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BBB(BAY BLUE BLUES) -in progress-

緊迫の開幕3連戦――主将2年目、佐野恵太の思い/BBB(BAY BLUE BLUES) -in progress-

 


 満開の桜。暖かな陽光。浮き立つ心を戒めるかのような、ほのかな冷たさの残る風。
 2年ぶりに、春の景色とともにプロ野球の開幕日がやってきた。

 143試合の長旅の出発点は、東京ドーム。3月26日午後、三塁側のベンチ前に、ベイスターズの選手たちが姿を現し始めた。
 各々の手の甲に、ブルーのインクで横棒が引かれている。

 漢字の「一」だ。今シーズンのチームスローガン、「横浜一心」の「一」。

 試合前の囲み取材で、三浦大輔監督は、それが佐野恵太の発案であることを明かした。

 単なる思いつきではない。ずっと寝かせてきたアイディアだった。
 佐野は言う。

「キャンプ中から考えていたことでした。開幕という大きなタイミングで、キャプテンとして、チームに対して何かアクションを起こしたい。一つになって戦えるようにしたい。そういう思いで行動に移しました」

 キャプテン就任1年目だった昨シーズン、悔いが残った。ペナントレースを戦うなかでの大事なタイミング。チームが苦しい状況に置かれた時期。そこを過ぎ去った直後に「アクションを起こすべきだった」と気づいた。

 機を逸した反省が、2年目のリーダーの背中を押した。これをやったところでどんな意味があるのか。周囲に何と思われるか。そんな心配は、動けなかった後悔に比べれば小さいものだといまは知っている。

「たとえ笑われても、失敗しても、まずは挑戦する。行動に移す。そのほうが大事だと思っています」

 指揮官に許可を求めることもしなかったのは、自らの思いと行動に迷いがなかった証だ。



激戦になった開幕ゲーム。


 17時48分――。
 一連のセレモニーを経て、2021年のプレイボールの声がかかった。

 1回裏、ベイスターズの開幕投手を託された濱口遥大は立ち上がりでつまずく。先頭から2者連続の四球、ヒットにエラー。投手と野手、それぞれに緊張感から来る硬さがあった。後続にも打たれて、3失点を喫した。

 重苦しさを切り裂いたのは、2回表の先頭打者として打席に立った佐野だ。ジャイアンツの先発、菅野智之のストレートをレフト前に弾き返した。

 初回の守り、悪送球で二走の生還を許し、最初の失点を招いていた。「自分のミス。その失点のぶん、次の打席でなんとか取り返そうと思っていた」。

 佐野の一打から打線がつながり、2点を返す。3回、またも佐野がレフト線への二塁打。田中俊太のタイムリーで、同点のホームを踏んだ。

 球界を代表する投手と評される菅野に対し、佐野は好成績を残している。昨シーズンまで14打数6安打で、開幕戦の結果を含めれば通算打率は.471まで上がった。「もちろん、打てるチャンスの少ないピッチャーだと思って打席に立っているけど、すごく苦手だというイメージはない」。開幕戦でのマルチ安打という形で、個人としての佐野は「まずまずのスタートが切れた」と話す。

 同点に追いついたあとも、試合は激しく動いた。
 調子を取り戻したかに見えた濱口が3ランを被弾。それでも7回、満塁のチャンスで田中俊が2点タイムリーを放って1点差に迫る。2点差となって迎えた9回には、2アウト二三塁の場面でまたしても田中俊が打ち、7-7の同点に追いついた。

 田中俊は、これで1試合6打点。セ・リーグの開幕戦としては新記録となる数字だという。だが、1つ年上の新加入選手が見せた活躍に、佐野は驚かない。

「打点を挙げるのはそうそう簡単なことではありませんし、菅野さんからも、中継ぎの投手からも打っていたので、率直にすごいなとは思いました。でも、別にびっくりすることじゃない。ハマスタではロッカーが隣ですけど、(オープン戦などで安打が出なかった時期も)結果どうこうじゃなく練習に取り組む姿を見てきたので」

 みたびリードを奪われながらも追いつき、昨シーズンのリーグ覇者を追い詰めた。しかし9回裏、三嶋一輝が痛恨のホームランを打たれた。一丸となり戦えたという好材料と、試合に敗れたという事実がせめぎ合う開幕戦。佐野は言った。

