えています。あんなデカい太もも、見たことないですよ。さらに巨人の四番という半端ないプレッシャーを受ける打順でさえも跳ねのけるだけの、天然な性格を持っています。これも巨人の四番を務め抜くには必要な要素なのですが、十分に持ち合わせている。

 私から言わせたら何十年に1人いるかいないかの逸材だと思いますね。それが巨人の四番ですから。まだまだ24歳と若いので、向こう10数年間、巨人の四番は安泰ですよ。

『週刊ベースボール』2020年9月7日号(8月26日発売)より

PROFILE
大久保博元/おおくぼ・ひろもと●1967年2月1日生まれ。茨城県出身。水戸商高から85年ドラフト1位で西武に入団。トレードで巨人入りした92年に15本塁打。95年現役引退。野球解説者やタレントを経て、2008年に西武コーチに就任し日本一に貢献。12年からは楽天打撃コーチ、二軍監督を経て15年に一軍監督に就任した。15年限りで辞任し、16年から野球解説者をこなしながら新橋に居酒屋「肉蔵でーぶ」を経営している。

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