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田中将大が楽天に電撃復帰!

杜の都に再び歓喜を 田中将大が楽天に電撃復帰!「こだわりたいタイトルは“日本一”」

 

マー君が杜の都に帰ってくる。楽天は1月30日に都内で記者会見を行い、田中将大(前ヤンキース)入団を発表した。東日本大震災から10年という節目の年に、2013年以来8年ぶりとなるリーグ優勝、日本一へ向け、チームは強力過ぎる援軍を得ることになった。
写真=山口高明

田中将が復帰したことで、楽天は豪華な先発陣が完成しそうだ


オーナーが獲得を厳命


 その一報を喜んだのは、楽天ファンだけではなかったはずだ。去る1月28日、楽天はメジャー・リーグのヤンキースからFAとなっていた田中将大投手と入団の基本合意に達したと発表した。日本球界への復帰は、実に8年ぶり。再び背番号「18」が先発する試合を見たい、と思ったファンも多かっただろう。

 右腕は2013年に無傷の24連勝をマークするなど、7年間でNPB通算99勝。14年からはヤンキースに移籍し、昨季までに通算78勝を挙げるなど、メジャーでも確かな存在感を示し続けてきた。ただ野球選手に「別れ」は付きもの。初めてFAとなった昨オフ、田中将はあらためて自らの未来と向き合うことになった。

 残念ながら、独占交渉期間内にヤンキースとの交渉はまとまらなかった。これで楽天を含めた全球団との交渉は解禁となったが、コロナ禍で移籍市場は停滞。また着々と先発陣を補強したヤンキースには、今季こそ課徴金を回避したいという意向もあった。

「自分自身、FAになった瞬間の考えを正直に話すと、ヤンキースと再契約してプレーしたい気持ちがありました。しかし、かなり早い段階で代理人を通じてお話を聞いている中で、別々の道を歩んでいかないといけないと感じました」

 愛着のある球団を離れることが濃厚となっていく中で、悩める日々は続いた。

 他球団への移籍を覚悟し始めたとき、選択肢の一つとして浮上したのが、古巣だった。楽天側の姿勢は、明確だった。三木谷浩史オーナーが、フロントに対し「絶対に獲(と)れ」と厳命したからだ。

 昨年、新型コロナウイルスの影響で、球団経営は大打撃を受けた。今後も入場制限が続くことが予想され、V字回復が見込めるとは言い難い。それでも、オーナーの鶴の一声で、方針は決まった。立花陽三球団社長は「スポーツ界は正直に申し上げて、非常に厳しい状況です。今季もかなり厳しい状況でスタートすると思います。石井(石井一久)GM兼任監督と僕で話し合い、三木谷オーナーに相談に上がったところ、迷うことなく『絶対に獲れ』という言葉をいただいた」と明かした。

 そもそも右腕は古巣と、相思相愛とも呼べる状況が続いていた。楽天側はメジャー移籍後も毎年、オフに球団施設を提供。田中将もオフの合同自主トレでは、則本昂大辛島航ら後輩たちにさまざまな金言を授けてきた。田中将にはメジャー球団から、ビッグなオファーもあったという。それでも迷いはなかった。楽天と、NPB史上最高額となる年俸9億円プラス出来高払い(金額は推定)で2年契約を結んだ。

 入団会見では「最終的に自分がどういう環境で、どういう野球をやりたいのかを考えました。ものすごく高く評価していただき(メジャーから)大きなオファーもありましたが、再びイーグルスでプレーし、日本の方々の前で投げることに勝るものはなかった」と決断した経緯を自らの言葉で説明した。

三木谷オーナー[左]から「18」のユニフォームを受け取る田中将。その功績を称え、7年にわたり空き番号だった


生半可では成功しない


 今年で、11年3月11日に発生した東日本大震災から10年を迎える。東北にとっても、球団にとっても節目の年。今季から監督も兼任する石井GMは「震災から10年、すごく特別なシーズンだと思います。そこに田中選手がいるのは楽天や東北の方にとって、すごく特別なこと。特別な年に導かれるのも、スペシャルな選手にしかあり得ないタイミングなのかな」としみじみと語った。

