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2021春季キャンプ

いざ、2021年の主役へ キャンプ注目の“挑む”男たち

 

競争を勝ち抜き、出場機会を得るため、来るべく新シーズンへ向けて牙を研ぐ。それぞれ目指すものは違えども、共通しているのは、今春キャンプでのアピールは不可欠ということだ。この春、明確に“挑むもの“がある編集部注目の8選手を掲載しよう。

ソフトバンク・栗原陵矢 “フル”への強いこだわり


レギュラー定着に挑む

栗原陵矢捕手/7年目


 昨春キャンプは「シーズン100試合出場」を目標に、開幕一軍をつかむべく懸命に汗を流していた。持ち前の力強い打撃に、捕手登録ながら一塁、外野もこなす器用さでアピールに成功すると、開幕戦でサヨナラ打を放つなど序盤からチームの力に。リーグ5位の得点圏打率.333をマークする勝負強さも光り、3年ぶりのリーグ優勝、4年連続の日本一を成し遂げた打線の中軸を担った。

 日本シリーズではMVPに輝くなど目標を超える活躍を見せるものの、満足はしていない。「まだまだ通用しない部分が多い」と振り返った打撃は、シーズンを通じてコンスタントに打ち続けられるよう、自身の引き出しを増やしながら振り込んでいく。守備ではアマチュア時代にも経験のない三塁に挑戦中。本人も「ビックリ」の新プランだが、前向きにとらえ、自主トレから奮闘している。

 レベルアップを図るのは、昨季の悔しさがあるからだ。「2021年はずっと試合に出たい」。打撃の確実性を高め、起用の幅を増やすことで、これまで以上にチームに欠かせない存在へ。主力の仲間入りを果たせば、新たに掲げる『フルイニング出場』という目標がまた一歩、現実味を帯びてくる。

 プロ7年目とは言え、まだ今年で25歳。伸び盛りの若鷹は、今年も“チャレンジャー”としてキャンプでも初日からガムシャラに向かっていく。

PROFILE
くりはら・りょうや●1996年7月4日生まれ=25歳。179cm75kg。右投左打。福井県出身。[甲]春江工高-ソフトバンク15(2)
【2020年成績】118試合107安打17本塁打73打点5盗塁、打率.243

広島・森下暢仁 1つでも超えていく


「2年目のジンクス」に挑む

森下暢仁投手/2年目


 誰が言ったか「2年目のジンクス」。過去、ルーキーで旋風を起こした選手の多くが呪縛にからめとられてきた。昨季、チーム最多の10勝、リーグ2位の防御率1.91の成績で新人王を獲得した男にとっても、気持ちのいいフレーズではないだろう。

 それでも“見えない敵”にいたずらに心を惑わせ、ペースを崩す必要がないことを知っているようだ。「皆さんが“ジンクス”と言うと、実際に起きる可能性が高くなる。“今年もしっかり結果を残す”と思ってくだされば、そうなると思います。プラス思考で行きます」と、今季を見据えている。

 オフも「自然にトレーニングをこなしていけたら」とペースを崩さず、すぐに新しい球種に挑むなどの変化も求めずに、地に足をつけて進めてきた。目標も「1年目より、1勝でも多くできればいいと思います。11勝できれば、昨年を上回ることにはなる」と、足元を見つめているが、“春の目標”はある。「開幕投手争いができるようにしたい」

 自らの調整具合のほか、周囲の状況も絡んではくるが、これだけの自覚があれば、2年目にして大役を担う可能性は低くはないはずだ。

PROFILE
もりした・まさと●1997年8月25日生まれ=24歳。180cm77kg。右投右打。大分県出身。大分商高-明大-広島20(1)
【2020年成績】18試合10勝3敗0H0S、防御率1.91

