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悲劇の10.19とは

【悲劇の10.19とは10】「加藤哲と木下はよく抑えてくれた」引き分けだったからファンの心に残った近鉄の「悲劇」

 

 週刊ベースボール4000号記念トークイベント第3弾として行わるのが、「梨田昌孝×西村徳文」の組み合わせだ。トークテーマは「10.19の真実」。盛り上がることは必至だが、トークショー開催に先駆けて、1988年に近鉄が見せたドラマチックな「10.19物語」をお届けする。

「むなしい守りでした」



 1988年10月19日、川崎球場でのロッテ対近鉄のダブルヘッダー第2戦は9回裏のけん制アウトを巡り、ロッテ・有藤監督が9分間の抗議。同点のまま延長戦に突入も、近鉄は10回表に勝ち越し点を入れることができなかった。その時点で試合時間は3時間57分。当時のルールでは4時間を超えると、新しいイニングに入ることできない。10回表が終わったとき、近鉄の優勝への夢は事実上、断たれた。

 それでも試合は終わっていない。絶対に勝つことのない試合を守るために、近鉄ナインはグラウンドに立っていた。左翼を守っていた淡口憲治は言う。

「むなしかった。むなしい守りでした。あれだけ必死に目指していた優勝が、ある瞬間から消えてしまった。西武が胴上げしているぞと、ラジオを聞いている川崎球場のお客さんがスタンドから教えてくれました」

 勝ちが消えても近鉄の加藤哲郎、ルーキーの木下文信は必死に投げた。木下は代打・斉藤巧古川慎一と2者連続空振り三振に抑え、ゲームセット。4対4の引き分けに終わり、仰木監督以下、近鉄ナインはグラウンドに並び、川崎球場を埋め尽くしたファンに深々と頭を下げた。

 8回、9回と投げた阿波野は「9回が終わった時点で交代と決まっていませんでしたが、10回表が無得点で終わり、優勝がなくなった時点で初めて『もういいよ』と言われ、アイシングなどの手入れでベンチ裏に行きました。だから試合終了の様子などはあとから映像で知りました。今は、シーズン最終戦が終わったら選手たちがグラウンドに並んでファンにあいさつをするのは珍しくないですけど、当時はあまりなかったんじゃないですか。僕自身は気力がなかったので参加しませんでした」と言う。

 ベンチでこっそり観戦していた金村義明は「地味な吹石(吹石徳一)さんがホームランを打ったりして、第2試合もずっと泣いていましたね。その印象しかないです。後にも先にも、野球であんなに泣いた経験はないです。優勝できなかった悔しさも、こういう感動的な試合に自分が出られなかった悔しさも……。それが僕にとっての『10.19』の記憶です」。

 巨人時代に多くの優勝を経験したベテラン・淡口は「若い選手には、この経験が必ず来年生きてくるからと言いました」。その言葉のとおり、翌89年の近鉄はシーズン最終盤の西武とのダブルヘッダーで連勝するなど、2年越しの悲願のペナントを手にすることになる。

西武ナインは異例のコメント


 川崎球場の平日ナイターが全国に生中継され、日本中の野球ファンが固唾をのんで見守った「10.19」の2試合は、このように「時間制限」という理不尽なルールによって、理不尽な終わり方となった。引き分けという決着だったからこそ、近鉄の「悲劇」は人々の心にいつまでも残っているのかもしれない。10月16日に全日程が終了しながら、「10.19」当日は川崎球場の試合展開を注視しながら西武球場で待機し、胴上げした西武の石毛宏典清原和博と言った主力選手は、中日との日本シリーズを前に「負けたら、近鉄に申し訳が立たない」と異例のコメントを出した。最後にもう一度、阿波野の言葉を引用する。

「あの試合、今思うと、10回裏を0点に抑えたことが大きかったんですよ。負けていても優勝できないのは同じでしたが、引き分けだったから『惜しかった』と野球ファンに今でも語り継がれているのだと思います。加藤哲と木下は、よく抑えてくれました」(阿波野)

=終わり=

参考資料:
ベースボールマガジン2020年10月号、同2022年11月号、週刊ベースボール2023年12月11日号、同12月25日号、2024年11月4日号


梨田昌孝×西村徳文が語る「10.19の真実」
【日時】2025年10月9日(木) 17時開場 18時開演(19時半・終演予定)
【会場】ニッショーホール[東京都港区虎ノ門2丁目9-16]
【ゲスト】梨田昌孝 西村徳文
【MC】上重聡
◆会場チケット 料金:6,000円(別途手数料がかかります)
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◆配信チケット 料金:1,500円(別途手数料がかかります)
【視聴期日】当日〜2025年10月16日(木)23:59まで
【購入期日】2025年10月16日(木)21:00まで
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写真=BBM

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