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栗山英樹監督が考える、人の動かし方「100パーセントの熱さを伝える」

 

WBCで世界一奪還を果たした侍ジャパン・栗山英樹監督。その人材育成の核心を、好評書籍『ここで差がつく! スポーツで結果を出す81の習慣』(ベースボール・マガジン社刊)に収載された、著者・高橋宏文氏(東京学芸大学教授)との対談から抜粋して3回連続でお伝えしよう。2021年9月、日本ハムの監督を10年務めて語った人づくりの考え方とは。今回のテーマは「変化と気づきを与えるためのアプローチ法」。(3回連続の2回目)

俺は絶対にあきらめない、絶対に人は変われるから


WBCで日本代表を世界一に導いた栗山監督[写真=Getty Images]


栗山 人によって「変われる時間が違う」とはいつも思っています。たとえば、少しずつは進んでいるけど、周囲から見たら全然変わってないと思われたり。そもそも、育ってきた環境もみんなそれぞれ違うわけで、人によって成長の時間は絶対違いますから。それでも、いつも選手たちにいいつづけているのは「俺は絶対にあきらめないからね」ということ。「絶対に人は変われるから」といいつづけています。もちろん10年間変わらないこともありましたけど。それでも、そこはあきらめないでやっていこうと。「人は必ず変われる、変われる大きなきっかけを与えられてないだけなんだ」と信じているので。そこだけはこっちが粘り負けしないようにと、いつも強く思っています。

高橋 きっかけづくりってすごく難しいですよね。本当に押したり、引いたりで。大学で教えていても、結局4年間気づかないままで卒業して、ダメだったなと思わせられることも多いです。それでも「この子とはもう卒業したら一生会わないんじゃないかな…」と思っていた子が突然訪ねてきて「あのときは気づきませんでしたけど、ありがとうございました」といわれたこともあって。本当にいつどう伝わるのか、どうやって伝えるのか。僕自身もまだまだ模索しながら、勉強していかないといけない点だと思っています。

栗山 本当にずっと勉強していかなくちゃいけない部分ですね。僕なんかは「別に今は気づかなくてもいいや」と思うこともある。でも、もしかしたら野球では結果が出ないかもしれないけど、彼の人生にとって何か一つでもプラスになってほしいという部分も考えて声は掛けているというか……。それに全部が全部を変えられるほど僕はたいした人間じゃないし、そんな力もない。ただ、なんとかこの選手を変えてやりたいという熱さだけは忘れてないですし、人間って熱さでしか動かないなというのは、なんとなくこの10年でわかってきて。たとえそのときは伝わらなくても、こっちが100%の熱さを選手に伝えられたかということのほうが僕にとっては大事なことなんですよね。

高橋 その「熱さ」というのを、今の若者はときとしてネガティブにとらえることもあるじゃないですか。プロ野球選手たちは、そんなことはないですか?

栗山 やっぱりちょっと斜に構えますね。とくに若い子は。ただ、そのときはさほど反応がなくても、必ずどこかでは伝わっている。これは監督を長くやらしてもらっているからこそわかることで。「あのときは、なんかムチャクチャだったかもしれないけど、熱くぶつかったことに関しては決して悪いことではなかった」と思うこともありました。ときには考えすぎて、距離を取ってしまったこともあったんですけど、今は決してそういうことがないようにとは思っています。その熱さだけはバカにされても、何をいっちゃってるのといくら思われてもいいので。大事なのは、その熱さというものに、若い子の意識が少し向くだけでもいいのかなと。

(対談は2021年9月収録)


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