ベンチで戦況を見守る梨田監督
1年前の6月16日、
楽天は敗れたものの、「貯金20」で
ソフトバンクに0.5ゲーム差をつけてパ・リーグ首位を快走していた。そして今年の同じ日、楽天は本拠地・楽天生命パークで
阪神に1対2で敗れて「借金20」。エース・
則本昂大で敗北を喫し、まさに天国から地獄への転落となってしまった。そして試合後、球団は
梨田昌孝監督の辞任を発表した。
「自分の中で借金20というのが一つの区切りだった。6月でマイナス20はひどい数字。監督の責任です」
安部井寛チーム統括本部長によると、同日の試合後に梨田監督から辞任の申し出があったという。球団がこれを受諾し、後任として
平石洋介ヘッドコーチが監督代行を務めることが決まった。
故障明けの
茂木栄五郎の出遅れはあったが、開幕時点で投打ともに主力が欠けているわけではなかった。則本、
岸孝之、
美馬学という投手3本柱がそろい、打線にも
ウィーラー、ペゲーロ、
アマダーという昨季20本塁打トリオがいた。しかし、フタを開けてみればまったくの看板倒れ。好調なのは岸のみという状態では、上位を臨むべくもなかった。
「私の責任」と前指揮官は言うが、本当にそうだろうか。昨オフ、助っ人はほぼ残留で目立った補強は見られず、球団全体に「現有戦力で十分に戦える」という、ある種の油断のようなものが見え隠れしていたようにも思える。
今年1月には
星野仙一副会長が死去し、梨田監督や選手たちの口からは「星野さんのために」という言葉が出ていたが、その思いが空回りしているようにも見える。それでも、まだ折り返し地点にも立っておらず、シーズンは続いていく。打開策を見いだすのはなかなか難しいが、選手たちがファイティングポーズを崩すわけにはいかない。
文=富田 庸 写真=小倉直樹