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背番号物語

【背番号物語】巨人「#2」広岡、松本、元木、小笠原。“ON”の永久欠番に挟まれたいぶし銀の矜持

 

小笠原が唯一のMVP


日本ハムからFA移籍した巨人「2」を背負った小笠原


 二枚舌、二の舞、青二才、二番煎じ、二の足を踏む、二股をかける、二兎を追う者は一兎をも得ず、2位じゃダメなんでしょうか(?)等など、「2」にまつわる言葉には、古くからある慣用句や昨今の名言(珍言?)にもネガティブなものが並ぶ。2位でも立派なのだが、2位に終わる、と表現されることも少なくない。二枚目といえばポジティブな言葉のようだが、いまはイケメンと言わなければ化石でも見るかのような目で見られかねない時代だ。ひと昔前は、テレビの2チャンネルはNHKの総合と教育に挟まれた砂嵐だった。

 どうにも分が悪い印象がある「2」。背番号の世界でも、1ケタの背番号にもかかわらず、「2」には地味なイメージが漂う。特に、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」という“ON”の永久欠番に挟まれてしまっている巨人の「2」は、前と後ろがド派手なだけに、その最たる背番号かもしれない。だが、しかし。背番号の物語は永久欠番になればハッピーエンドというほど単純なものではなく、プロ野球は派手が地味を圧倒するとは限らない。知名度は王や長嶋に届かずとも、いぶし銀の矜持を感じさせる顔ぶれが巨人の「2」には並ぶ。

【巨人】主な背番号2の選手
広岡達朗(1954〜66)
松本匡史(1980〜87)
元木大介(1994〜2005)
小笠原道大(2007〜13)
陽岱鋼(2017〜)

 時代が平成となってからは、移籍してきた名選手の印象も強い巨人の「2」。2017年から背負う陽岱鋼も日本ハムから来た外野手だ。系譜で屈指の破壊力を誇るのは、同じく日本ハムからFAで07年に移籍してきた内野手の小笠原道大だろう。移籍1年目から主軸となり、2チーム、両リーグにまたがるMVPに輝いたフルスイングのスラッガー。系譜で唯一のMVPでもある。11年には通算2000安打にも到達。だが、その後は故障が続いて精彩を欠き、13年オフに中日へ。FAでの移籍ではあったが、終盤が不遇だった選手が散見されるのも、この系譜の特徴だろう。

巨人で背番号「2」を着け続けた広岡


 王や長嶋より早く巨人へ入団して、1年目の1954年に「2」を背負って新人王に輝いたのが広岡達朗で、遊撃守備ではプロ野球の頂点を極めた。しかし、巨人のV9が始まると、川上哲治監督との確執が深刻化。翌66年オフ、引退へと追い込まれた。小笠原も中日で代打として復活したが、広岡も指導者として成功。ヤクルト西武の監督として巨人のリーグ優勝や日本一を阻んでいる。

“青い稲妻”と“クセ者”


背番号「2」で盗塁王に輝いた松本


 80年代に“青い稲妻”の異名を取った韋駄天の松本匡史も87年に106試合の出場もオフに任意引退とされ、同リーグ内の移籍を阻まれる形でユニフォームを脱いだ。それでも、76盗塁を決めた83年まで2年連続で盗塁王に輝くなど、その実績が色あせるものではない。さかのぼれば、プロ野球が始まった36年に「2」を背負った津田四郎も、内野手ながらマスクもかぶってチームを支えた縁の下の力持ちだが、兵役を挟んで41年に復帰してからは出場機会なく1年で引退。後継者の三好主も内野の控えにとどまった。

 戦後の46年から背負った外野手の呉新亨(元敞、萩原寛)は53年までプレーしたが、キャリアハイは背番号が廃止されていた44年で、引退してからはパ・リーグの審判に転じている。その後、広岡の13年間、欠番の2年間を経て新人で内野手の矢部祐一が着けたが1年で「57」に。後継者は内野手で7年目の上田武史。やはり控えがメーンだったが、73年には日本シリーズで本塁打を放ってV9に貢献して意地を見せている。

 上田の引退で79年に着けた内野手で9年目の大北敏博は1年で西武へ。松本を挟んで阪急(現在のオリックス)から移籍してきたベテランの蓑田浩二が継承、やはり89年の日本シリーズで意地を見せたが、翌90年シーズン途中に引退してコーチに。その後は1年で退団した助っ人のブラッドリーを挟んでオリックスから来た熊野輝光が2年だけ着け、21世紀にはロッテから来た小坂誠、中日から来た井端弘和、西武から復帰した脇谷亮太が短期間でリレーしている。

現在、ヘッドコーチの元木は入団4年目から背番号「2」に


 例外が2019年に指導者として復帰を果たした元木大介だ。1年の浪人を経てドラフト1位で入団、4年目の1994年から「2」に。最後は戦力外だったが、長嶋監督をして“クセ者”と言わしめた野球巧者ぶりで巨人ひと筋を貫いている。

文=犬企画マンホール 写真=BBM


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