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12球団スローガン物語2021 いざ2021年シーズンへ――熱き思いが言葉になった!【パ・リーグ】

 

「欲しがりません勝つまでは」「国民所得倍増計画」「アベノミクス」「ステイホーム」、あるいは「赤信号みんなで渡れば怖くない」「カラスなぜ鳴くの、カラスの勝手でしょ」……。政治、交通標語からギャグまで、昔から日本人はスローガン、標語好きだ。球界も例外ではなく、今や各球団のスローガン発表はキャンプ前の風物詩でもある。さて、今年はどんな変わった……いや、熱い言葉が登場するのか
(情報は1月24日現在)

(c)SoftBank HAWKS


倍返しの元祖はソフトバンク?


 スローガンが各球団で定番化したのは1990年代以降だが、それ以前にもなかったわけではない。広島の「闘志なき者は去れ」は有名だが、昔はキャンプ地の宿舎に監督直筆の“勝利の何カ条”的なものが張られていることもよくあった。

 1970年、南海(現ソフトバンク)兼任監督となった野村克也監督の「シンキングベースボール」、75年、監督に就任した巨人長嶋茂雄監督の「クリーンベースボール」は有名だが、いずれも変革に燃える青年監督の所信表明だった。野村監督は、このように言葉にするのが好きな人で、ヤクルト監督時代は「ID野球(Important data)」、阪神監督時代は「TOP野球(Total・Objectlesson・Process)」をスローガンとした。

 なぜか横文字が多かったのも2000年代までの特徴で、広島が83年に「START FROM ZERO」を掲げて長嶋清幸が日本球界初の背番号0を着け、阪神・星野仙一監督(02〜03年) は「NEVER NEVER NEVER SURRENDER」、中日落合博満監督(06〜11年)は「ROADTO VICTORY」を使っていた。

 失礼ながら、話題は最初だけで、すぐ忘れ去られてしまうのもスローガンの大きな特徴だが、スローガンがチームの真の力となった数少ない(?)例の1つが1995年「がんばろうKOBE」だ。阪神・淡路大震災で大きな被害を受けた神戸を本拠地とするオリックスの優勝は、日本中に大きな感動を生んだ。

 もっと注目されていいのは、06年、ソフトバンクが前年のプレーオフで敗れたロッテ戦限定で掲げた「倍返し!」ではないか。のちドラマ「半沢直樹」で流行語にもなった言葉の元祖でもある(さらに元祖は、ゲーム「餓狼伝説3」の技とも言われるが……

福岡ソフトバンクホークス


鷹(たか)く!


現状維持は停滞、停滞は後退

 昨年、悲願のV奪回&4年連続の日本一を果たした。しかし、チームが見据えるのは、前人未到のV10だ。リーグ優勝も、日本一も、もはやすべて過去のこと。どんなに「強い」と言われようが、甘んじることはない。『現状維持を⽬指すことは、停滞の始まりに過ぎない。停滞の始まりは、後退の始まりかもしれない』。だからこそ、一人ひとりが自覚を持ち、勝つためには何が必要かを考え、さらに高いレベルを目指して⼼⾝ともに鍛え上げていく。チームとファンが⼀つになって、もっと、もっと「鷹く!」。まずは2021年、リーグ連覇と5年連続の日本一。そして、史上最強の“無敵の若鷹軍団”を築き上げていく。

担当記者がチョイス!歴代最高のスローガンはこれだ!!


熱男(2015)

 今では誰かさんの“私物”となっているが、もともとはチームスローガン。「どんなときも、決してあきらめず、前向きに、情熱的に突き進む」のが『熱男』とのことで、まさに松田宣浩選手! これだけ有名になったら、考えた人もうれしいのでは!? (R)

千葉ロッテマリーンズ



唯一の未発表だが期待値高し

 1月24日現在で12球団唯一の発表なし。謎の魚などオンリーワンの奇抜な広報戦略が売りだけに、間違いなく攻めてくるはずだ。井口資仁監督就任以降の傾向は『マクレ』『マウエ』『突ッパ』とインパクト重視の3文字だが、前年2位で優勝を現実にとらえた今季、果たして何が出てくるか!

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和(2010)

 シンプルな中にも力強さもあり”チームスポーツ”では不可欠な要素だ。ファンに背番号26を与えるなど、一丸となって戦う球団ならではの1語を、2010年に選手が体現。リーグ戦3位からの下克上日本一を遂げた。負ければ4位のシーズン最終戦に勝利し、CSも9回に逆転しての勝利を重ねるなど「個に勝る和」を証明した。(TA)

埼玉西武ライオンズ


BREAK IT


数々の壁をチーム一丸で打ち破り、日本一へ

 3連覇を逃し、辻発彦監督は「まだまだ選手が一人前ではない」と感じたという。本当に強いチームになるために必要なことは何か――。導き出された答えは今季のチームスローガンとなった「BREAK IT」だった。辻監督が選手に望むのは自分の殻を打ち破ること。選手個々が進化を果たせば自ずと頂点は見えてくるのだ。英字体の中に隠し文字としてカタカナを配置し、英語と日本語、両方の意味を混在させたダブルミーニングデザイン。チーム一丸となって王座奪還を目指し、立ちはだかるすべての壁を打ち破る力強さと勢いがグラフィティフォントで表現されている。躍進を予感させるスローガンだ。

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Hit! Foot Get!(1997)

 東尾修監督3年目のスローガン。松井稼頭央らスピード感あふれる選手が台頭し、チームのイメージにもフィットした。同年パ1位の200盗塁で3年ぶりの優勝。東尾監督が退任する01年までこのチームスローガンは継続された。 (MK)

東北楽天ゴールデンイーグルス


一魂(いっこん)日本一の東北へ


心を一つに再び歓喜の瞬間へ

 2021年は東日本大震災から10年という節目の年となる。新型コロナウイルスという新たな強敵にも立ち向かわなければいけない。昨年の無観客試合や動員制限の試合で、選手たちは「ファンの声援のチカラ」をあらためて実感した。活気あふれるスタジアム、ファンの声援を取り戻すため、13年の「あの歓喜の瞬間」をもう2度、3度とファンと分かち合うため、今年は勝負の年となりそうだ。チーム、選手、ファンが一丸となり、1試合、1プレー、1球に魂を込めて戦い、「日本一の東北へ」、全員で一心不乱に挑む。デザインでは、力強い「一」と「魂」の言葉を重ねることにより、「心一つに」という意志を強調している

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Smart&Spirit 2008 考えて野球せぃ!(2008)

 指揮官の口調が自然と脳内再生される。野村克也監督3年目のスローガンだ。2年連続最下位から前年に4位浮上。「考える野球」でさらに上を目指したこのシーズンは5位に終わったが、翌年に2位と大躍進! (YO)

北海道日本ハムファイターズ


01karat〜イチカラ〜


強く光り輝くチームに

 2004年に北海道移転後、初の2年連続Bクラスに沈んだ昨季の悔しさを晴らすべく、就任10年目の栗山監督が目指すのは原点回帰だ。「01k a r at〜イチカラ〜」には、「1プレーに全身全霊をかけて挑む真のファイターズを再び“一から”作り上げる」思いが込められている。4年間遠ざかっている優勝へ近づくには、若手の台頭が必要不可欠。1カラットの“イチカラ”は、磨けばまだまだ光る原石が多数いることも示す。きらめきを放つ一つひとつの宝石がリングを形成しどこよりも強く光り輝くチームヘ。「全員がまぶしいくらい輝いて初めて本当の勝負を挑める」と語る栗山監督の決意が表れたスローガンだ。

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爆ぜる(はぜる)(2016)

 栗山監督5年目のスローガンで、シンプルさがインパクト大。「栗の実がイガを破って弾け出るように草木の実などが熟しきって裂ける」という意味も斬新。殻を破って見事、10年ぶり3度目の日本一に輝いた。 (N)

オリックス・バファローズ


ガッチリMAX!


つかんで離さない!

“ガッチリ”に込められる思いは複数。チャンスではガッチリ猛攻、ピンチではガッチリ堅守、そして投打のバランスがガッチリかみ合い、奪ったリードはガッチリ守る。そうして、勝機はガッチリ逃さず、ファンのハートをガッチリつかんでいく。さらに、新型コロナの感染予防の面でも、対策を施しガッチリとガード──。チームとファンの思いを、ガッチリひとつにするキャッチフレーズに、中嶋聡監督も「ラグビーで言えば、ガッチリスクラムというか、1つになるという言葉からしたら、いい言葉だと思います。全開で行くしかない。最後までMAXで」とコメントし、25年ぶりの優勝へ向けてひた走る。

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がんばろうKOBE(1995)

 阪神・淡路大震災が発生し、復興を目指す神戸の街とともに闘うべく掲げ、ワッペンとしてユニフォームの右袖に着けられた。そして見事にリーグ優勝。復興のシンボルとなったフレーズは、時代を超え、今なお口にされる“合言葉”になっている。 (AT)

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