「誰一人としてあきらめていなかった。あと一歩のところまで追い詰めることはできた。でも、そういう(競った)試合ほど、負けたときの悔しさを強く感じます。ああいう試合を勝ちきることが、優勝するためには必要なんだろうなって。ジャイアンツの選手のプレーを見て、それも同時に思いました」

 あと一歩――その一歩の差で、片方に勝ちがつき、片方に負けがつく。厳然たる現実をあらためて感じさせる一戦だった。




「いろんな声を跳ね返せるように」


 佐野が取材に応じたのは、開幕2戦目を終えた27日の夜だった。

 同日の試合は、10失点で負けた。佐野個人にフォーカスすれば、完璧な当たりで今シーズンのチーム第1号となるソロ本塁打を打った。淡々と言う。

「ホームランというところに『1』がついただけのこと。ぼく自身はホームランバッターではないと思っていますし、明日以降、ホームランをあまり意識しないように打席に立ちたいな、と。ホームランは出ましたけど、チャンスで打てていないので。まだまだ、やるべきこと、チームに貢献できることはあった。今日はそれができてないなっていう思いです」

 開幕2連敗という結果には、こう向き合った。
「悔しいという思いがいちばんです。昨日はサヨナラ負けして、今日はたくさん点数を取られて負けて……。チーム全員も、ファンの方も悔しい思いをしていると思う。いろんな声を跳ね返せるように、というのは選手みんなが思っている」

 三浦監督が、開幕前のインタビューで話していた。
「シーズンに入れば、ずっと一定に行くわけじゃない。緊張感もあるし、負けたら悔しいし、いろんな感情が出てきます。だけど、そこでバラバラにならないように。打てないときは、ピッチャーでカバーしようぜ。ピッチャーの調子が悪いときは、打線で、守備でカバーしようぜ。そこなんです。『なんぼ打っても点を取られるわ』『なんぼ抑えても点が入らないよ』って、そういう感情になると、絶対に優勝はできないですよ。だから、心を一つにする。急に、やろうって言ってもできないから、キャンプのときからずっと準備をしてきたんです」

 佐野も、同じ思いを共有する。
「調子がいいとき、勝っているときは、自然といい雰囲気にもなる。負けているとき、苦しいときこそ、そのチームの本当の姿は出てきたり見えてきたりすると思います。明日、元気な顔で、元気よく、球場に入って。試合に挑みたいなと思っています」



勝てなかった。負けなかった。


 3月28日――。
 今シーズン初勝利を懸けた一戦は、緊張感に満ちた試合になった。

 初回、3番に座るルーキー、牧秀悟のタイムリーで先制。1点のリードをもらった平良拳太郎は、5回までをパーフェクトに抑える好投を見せる。

 しかし、追加点を挙げられないまま迎えた6回、先頭打者に初安打を許したところで、アクシデントによって降板した。急きょマウンドに送り出された砂田毅樹は冷静に後続を断った。7回は山崎康晃が力投し、8回、石田健大も走者を背負いながら2アウト2ストライクまで踏ん張っていた。

 だが、決め球のチェンジアップがわずかに甘くなった。昨シーズンまでチームメイトだった梶谷隆幸のバットに食らいつかれた。同点。延長のない今シーズン、スコアは動くことなくゲームセットを迎えた。

 勝てなかった。負けなかった。またしても、感情は混じり合う。

 次戦は3月30日、スワローズとの3連戦が控える。本拠地、横浜スタジアムでの開幕を見据え、佐野は言った。

「たとえビジターであっても、球場に足を運んでくださるファンの方たち、テレビなどを通して応援してくださっている方たちと、勝利の喜びを分かち合いたいと常に思っています。その思い、負けたくないという思いは、ハマスタでは特に強い。お客さんが入っての本拠地開幕戦を迎えられることはうれしいし、気分的にもすごく盛り上がると思います」


 1分2敗の厳しい滑り出し。さっそく連帯の強さは試されている。
 いまこそ我がホームで、チームとファンが心を一つにするときだ。

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写真=横浜DeNAベイスターズ

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