 13年に球団初の日本一に貢献したスペシャルなエースが、節目の年に戻ってくる。これは有形無形の力となって球団を後押しするだろう。無傷の24連勝という球史に残る成績を残した13年シーズン、特に田中将が登板した試合では「絶対に勝つ」という強い気持ちを、選手全員から感じた。若手も多いチームは、レジェンドの加入でさらに引き締まるはず。特に投手陣は、右腕と一緒に汗を流すことで得るものが多いはずだ。

 目指す目標について問われた右腕は、迷わず言い切った。「こだわりたいタイトルは“日本一”。正直、13年で皆さんの印象は止まっていると思う。求められているハードルは高いと思いますが、『そこを飛び越えてやろう』というところも、やりがいの一つ」。これほどまでの覚悟とモチベーションを高く持った選手の加入が、プラスに作用しないはずがない。

2013年の日本シリーズで胴上げ投手になった田中将。歓喜シーンの再現なるか[写真手前は嶋基宏]


 入団会見では自ら、今季終了後に契約見直し(オプトアウト)の条項が盛り込まれていることを明かした。21年シーズン終了後、右腕がどんな決断を下すかは分からない。ただ今は、再び日本一に貢献するという決意しかない。「決して腰掛けではなく、本気で日本一になりたいと、心から思っての決断なので。生半可な気持ちでは、どの世界でも成功しない。まずは全力で戦いたい」と力強く語った。

 石井GM兼任監督は「特別な選手だが、特別扱いはしない。パフォーマンスを出してこその野球選手だと思っている」と期待を寄せた。日本に戻ってきたその覚悟を考えれば、特別扱いなど不要だろう。ボールやマウンドの違いなど環境の変化にも対応して、田中将は投球内容で自らの存在価値を証明する。どの試合も、そしてどの1球さえも、見逃せないものになるはずだ。

入団会見一問一答「日本一を報告できれば」(2021.1.30)


──8年ぶりの楽天復帰。

田中将 また、皆さんの前で投げられる。ワクワクが抑えられない状態。7年で成長した姿をお見せすることができれば。

──背番号は再び「18」に決まった。

田中将 プロの野球選手としてキャリアをスタートさせているし、エースナンバーには良い印象がある。自分が背負っていたから着ける、だけではなく、結果だったり、そういうところで示したい。

──被災地の方々にどんな姿を。

田中将 今まで以上に近くにいられることで、僕に何かできることはたくさんあるかもしれない。できる限り協力していきたい。まずは、球場のマウンドでいい姿を見ていただけるように努力しないと。

──対戦したい打者は。

田中将 7年(日本を)離れていて、たくさんいい打者が出てきている。誰か個人名を挙げるっていうのは……。ちょっと分からない。

──柳田悠岐選手(ソフトバンク)が対戦を「嫌です」と答えていた。

田中将 同級生(同学年)だけど、お話をしたことはない。2013年は(柳田に)5割(6打数3安打)打たれているし、リップサービスでは?(笑)。

──楽天で優勝した13年を超える興奮を感じる瞬間はあったか。

田中将 舞台が違うので比べることはできないが、同じように興奮だったり、やりがいっていうものを感じた年はあった。アメリカで7年間プレーしたけど、登板前に7年間ずっと楽天での日本一の瞬間のビデオを見ていた。そういうところからも、(心情を)分かっていただければ。

──楽天時代に監督を務めた野村克也さん、星野仙一さんにどのような報告を。

田中将 『また帰ってきました』っていうこと。シーズン後には『日本一になりました』と報告をできたら。

マー君復帰に関する球界の声


ヤクルト・嶋基宏捕手 ワクワクするニュース

「田中投手が日本球界復帰のニュースを聞いて、すごい決断をしたなと思いました。今、コロナ禍で明るいニュースがなかったので、久しぶりにワクワクする内容のニュースだと思います。東日本大震災後、10年を迎えますが、田中が帰ってくることで東北もさらに元気になると思います。また、田中のボールを受けたり、対戦できる日を楽しみに、お互いに良いキャンプ、シーズンを迎えましょう!」(19年まで楽天)

巨人坂本勇人内野手 対戦できるのが励みに

小学時代にバッテリーを組んでいた坂本[右]と田中将


「日本野球界にとってすごく明るいニュースで、将大の投球をまた見られることにワクワクしています。僕たちの世代の常に先頭で走ってくれている将大とまた同じステージでプレーできることを誇りに思い、刺激にもなります。本当にすごいことですね。対戦できることを励みに、これからも頑張ります」

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