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2021ドラフト先取り情報

「8.24」を見据える相性抜群バッテリー 小園健太・松川虎生(市和歌山高)【2021年高校生ドラフト候補】

 

高校生は伸び盛りである。秋の公式戦を終え、一冬を越えれば、さらなる進化が期待できる。とはいえ、この秋の段階で評価を得ている球児が多い。まずは、和歌山県の公立高校において、息の合ったコンビを掲載する。
取材・文=小中翔太

全国優勝を遂げた貝塚ヤング時代からコンビを組む2人。最速152キロ右腕・小園(左)と強打の捕手・松川(右)は、本気で「日本一」を狙っている[写真=太田裕史]


 貝塚ヤングに所属していた中学3年夏に全国優勝。本格派右腕・小園健太、強打の捕手・松川虎生のコンビは日本一を経験している。高校進路に関しては当然、複数の有力校から声がかかっていたが、そろって市立和歌山高への進学を決めた。

 先に決断したのは、今秋の新チームから主将の松川だった。高校でも再び全国の頂点を目指すため、悩んでいた小園の背中を押したという。

「貝塚ヤングの監督が川端選手のお父さんという縁もあり(貝塚ヤングの川端末吉監督は、同校OBでヤクルト川端慎吾の父)、身近なところで甲子園行きたいなと思って決めました。中学校でバッテリー組ませてもらって、高校でも甲子園で優勝したいので、小園を誘いました」

 小園は1年時から140キロ超のストレートを投げ込み、評判に違わぬ実力を発揮。下半身のウエート・トレーニングに力を入れた一冬を越えると、147キロと大台に迫る。そして、今夏の和歌山県高野連主催の独自大会前、7月に行われた大阪桐蔭高との練習試合で152キロを計測した。松川が受けていて、最も良いと感じる球は「気迫が入っている真っすぐ。2ストライクから決めにきたときのストレートはしびれます」と苦笑い。ただ、もともとはスライダーを軸とした配球だった。小園自身、スピードには、さほどこだわってはいない。

「球速は試合ではまったく意識してないです。意識するのは練習です。1人で投げていかないといけない試合が多くなってくると思うので、常時145キロを超える球を投げる練習をしています」

 昨秋にカットボールを覚えたことで、よりストレートが生きるようになり投球の幅が広がった。半田真一監督も小園の長所について言う。

「器用なところですかね。すべての球種でカウントを取れますし、もちろんストレートのスピードは魅力なんですけど、それよりも、器用さとマウンドさばきとか。どんな相手でも物怖じせずに、相手打者へ向かっていくピッチングが魅力です」

 豪腕ぶりよりも、ピッチング全体の総合力を評価している。この冬でもうワンランクアップを目指す。

「来年の夏は、出てきただけで周りを圧倒する、存在感のある投手になって、日本中の高校生の中で最後まで勝ち上がり、マウンドに立っていたい」。つまり、夏の甲子園での全国制覇を虎視眈々と狙っている。

最速152キロ。恵まれた体格からキレのあるボールを投げ込む[写真=早浪章弘]


巧みな一面もある超攻撃型司令塔


 高い目標を掲げる小園が、初めて松川を見たのは中学1年の4月。貝塚ヤングの練習体験に来た巨体の持ち主はレフトまで87メートルあるグラウンドの広さをものともせず、難なく放り込んだ。松川は小学校時代から飛ばし屋で、フリー打撃では「練習でしっかり飛ばしておかないと試合では飛ばせないので、一球一球、飛ばすことを意識してやっています」。

 滞空時間の長いアーチを連発する。半田監督は「卓越したバッティング能力は光るものがありました。1年と言ってもチームの中でそれなりのものがあるかな、と。将来のこともありますし、チームの四番を任せようと思いました」と入学してすぐ主軸に据えた。今年は新型コロナウイルスの影響で春先の約3カ月間、練習試合ができなかったにもかかわらず、すでに高校通算30本塁打(今秋の県大会終了時点)。新チームになってからの練習試合では1試合で場外弾2発など格の違いを見せている。

 抜群の長打力もさることながら、捕手としての適性も高い。野球を始めたころにも捕手をしていたことはあったが、小学校時代は内野を守ることが多く、本格的にマスクをかぶるようになったのは貝塚ヤングに入ってから。川端監督の「打てるキャッチャーになれ!」という一声で捕手に転向。ミットの扱いは実に柔らかく、キャッチング技術に長けている。具体的には審判目線の死角からミットが出てくるスピードが速く、低めのボールを低く見せない。これは練習しても簡単に身につけることはできない。捕球から送球に至るまでの動きしかり、豪快さだけでなく、巧みな一面も持ち合わせる司令塔だ。

智弁和歌山高との今秋の県大会準決勝では2点を追う8回に、満塁から逆転適時二塁打を放った[写真=早浪章弘]


指揮官が思い描く公立高校の夢


 小園は松川に、松川は小園に刺激を受けているのはもちろんのこと、2人の存在はチーム全体にも好影響を及ぼしている。半田監督によると「チーム自体が、彼ら2人にかなり引き上げられているな、とは感じます。公立高校で『日本一』を言うのはおこがましいかもしれないですけど、これだけの技量と経験を持ったバッテリーはないと思います。好投手、好捕手はいますけどお互い理解し合いながらともに成長しているので、日本を代表するようなバッテリーになってもらいたい期待はあります」

 今夏の和歌山独自大会で智弁和歌山高に敗れた後、学校に戻ってから松川の帽子に小園が、小園の帽子に松川が「最高のバッテリー 勝利」と互いに書き合った。秋の県大会準決勝では智弁和歌山高に逆転勝利。2点を追う8回に四番・松川が一死満塁から走者一掃の二塁打を放てば、小園は3失点で完投(5対3)した。

 込められた願いはただ一つである。2021年8月24日。甲子園決勝の舞台に立ち、そして、高校最後の試合を白星で締めくくること。卒業後の進路については2人とも「高卒でプロに行きたいです」と力強く語る。中学時代に続いて、息の合った名コンビは、高校でも日本一を目指す。

PROFILE
こぞの・けんた●2003年4月9日生まれ。大阪府出身。185cm85kg。右投右打。中央小1年時にR.I.C.Aで野球を始め、貝塚市立第一中では貝塚ヤングに所属し、3年夏に全国優勝。市和歌山高では1年春からベンチ入りし、2年夏の独自大会は智弁和歌山高との3回戦敗退。同秋は準決勝では同校に雪辱し、県大会を制して県1位で近畿大会出場。最速152キロ。球種はカーブ、スライダー、ツーシーム、カットボール、チェンジアップ。50メートル走6秒7。遠投120メートル

まつかわ・こう●2003年10月20日生まれ。大阪府出身。178cm98kg。右投右打。兄の影響でワンワン認定こども園のワンワンスポーツクラブで野球を始め、東鳥取小学4年まで在籍した。5年から泉佐野リトルに入団し、鳥取東中では貝塚ヤングでプレーし、小園とバッテリーを組んで3年夏に全国優勝。市和歌山高では1年春からベンチ入りし、2年秋の新チームから主将に就任。遠投100メートル。二塁送球1秒8台。高校通算30本塁打

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