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【侍ジャパン】スマイルスポーツマガジン・インタビュー 栗山英樹監督「日本の野球の魂とともに戦う」

 

いよいよ3月8日から3月21日まで野球世界一決定戦「WORLD BASEBALL CLASSIC(ワールド・ベースボール・クラシック)」が開幕。メジャーリーガー5人を含む30名のメンバーも決まり、2009年大会以来の優勝に日に日に期待も高まるなか、栗山英樹監督を直撃。メンバー選考の背景や選手たちに期待すること、そして大会への意気込みをうかがった。

2021年12月に侍ジャパンの監督に就任した栗山英樹監督。2009年大会以来のWBC優勝に向け大役を任された[写真=スマイルスポーツマガジン]


――WBCに挑む30人のメンバーが発表されました。改めてどんなスタイルの野球を目指すかというところから教えてください。

「今回は日本野球がどういうものなのかをわかってもらうためにも、勝ち切らないといけないと思っています。今は当たり前のように野球をやっていますが、野球がここまでくるには、昔の方々の苦労があり、先輩方がいろいろ培ってきてくれたからこそ、今があります。変な例えかもしれませんが、九九なんかもそうですよね。九九があるからこそ、みんなが簡単に計算をして答えを出せるわけです。それがなかったら“3×4”と言われても、どうやって答えを出せばいいかわかりませんよね。野球もそれと一緒です。先輩方がベースとなる野球をつくってきてくれた、その歴史の上に我々は乗っているわけです。日本野球の積み上げてきたものがすごく重要で、僕は『日本野球の魂』という言葉を使いますけど、WBCはそういう戦いだと思っています。過去の戦いや、過去の野球界の先輩がつくってくれたものを知恵として、しっかり生かして勝ち切りたいです」

――スタイル云々ではなく、勝ち切ることが大事ということですね。

「だから僕の野球というのは全然関係ありません。とにかく選手を信じてやるだけです。勝ち切るのは選手たちなので、その能力を思う存分出るものにしなければいけないなと思います」

――そうした考えがあったうえで、メンバー選考で特に重視したのはどんなところでしょうか?

「日本の野球の魅力は緻密さです。世界一の緻密さということを考えれば、ピッチャーを中心とした、しっかり守り切って我慢して勝ち切るというパターンのイメージが湧きます」

――NPBのチームを率いる以上に個性的な選手の集団になっていくと思います。そのなかで、指揮官として選手をどのようにまとめていこうと考えていますか?

「昔、魔術師・三原脩さんも『虎は虎のまま使え』と書いていますし、武田信玄も『渋柿は渋柿として使え』と言っています。小賢しい知恵は使うなと言われている通りだと思います。北海道日本ハムファイターズの監督時代から、選手を一つにまとめようと思ったことは1回もないです。無理にまとめようとはせず、“ここを目指そう”という同じ方向を向くこと、行き先だけはしっかり示して、行き方は、選手個人に委ねています。ただ、日本野球の魂を示すんだという、そこだけはハッキリさせておきたいと思います」

今年1月6日、共に記者会見に臨んだ栗山監督と大谷翔平選手[写真=ベースボール・マガジン社]


――今回は大谷翔平選手も出場します。投手・大谷の起用法はどのように考えていますか?

「そこは所属球団との話し合いが必要なので、まだ最終的な起用法は決まっていません。翔平に限らず、すべてのピッチャーに関しては同じことが言えます」

――ダルビッシュ有投手も同様ですか。

「もちろん同様ですが、ダルビッシュ投手は調整も含めて、かなりパドレスから任されている感じはします。そこも含めて球団との話し合いですね」

――ダルビッシュ投手は2009年のWBC優勝を経験していますし、最年長でもあります。そんな彼に求める役割や期待はいかがでしょうか?

「全てですよね。ダルには、あなたがやってきたこと、考えていること、経験してきたこと、その全てが日本野球には必要なんですと伝えています。一緒に練習したりとか、考え方を聞いたりとか、実際に試合に臨むには何を準備するのかといった、全てのことが日本野球にすごくプラスになりますと。それは彼もわかってくれたし、こっちも徹底的に“そこはダルしかいないんだ”ということをしっかり伝えました。ダルに限らず、誠也(鈴木誠也)も正尚(吉田正尚)も、メジャーリーガーは、みんなWBC出場というのは難しい決断だったと思いますよ。そうしたなかで、自分のことだけではなくて、将来の日本野球だったり、日本の子供たちだったり、ファンの皆さんのためにという、彼の魂みたいなものが、WBCに参加するという形になったと思っています。これは感謝しかないです。やはりチームにメジャーリーガーがいるのは大きいですよ」

昨年11月の親善試合ではオーストラリア代表に2連勝を飾った[写真=ベースボール・マガジン社]


――対海外チームということでの課題や、必要になってくることはどのあたりでしょうか?

「これは正直に言います。僕は真剣勝負での国際試合の経験がないので、わからないです。ただ、ファイターズ時代にメジャーリーグのチームと試合を経験したなかで、いろいろなことを感じている部分と、取材者としてもずっと国際試合の経緯を見てきたなかで、どのように臨んだらいいのかというところは考えていました。形としては絶対に負けないベースが必要だと思います。負けないという形でどれだけ我慢できるか。そして、どういう展開になっても最後まで絶対に諦めないこと。自分たちが“やられたかもしれない”と思った瞬間に選手たちは固まってしまうので、絶対に最後まで諦めてはいけない。いろいろなところで『国際試合ではこういうことが大事だ』と言われることはあります。そういう声はもちろん頭には入れますが、僕自身、自分の体験から得たものではないので、言われたことで“こうしたほうがいい”と決めつけないようにはしています」

――では最後に改めて大会への意気込みとメッセージをお願いします。

「プレーヤーだけではなく、全てのスタッフと、応援してくださる皆さんと一緒に戦います。これは『日本野球の魂』です。皆さんの思いや声援は我々にも聞こえていますし、応援してくださっている皆さんと一緒に戦っていきますので、これだけの選手たちが出る試合を楽しみながら、ぜひ一緒に戦ってもらいたいです」

こちらに掲載したインタビューのほか、ピッチャー中心の選手選考に関する深い考察や、ヌートバー選手を選出した理由などカラー4ページにわたる栗山英樹監督のロングインタビューは、3月1日に(公財)東京都スポーツ文化事業団が発行した『スマイルスポーツマガジンVol.93』に掲載されています。
 

写真=スマイルスポーツマガジン


くりやま・ひでき●1961年4月26日生まれ、東京都出身。1983年に入団テストを受け、ドラフト外でヤクルトスワローズに入団。84年に1軍デビューを果たし、7年間ヤクルトでプレーしたのち、90年シーズンで引退。91年〜11年まで野球解説者、スポーツキャスターとして活躍。12年に北海道日本ハムファイターズの監督に就任すると、21年まで監督を務め、日本一1回、リーグ優勝2回の成績に加え、大谷翔平の二刀流育成にも貢献した。21年11月より侍ジャパンの監督に就任し、2023ワールド・ベースボール・クラシックに挑む。

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スマイルスポーツ誌のインタビュー特別編! 栗山英樹監督の素顔が分かるQ&Aインタビュー動画と読者の皆様へのメッセージはこちら

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