週刊ベースボールONLINE

大島康徳コラム

常総学院・島田直也監督の甲子園初勝利はうれしかった。ついに開幕のプロ野球はリリーフ投入の判断がカギになるでしょう【大島康徳の負くっか魂!!】

 

タイブレークの末、甲子園初采配で勝利を挙げた常総学院高の島田直也監督。このあと選手からウイニングボールを受け取った


「SSコンビ」の人気者


 最後は東海大相模高の優勝で幕を閉じましたが、2年ぶりにセンバツ高校野球が開催されました。

 僕が気になっていたのは、常総学院高の監督として出場した日本ハムの後輩の島田直也です。1回戦ではセンバツ史上初のタイブレークで勝って、ホントにうれしかったです。

 彼は、ちょうど僕が日本ハムに移ったときに入ってきた選手で、ルーキーのときは宇宙(芝草宇宙)と2人で「SSコンビ」で売り出して、すごい人気でしたよ。キャンプのとき、バレンタインデーでチョコレートがトラック2台分来たんですから。球団の方に「大島さんも来てましたよ」と言われて取りにいったら、1個だけ、ナオミさんからでした(笑)。

 直也は体は小さかったけれどいい選手でね。「何であんなに若いうちにトレードに出しちゃったんだろう」というのが気になっていました。

 直也とか、同時期ぐらいにトレードで横浜に行った高田(高田博久)には、トレードが決まった後の自主トレで、室内のウエート・トレの器具などを使うのを遠慮していたので、「横浜には行くけどOBやないか、俺らが外使っているときには使えよ」みたいなことを言ったことがあって。こちらはそのことを忘れていたのですが、高田なんかは、のちに私が講演をしたときにわざわざ来てくれ、「あのときはうれしかったですよ」と涙ながらに言ってくれたりしてね。まあそんな思い出もあったりで、直也のことも気になっていたんですよ。宇宙のほうは、こちらも今、高校野球(新潟・帝京長岡高)の監督をしていて、たまに電話で話したりもしているんですが、直也とは特に連絡も取っていませんでしたので。

 でも、タイブレークで最初の打者にバスターさせたのは勝負勘が良かったですね。やっぱりプロで厳しい場面を経験していると、ああいう勝負どころでちゅうちょなくそういうサインも出せるのかもしれないですね。テレビで見たら、全然変わってなくて。「直也はいつまでも直也だな」と、うれしかったですよ。

 ほかの試合もテレビで見ましたけれども、今大会はいいピッチャーがいましたね。小園(小園健太、市和歌山高)君、あと仙台育英高のピッチャー(伊藤樹)も良かったですね。そして中京大中京高の畔柳(畔柳亨丞)君。スピンの効いたいい球を投げますよね。体をしっかりつくっていけば、もっと良くなると思いますよ。天理高の達(達孝太)君は、「大きい割にはまとまっているな」という感じでしたが、大きく伸びてほしいですね。野手では、東海大相模高のショートの選手(大塚瑠晏)のグラブさばきの良さが印象に残っています。

 1週間500球の球数制限については、日程による有利、不利もあって、ちょっとややこしくて今のところ何とも言えませんが、いいピッチャーがいい状態で投げて、それをバッターが打つ、という形をできるだけ作ってもらいたいですね。そうしないとバッターのレベルも上がっていきませんから。

リリーフ投入の判断がカギ


 プロ野球も始まりました。開幕3連戦は、巨人DeNAの試合を中心に観戦しましたが、勝敗はまだ始まったばかりなのでともかくとしても、やっぱりゲームが始まると、チェックすべきプレーが出てくるなというのは感じました。

 3月26日の開幕戦の1回の、DeNAの、送球がそれたのをキャッチャーが捕りにいってホームベースを空けてしまい、梶谷(梶谷隆幸)の生還を許したプレーなどは、あってはならないミスですからね。やるべきことをやって負けたのであれば、そんなに悪い負けではない、ということになりますが、そういうミスというのはしっかりチェックしないと。

 巨人にも第3戦で8回にベテランの中島(中島宏之)の走塁ミスがありました。巨人は第1戦で中川(中川皓太)が打たれたという不安要素がありながらも、2勝1分けはまあよしというところですけれども、そこはチェックが必要だと思います。そういう細かいところをきっちりやっていかないと、ペナントというのはなかなか獲(と)れませんのでね。

 DeNAは、主力外国人選手が抜けている中で、日本人選手だけでここまで戦えているのは、まあ新人監督としては頑張っていると思います。

 あと、開幕シリーズでは、楽天の早川(早川隆久)が目立っていましたね。初登板初勝利。ピンチを迎えても、ダブルプレーで逃げられる投球術も持っていて、実戦的なピッチャーだなと思いました。田中(田中将大)が故障してしまいましたので、早川にはよけい期待がかかりますよね。

 そして何と言っても、ソフトバンク。「ここで」というところで、必ず誰かが打ちますもんね。さすが王者の戦い方だな、というのが印象に残りました。

 今年の戦いを見ていて思うのが、延長戦がないので、各チーム、代打や代走などをどんどん繰り出してくるな、ということです。そうなると難しいのは、守るほうがそのときに同じようにどんどんピッチャーをつぎ込んでいくべきかどうか、というところでしょうね。本当に必要なところでは、どんどんつぎ込むべきでしょうけど、いつもいつもそれをやっていては、たぶん1シーズンは持たなくなりますのでね。そこがつぎ込むべきポイントなのかどうか、という判断力が、非常に大きいものになってくると思います。

 そこのところの判断が、各チームにとって、オリンピックブレークまでのところでAクラスになるか、Bクラスになるかの分かれ道になるのではないかな、そんな気がした、今シーズンのスタートでした。

PROFILE
大島康徳/おおしま・やすのり●1950年10月16日生まれ。大分県出身。右投右打。中津工高からドラフト3位で69年中日入団。3年目の71年に一軍初出場の試合で本塁打を放つ。76年にはシーズン代打本塁打7本の日本記録。翌77年に打率.333、27本塁打の活躍で不動のレギュラーとなり、79年にはリーグ最多の159安打、36本塁打、リーグ3位の打率.317の大活躍。83年には36本塁打で本塁打王にも。88年に日本ハムへ移籍、90年には史上最多の2290試合を要して2000安打に到達した。94年限りで現役引退。2000年から02年まで日本ハム監督も務めた。現役通算成績2638試合、2204安打、382本塁打、1234打点、88盗塁、打率.272。

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング