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『逃げてもええねん――弱くて強い男の哲学』より

坂口智隆が大事にする尊敬の気持ち――つば九郎、つばみちゃんへの思い【最終回】

 

近鉄、オリックスヤクルトでプレーして、現在は野球評論家として活躍する坂口智隆さん。現役時代には「ケガに強い」「弱音を吐かない」武骨でストイックなイメージがありましたが、「本質は違います」とご本人。「こんな地味なプレーヤーの自分でも、20年プロ野球の世界で生きていけた」理由、考え方とは。6月に刊行された初の自著『逃げてもええねん――弱くて強い男の哲学』(ベースボール・マガジン社刊)より抜粋しご紹介します。今回は、坂口さんと仲よしの二人(二羽)への思いも。

働くすべての人たちを尊敬する


リスペクトと感謝の気持ちを抱き、それを伝えることの大切さを坂口さんは教えてくれる


 僕はプロ野球選手という仕事柄、注目される機会が多かったですが、特別な仕事をしているという感覚はありません。どの職業でも真剣に仕事に打ち込んでいる方はプロフェッショナルだと思いますし、尊敬します。
 
 いろいろな分野で、職人の仕事ぶりを伝えるドキュメンタリー番組が放送されていると見入ってしまいます。

 このような考えに至ったのは、環境の影響が大きいと思います。「神戸ドラゴンズ」、神戸国際大付属高で指導者の方々に、「野球ができるのは親のおかげ」、「グラウンド整備してくれる人たちに感謝しなさい」と毎日のように言われてきました。

 神戸国際大付属高の監督・青木尚龍先生にも「おまえ一人で野球やってるんじゃねぇ」と何度も怒られました。試合に出られない部員たちが、僕たちのサポートに回って練習を手伝ってくれたり、会場設営のスタッフの方は、試合を開催するために準備をしてくれたりする。もちろん、親のサポートがなければ高校に進学もできません。

一人では何もできない


 高校時代に天狗だった自分ですが「人間は一人では何もできない」ことに気づくのは早かったと思います。プロに入っても、打撃投手やブルペン捕手、スコアラー、スカウトやチームスタッフ、球団職員の方々など、チームはたくさんの人によって支えられています。トレーナーもそうです。ケガだらけの僕はトレーナーの方々の存在がなければ、短命の野球人生に終わっていました。

 さまざまな仕事に興味を抱くと、すごいなと感じる部分を見つけようと思わなくても、自然に見つけられます。不動産業に従事している友だちがいるのですが、話を聞くたびに「自分では無理やな」と仕事内容の難しさ、大変さを実感させられる。むしろ、「野球選手でよかった」と思いたいから、ほかの仕事に興味津々なのかもしれません。

つば九郎、つばみちゃんに助けてもらった


 僕は球場を盛り上げるマスコットとも仲よしでした。

 つばみちゃんとの恋物語は、みなさんの間でも話題になりましたね。気づいたらそばにいてくれました。僕も人柄、いや鳥柄に惹かれました(笑)。つば九郎もそうですが、オリックスから来た僕を快く受け入れてくれて、ずっと絡んでくれたのがありがたかった。二人、いや二羽のおかげで、有名にしてもらった部分もありますし、いろいろ助けてもらいました。

 YouTube動画でも配信されましたが、現役引退を発表後に、つばみちゃんから手紙をもらったときは感動しました。マスコットにあそこまで愛してもらうことは、なかなかないですから。引退して会う機会が少なくなってしまったのは寂しいけれど、ヤクルトファンと一緒にスタンドから見守っています(笑)。

 なぜかわかりませんが、マスコットに愛されました。オリックスのときはリプシー、バファローベルと仲よしで、ファン感謝デーでもたくさん絡ませていただきました。マスコットも球場を盛り上げる意味で不可欠な存在です。選手とともに戦い、後押ししてくれる。つば九郎は2022年8月5日に主催2000試合出場を達成しました。リスペクトの一言ですね。

写真=BBM

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