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シリーズ「沖縄と野球」

来年も9球団が沖縄に集結 名球会入りが近い選手に期待【WEB限定版】沖縄キャンプと名球会/シリーズ「沖縄と野球」

 

4年ぶりの名球会オールスター戦が沖縄で開催される。沖縄本土復帰50周年、那覇市市制100周年の記念でもある名球会ベースボールクラシック2022沖縄開催を機にあらためて沖縄と野球の、歴史や関係について掘り下げる連載コラム。WEB限定版のテーマは「沖縄キャンプと名球会」だ。

江夏豊が日ハムに入団した1981年、球団は本格的に沖縄キャンプを実施。温暖な沖縄での体づくりの甲斐もあってか、19年ぶりの日本一に輝いている


 沖縄が日本に復帰して3年後の75年5月17日と18日、那覇市の奥武山球場で大洋対広島の2連戦が行われた。主砲に山本浩二衣笠祥雄を置く広島と、カミソリシュートが代名詞のエース・平松政次を擁する大洋という、後に名球会入りする3選手が共演の好カードは、復帰後初となるプロ野球公式戦の開催ということも相まって県民注目の的となり、2日間で33000人が球場に集まったと記録されている。

 第1戦は両軍合わせて7本塁打が乱れ飛んだ中、外木場義郎が完投勝利。第2戦は五番打者の山本が第9号本塁打を放って、広島が2連勝を収める結果だった。この年、球団初のリーグ優勝を果たした広島は、いわゆる「赤ヘル旋風」を沖縄の地でも巻き起こしていた。

 そのときの記憶を鮮明に覚えているのが、今年11月に就任したばかりの知念覚第34代那覇市長である。「実際に球場に見に行っていて、(大洋の)シピン相手に外木場投手の投げる球の速さにビックリした。幼心に『これがプロなんだ』とハッキリ認識したし、沖縄の野球少年にとって大きな目標になったことは間違いない」と、知念市長は当時を振り返る。

 しかしこの75年を最後に、奥武山球場が改築されるまでプロ野球の公式戦は35年間実施されることはなかった。さらに約349万人を集めた沖縄国際海洋博覧会が終わったあと、沖縄ブームは沈静化。注目が集まりかけたところ、落ち込みを懸念した沖縄県観光連盟(現在の沖縄観光コンベンションビューロー)はさらなる観光の起爆剤として、戦前から県民スポーツとして確立されていた野球に注目する。

 誘客に向けて奔走した県観光連盟は77年に「沖縄デー」というPRイベントを当時、後楽園球場をフランチャイズしていた日本ハムと企画した縁で沖縄でのキャンプを誘致。当時日本ハムは親会社の創業の地である徳島でキャンプを張っており、焚き火が必要なほどの寒さだったというが、温暖な沖縄でコンディションを調整することにメリットがあると感じていた日本ハム側は79年、ベテラン投手陣だけのミニキャンプを名護で実施。そして2年後の81年には野手も含めて一軍メンバー総出でキャンプを行い、この年広島からトレード入団した、のちの200勝投手・江夏豊をリリーフエースに擁した日本ハムは東映時代の62年以来となるリーグ優勝を果たしている。

 江夏を見たさに長時間自転車をこいで名護まで来た少年も数多く。70歳を過ぎた実父もその大スターを間近に、ミットにボールが収まった瞬間の衝撃音に度肝を抜かれたと、いまだにその当時の興奮はさめやらない。

 リーグ優勝という結果を残した日本ハムを機に、翌年には広島。そして中日、大洋(現DeNA)、オリックス(※15年を最後に完全撤退)、ロッテ、ダイエー(※90年のみ)、ヤクルト阪神楽天巨人と沖縄でキャンプを張るようになった。名実ともメッカとなり、今や夏だけでなく冬場の沖縄における観光振興のひとつとなっている。近年はコロナの影響で各キャンプ地ともファンの賑わいを取り戻すのに苦労しているところだが、落ち着いた頃にはぜひとも島の野球熱を感じてほしい。

 来シーズンに向け、来年2月にはオリックスとソフトバンク西武を除く9球団が沖縄に集結する。名球会入りに近い投手は200勝まであと10勝の田中将大(楽天)。次いで17勝に迫った石川雅規(ヤクルト)。山崎康晃(DeNA)は250セーブ達成まで残り43セーブとしている。一方野手では、中島宏之(巨人)が残り77安打、大島洋平(中日)が115安打、そして巨人移籍の松田宣浩はあと169安打で名球会入りとなる。

 沖縄で体づくりに励み、偉大な功績を残してきた名球会プレーヤーに肩を並べる選手が来シーズン誕生するのか、期待感を抱く。

文=仲本兼進 写真=BBM

「名球会ベースボールクラシック沖縄2022」
日時:2022年12月10日(土)13:00
会場:沖縄セルラースタジアム那覇
中継放送・配信:OTV沖縄テレビ放送、全国インターネット配信(予定)

【入場券発売】
先行発売:10月28日(金)12:00〜
一般発売:11月5日(土)10:00〜
当日券販売:12月10日(土)10:00〜

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