阪神・佐藤輝明 一軍で打撃をアピール


大先輩糸井超えに挑む

佐藤輝明内野手/1年目


 ベールを脱ぐのは一軍キャンプ初日からだ。アマNo.1スラッガーの触れ込みで4球団競合の末、入団。1月9日から始まった新人合同自主トレで調整を行っている。「(第3クールに入り)体も張ってきたので、そこはしっかりケアしながら。徐々に動けるようになってきて、準備はしっかりできています」と自信をのぞかせ、11日は野外で初めてティー打撃を披露も、フリー打撃はキャンプまで行わない。それでもドラフト6位の社会人出身(三菱自動車岡崎)の中野拓夢は「スイングはやっぱり強かった」と驚いた。

 迫力ある打撃で、開幕スタメンを狙う。ライバルは大学の大先輩・糸井嘉男だ。同じ右投左打のパワーヒッター。実際に内野手登録ながら、矢野耀大監督は外野での起用を考えている。チームの構成上も、このドライチが右翼手を担えば、まとまりがいいのは一目瞭然。その前にしっかりとアピールし、結果を残すことだ。2月11日には日本ハムとの練習試合が組まれており、井上一樹ヘッドコーチはそこで起用する意向も示した。キャンプインから全開で、レギュラー奪取に挑んでいく。

PROFILE
さとう・てるあき●1999年3月13日生まれ=23歳。187cm94kg。右投左打。兵庫県出身。仁川学院高-近大-阪神21(1)

巨人・高橋優貴 狭き2枠の候補


先発ローテ枠に挑む

高橋優貴投手/3年目


 これが2年目のジンクスというものか。2019年のドライチで、ルーキーイヤーに先発ローテ入り、5勝を挙げて昨季の飛躍が期待されたが、プレシーズンに左ヒジを痛めて長期戦線離脱。復帰は10月に入ってからで先発で1勝も、V2を果たしたチームの戦力とは成り得なかった。

 今キャンプでは先発ローテーション復帰に向けた信頼回復と、初の2ケタ勝利に向けた技術向上が最大のテーマとなるが、前者は過去2シーズンと比較すると、数倍、し烈な争いが予想される。というのも、ポスティングでMLB移籍を目指したエース・菅野智之が望外の残留、菅野移籍を見越して獲得した井納翔一(DeNAからFA加入)もおり、先発ローテーションは一気に厚みを増したからだ。すでにこの時点で当確マークが灯っているのがこの2人に加えてA.サンチェス戸郷翔征の右4枚。彼らに続く候補として、畠世周と新人の平内龍太も食い込んでくる。ただ、右4枚+左2枚がバランス的には理想で、左腕では今村信貴、田口麗斗、C.C.メルセデス横川凱らと争うこととなりそう。この中ではメルセデスの実績が群を抜くが、昨秋に左ヒジの手術を受けており、自主トレを共にした今村&田口が最大のライバルで有力候補。果たして、3年目ドライチはこの争いを勝ち抜けるだろうか。

PROFILE
たかはし・ゆうき●1997年2月1日生まれ=24歳。178cm82kg。左投左打。茨城県出身。東海大菅生高-八戸学院大-巨人19(1)
【2020年成績】8試合1勝3敗2H0S、防御率4.30

中日・根尾昂 ショート1本を宣言!


一軍定着に挑む

根尾昂内野手/3年目


 高卒2年目の昨季はプロ初安打を放ったものの、一軍には定着できなかった。出場機会を求めて二軍では二塁や外野も守り、良い経験にはなったが、逆に慣れ親しんだ遊撃で勝負したいという気持ちが強くなった。このままでは中途半端に終わってしまうと感じたからだ。

 とにかく野球に対してはストイック。仁村徹二軍監督は「真面目過ぎる。考え方に幅を持たせることが人間の幅につながる」と評している。鳴り物入りで入団して今年で3年目。正遊撃手・京田陽太の壁は高いが、持ち味の打撃でアピールしてチャンスをつかみたい。ドラフト3位ルーキーの土田龍空も遊撃1本を明言。上だけでなく、下からの突き上げも感じている。負けるわけにはいかない。

