身長190cmの体いっぱいを使って、最大限の出力をボールに乗せる佐々木朗。やはり20年に1人の逸材です。大きく育ってほしいです[写真=毛受亮介]
いいですねえ!
佐々木朗希のインタビューが掲載されているんですってね、今週号(6月21日号・6月9日発売)は。あとで読ませてもらいます。ということで、今週は佐々木朗の話をさせてもらいますよ。
5月27日の甲子園での
阪神対
ロッテ戦を見ましたが、さすがのボールでした。高校生で今まで160キロを投げた選手はほかに
大谷翔平(現エンゼルス)しかいないのですから、そのポテンシャルは素晴らしいですよ。ただまだ体の線が細いので、ケガに気を付けながら、投げていくほうがいいと思います。それにしても、あの体の使い方から投げ込まれるボールは、本当に威力があり、将来がすごく楽しみです。
と、楽観的なことを言いながらも、少し気になることがありました。それは佐々木朗の腕の振りでした。昨年見たときより、腕のしなりがないなあ、と感じたんです。そこで電話取材です。対戦した選手たちに感想を聞いてみたら「映像で見た去年のほうが速かったし、怖かった」という意見が多かったのです。
現役の投手の中には、球界のトップに君臨する投手のいいところをマネして、取り入れようとすることがあります。それを踏まえて佐々木朗の投げ方を見ていると、少し
オリックスの
山本由伸のような「アーム式」になっているような気がします。
私の
楽天の二軍監督時代に、
武藤好貴という投手がいました。ご両親のどちらとも球技系のスポーツで活躍されたという話を聞いたのですが、彼はその生い立ちもあったのでしょう、しなやかに投げるタイプよりは、腕の力を入れるアーム式のような投げ方だったんです。
その後、話し合った中で、しなやかなヒジの使い方の投球フォームになるように変更したのです。それは失敗でした。彼にはその投げ方は合わなかった。やはり、小さいころから投げてきたアーム式をうまくアレンジしながらプロの投球フォームを作るべきでした。
そのように、選手の体つきに合わせた、小さいころから身に付いた投球フォームというのがあるはずです。それがその投手にとって一番、出力が高まるということなのです。つまり、今の佐々木朗は、少し違う方向に行っているような気がします。
現在のところ、井口(
井口資仁)監督、吉井(
吉井理人)投手コーチも、投球フォームをいじらない方向で教育を進めています。そこで自分なりに研究しているからこそ、そういう投球フォームなるのかな、と思います。まだまだ体ができていないので、今やっているようなメニューをこなしていくでしょう。その中で首脳陣がいつ、現状を伝えるのか……楽しみです。絶対につぶしてはいけない20年に1人の、素晴らしい投手ですから、そこも踏まえて教育はされていることを信じています。
最後に、これだけは言わせてください。佐々木朗などの世代が活躍していますが、その中でデーブ的No.1はオリックスの
宮城大弥です。あの腕の振りは今年に限っては世代最高ですね。
PROFILE 大久保博元/おおくぼ・ひろもと●1967年2月1日生まれ。茨城県出身。水戸商高から85年ドラフト1位で
西武に入団。トレードで
巨人入りした92年に15本塁打。95年現役引退。野球解説者やタレントを経て、2008年に西武コーチに就任し日本一に貢献。12年からは楽天打撃コーチ、二軍監督を経て15年に一軍監督に就任した。15年限りで辞任し、16年から野球解説者をこなしながら新橋に居酒屋「肉蔵でーぶ」を経営している。
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