けん制もうまかった阪神・江夏
ハンガーを頭に巻くと……
この間、テレビを見ていたら地面に線を引き、そこにつま先を合わせて真っすぐ立ち、恥骨と尾骨の高さを平行にして歌うと、すごく声が出るというのをやっていました。息がずっと続くというのかな。普通は尾骨のほうが高いでしょ。声というのは、結構、姿勢や首回りと関係していて、整体の世界でも面白いやり方がいくつもあります。
一つはクリーニング屋に出したときにもらう、細い針金みたいなハンガーがあるじゃないですか。これを使うやり方があります。ぐっと絞って頭にバンダナみたいに巻いて、引っ掛けるところを左に向け、そこに意識を置いてみてください。孫悟空の頭の輪っかみたい? 大丈夫、呪文できつくなったりしないですから(笑)。これで声を出すと、すごく伸びるんですよね。ハアア〜〜。どうですか? つけないと、ハア〜……です。ありゃ、信じてないですね。ほんとですよ(笑)。
はい? これと野球がどう関係するか? まったく関係ないでしょうね。せっかくだから話しておきたかっただけです(笑)。
そうそう、昨日のCSは見ましたか(11月6日ファーストステージ)。甲子園の阪神-
巨人戦です。やっぱり阪神の高橋(
高橋遥人)のヒジはもたんかったですね。見ていて、いいときと投げ方が違った。コントロールもばらけ、いつもみたいに低めになかなか収まらなかったですからね。抑えてはいましたが、相手の菅野(
菅野智之。巨人)も100パーセントじゃなかったと思います。いいときの横に滑るようなスライダーじゃなく、タテ変化でしたから。
阪神がエンドランを外された場面もありましたよね(5回裏)。走者一塁で糸原(
糸原健斗)が打席だったけど、完全に外したのはいいにしても、(巨人の捕手の)小林(
小林誠司)の送球は物足りなかった。外国人の走者(マルテ)がおかしなスライディングをしたから、少しずれたら(二塁ベース上で捕球したショートの)坂本(
坂本勇人)がケガしてましたよ。もっとパチンといいとこに投げてやらんとね。試合って、そういう一つひとつのプレーの積み重ねが流れとか勢いにつながるんですよ。
みんなエンドランだったと言ってるけど、外国人の単独スチールの可能性もあると思うんですけどね。バッターが何も反応しなかったし、スタートのタイミングがちょっとだけ早かったでしょ。エンドランなら、もうワンテンポ遅くてもよかったと思うし、ランエンドヒットというなら、もうちょっといいスタート切らんと。
でも、エンドランって最近減りましたよね。外し気味の球をバッターが必死に当てて走者を進めたりって滅多に見ない。策がないと言うか。一、二番も下位打線も、みんなクリーンアップと同じようにのびのび打っていますが、これもどうなんですかね。1点を何としてももぎ取るという執念をもっと見たいし、そういうお客さんもいると思うんですけどね。
返球は大事です
対して守備も下手になった。バントのときもカーブを投げさせれば空振り、と思うときも普通に投げて、普通にやられています。バントだけに限らんけど、自分から仕掛けてアウトにするというのがほとんどないのも物足りないんですよね。この間、話した、僕の一塁へのピックオフプレーもそうだけど、たまたまこうなったからアウトにした、アウトにできなかったじゃなく、自分から仕掛けてアウトにしようという雰囲気が感じられないんですよね。僕は、そういう欲があったし、それがすごく楽しかった。
投手の返球もそうですよ。今はなんも考えず、ヒザを着いたまま山なりの球を返しているヤツもいるけど、キャッチャーにとって、すごく大事なことなんです。ピッチャーのグラブを持った肩口に、テンポよく、優しく捕りやすい球を投げなきゃいけない。勇気を持たせ、ピッチングのリズムをよくするようにね。
阪神時代の権藤(
権藤正利)さんとか、テンポのいいピッチャーは、投げたあと、そのリズムのまま1、2、3と下がってプレートに足を乗せるタイプが多かった。だから僕は、プレートに足が着いたときにグラブを上げたらそこに来るように返しました。かなりテンポは早いですよ、大洋時代、別当(
別当薫)監督に怒られたこともありました。リズムが早くなってフーフー言うヤツがいるぞって。でも、捕ったあと、どうするかは投手の勝手じゃないですか。すぐ投げなきゃいいだけ。江夏(
江夏豊。阪神ほか)みたいに、疲れると勝手に抜いて投げるヤツもいましたしね(笑)。
それにね、返球でも、いろいろ遊べるんですよ。前も話したかもしれんけど、知らん顔したままピッチャーとショートの藤田(
藤田平)に腹の前で丸を描くようなサインを出しておく。そのあと捕ったら普通に立ち上がって普通に投げるモーションに入るんですが、最後だけピュンと。それで投手の耳元あたりに投げ、投手はそのまま捕らんで、セカンドまでで届いて二塁走者がアウトです。決まるとすごく楽しかった。
ピッチャーもそうですよ。走者が出たら、あわよくば刺そうと、いろいろ研究していた。今よりけん制のボークのルールが緩かったのもあるけど、最初、江夏はほとんど刺しましたからね。あいつは、ほとんど走者を見ないんですよ。それで見ないまま捕手に投げるのとまったく変わらんリズムでしゃっと一塁に投げて、だいたい刺した。でも、巨人の川上(
川上哲治)監督が「これはボークだ。大阪の審判は甘い」と文句言ってから、ヘソを曲げたのか普通のけん制しかしなくなった。
大阪、東京の審判が結構、違っていたのは事実です。昔はセンバツのあとの開幕で甲子園でスタートしたこともあるけど、それが終わって東京に行くじゃないですか。たいてい岡田(
岡田功)さんが最初の試合の球審なんだけど、真ん中低め楽勝のストライクを投げても絶対ボールなんですよ。ボソッと「最初は見えんのや」と岡田さんが言っていたこともある。江夏の低めはぐっと伸びるから、慣れんと低めのボールに見えるんですよ。
そう言えば、この間、NHKに行って3時間、しゃべってきました。江夏と王(
王貞治)さん(元巨人)のライバル関係を掘り下げた番組です。もう何十回も同じテーマで聞かれていますが、同じことしかしゃべっていません。大丈夫なんですかね。