PROFILE
ねお・あきら●2000年4月19日生まれ=21歳。177cm80kg。右投左打。岐阜県出身。[甲]大阪桐蔭高-中日19(1)
【2020年成績】9試合2安打0本塁打0打点0盗塁、打率.087

ヤクルト・奥川恭伸 リスタートの春に


先発ローテに挑む

奥川恭伸投手/2年目


 高卒新人ながら即戦力の期待を寄せられたが、一軍登板は1試合のみ。入団直後から肩やヒジを痛め、一軍初先発は昨季最終戦。結果は3回途中5失点でKOも、それ以前に故障した悔しさがあったのだろう。真っ先に挙げた2年目の目標は「ケガなくできたら」だ。「その中で、一軍で投げられればもっといいのかな、と。もちろんプロ初勝利もしたいと思いますし、頑張りたいと思います」。

 決して大きな目標を口にはしない。それでも周囲が期待を寄せるのは、ポテンシャルの高さゆえ。最速155キロの直球に、キレのあるスライダーを見れば、首脳陣は先発ローテーション入り、さらには2ケタ勝利と期待をふくらませるばかりだ。故障で出遅れた1年目の経験を糧に、この春、昨季のドライチがリスタートを切る。

PROFILE
おくがわ・やすのぶ●2001年4月16日生まれ=20歳。184cm82kg。右投右打。石川県出身。[甲]星稜高-ヤクルト20(1)
【2020年成績】1試合0勝1敗0H0S、防御率22.50

ロッテ・佐々木朗希 待ちに待った実戦登板


一軍デビューに挑む

佐々木朗希投手/2年目


 体づくりに励んだ1年がムダではないことを証明したい。最速163キロを誇る“令和の怪物”に注目が集まるも、新人年は一軍どころかファームでも実戦登板なし。開幕から異例の一軍帯同で吉井理人投手コーチの下でトレーニングが続いた。ただ、成果は下半身が物語り、尻周りは1年前より一回り大きくなっている。

 サイズアップした体に比例し、投じるボールもスケールアップ。そんな期待を抱かせるベールに隠されたままの“怪物”が、いよいよ本格投球を披露する。キャンプは一軍スタートが決まり、井口資仁監督が「今年は競争する立場」と話しているとあってブルペン入りは確実。実戦デビューも現実味を帯び、11日に予定されている紅白戦も注目。2年越しの“快速球”は見逃せない。

PROFILE
ささき・ろうき●2001年11月3日生まれ=20歳。190cm85kg。右投右打。岩手県出身。大船渡高-ロッテ20(1)
【2020年成績】登板なし

日本ハム・野村佑希 正三塁手の最有力候補


レギュラー奪取に挑む

野村佑希内野手/3年目


 昨季は2年目にして開幕スタメンに抜てきされ、劇的サヨナラ打など存在感をアピール。守備時の右手小指骨折による長期離脱で21試合出場に終わったものの、3本塁打を放った長打力、18打点を挙げた勝負強さは未来の主砲を予感させた。

 3年目を迎える今季は、正三塁手候補筆頭としてし烈なレギュラー争いに挑む。レギュラーの座を勝ち取るには、持ち前の打撃だけでなく、昨季ケガの原因にもなった守備力アップが不可欠だ。課題克服に向け、先輩・杉谷拳士らと行った離島の自主トレでは、守備練習に多くを割いた。逸材のそろう同世代のライバルにも負けられない。「1年間戦い抜きチームに必要な選手として認めてもらえるようにしたい」。2年連続開幕スタメン、さらに真の主力を目指す。

PROFILE
のむら・ゆうき●2000年6月26日生まれ=21歳。187cm92kg。右投右打。米国ミシガン州出身。[甲]花咲徳栄高-日本ハム19(2)
【2020年成績】21試合19安打3本塁打18打点0盗塁、打率.257

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