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カルチョの国から

不思議に思った…なぜ、NPB数球団は親会社名が前面に出ているのか?/元オリックス・マエストリ「カルチョの国から」07

 

2012年から2015年までオリックスでプレーしたアレッサンドロ・マエストリ氏。4年間で96試合に登板して14勝を挙げた右腕は、NPB史上初のイタリア人選手としても知られる。同氏は現在、イタリアで野球用品販売店を経営しながら、3月6、7日に京セラドームで侍ジャパンと対戦する欧州選抜の投手コーチに就任した。カルチョの国で生まれた野球を愛する男が特別連載コラムをお届けする。
インタビュー・訳=浦口雅広

国内マーケット中心の球団経営


オリックス時代のマエストリ氏[写真=BBM]


 前回、日本の野球、特にNPBというのは外への情報発信が少ない分、閉鎖的でミステリアスな世界に感じていたことを話しましたが、中に入ってみると、良し悪しではなく、私にとってとても不思議な世界の発見になりました! オリックス・バファローズとの契約時、NPBの数チームはチーム名にもなっている特定の親会社が主体となって運営されていることに気付き、私にとってはこれが結構不思議に思えたのです。

 イタリアからアメリカ、オーストラリア、四国アイランドリーグと渡り歩いてきた身として、野球が地域スポーツか世界市場のビジネスかの違いはあれど、ベースとしては「その町の野球チームをその町の複数企業が支え、地元のファンが応援する」スタイルが普通と考えていたのですが、オリックスやソフトバンク楽天など、日本国内だけでなく、今や海外にまで事業をグローバルに展開している特定の企業が、日本国内のある地域に本拠地を構えた『企業チーム』を、その地域の地元ファン中心に「我々のチーム」として熱狂的に応援するスタイル……。

 後から知ったのですが、台湾リーグや韓国リーグも同様なんですかね。FCバルセロナがFC楽天になると、バルセロナ市民の応援は半減すると思いますし、ニューヨーク・ヤンキースがスタインブレナー・ヤンキースやビズリーチ・ヤンキースになれば、ニューヨーク市民は今ほど応援しないでしょう。

 欧州サッカーやMLBでは「世界最高峰の場」でいかにクラブの市場価値を高めるか? のビジネスをしています。世界中の個人や企業がチームや選手の価値に期待し、投資するのです。チーム名が企業かローカル(地元)かは、歴史もあるかもしれませんが、市場価値に影響するため、皆敏感に反応を示すと思います。

 一方でNPBでは特定の企業名をチームの冠に掲げ、国内マーケット中心に球団経営を実施し、ファンも熱狂的に応援し、それで十分な盛り上がりを実現しています。そういう意味では特段、外への発信やマーケットの拡大をする必要がないのだと思いました。実際に私も大阪・神戸を中心に、関西のファンの皆さんから驚くほど温かい声援をいただけました!

 親会社が球団の前面に立とうが、それは日本人にとってはただのインターフェイスであり、レベルの高い野球を目の肥えたファンがしっかり観ていて、球団経営も透明性があって健全であり、そして愛されている。そう強く感じました。本当にNPBでの4年間の経験は興味深いものでした!

 先日、ソフトバンク・ホークスがアフリカの選手にトライアウトを実施したニュースを紹介してもらいました! これは素晴らしく画期的です。ぜひ欧州の若手選手にも可能性を見いだしてほしいと思います。

いよいよ欧州選抜が来日


 さて間もなく我々欧州選抜も新たに編成されるわけですが、基本的には東京ドームで対戦した2015年以来の再戦である位置付けと考えています。チームは、イタリア、オランダ、スペイン、チェコ、ドイツなど、さまざまな国の選手で構成されています。チームの何人かはカリブでのウィンターリーグ(ベネズエラ、ニカラグア、ドミニカ共和国)を終えたばかりですし、イタリア、チェコの選手などは、皆さんと同じように来日する直前までいつもどおり仕事をしているのです!

 それぞれ環境の違う中、何年も野球を続け、そして経験と努力を積み重ね、こうやって野球世界最高の国と、最高のフィールドで対戦できる機会を得ました! 選手たちは皆、満員のファンで埋め尽くされる京セラドームでプレーできるのを待ち望んでいます! 誰もが3万5000人の前でプレーすることにきっと緊張すると思いますが、同時に初登板の私のように、全力を尽くす準備ができているはずです。

 チームは3月2日に大阪に到着する予定です。3月3日初練習。3月4日エキシビションゲーム vs くふうハヤテ。3月5日京セラドーム練習。そしていよいよ3月6日、7日 vs侍ジャパン。日本のファンの皆さんの前で再びユニフォームを着られる日が来ました! それでは京セラドームでお会いしましょう!!

マエストリ氏の著書


 自身を「旅人」と表現するマエストリ氏が、これまでの野球人生の「旅」を一冊にまとめました。日本での話が中心ですが、現在はイタリア語版のみで、今後は日本語版の出版を検討中です。

■マエストリ氏のインスタグラムはコチラから!

PROFILE
アレッサンドロ・マエストリ●1985年6月1日生まれ。イタリア出身。2005年に開催されたMLBヨーロッパアカデミーの1期生。06年の第1回WBCのイタリア代表に選出され、その後カブスと契約。4年間のマイナー生活を送るも2Aで終わる。アメリカ独立リーグ、オーストラリア、四国ILの香川を経て2012年途中にオリックス入団。NPB史上初のイタリア生まれ、イタリア育ちの選手の誕生となった。オリックスには15年まで在籍。NPB通算96試合登板、14勝11敗1セーブ2ホールド、防御率3.44。16年以降は韓国、BCリーグの群馬などでプレー。2020年に現役引退。3月に「カーネクスト侍ジャパンシリーズ2024」で侍ジャパンと対戦する欧州選抜の投手コーチを務める。

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