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12球団序盤戦のサプライズ 大誤算とうれしい誤算【パ・リーグ編】

 

新型コロナ禍、外国人選手の来日遅れもあって、各球団とも開幕前の青写真どおりの戦いはできていないはずだ。その中で起こった頭を悩ます大誤算と、逆に、うれしい誤算、さらに5月決戦のキーマンを球団別に挙げてみた。下位チームに誤算が多いのは確かだが、順調なチームにも誤算がないわけではない。
※成績は4月29日現在

楽天の大誤算 リリーフの要のはずが……


開幕早々からブセニッツが不在で、牧田[写真]まで抹消になってしまった


【パ1位 13勝9敗6分 打率.229 防御率3.23】

 今季のブルペンは、松井裕樹がクローザーに戻り、7、8回を速球派のブセニッツ、アンダースローの牧田和久でつなぐのが盤石かと思われていた。だが、ブセニッツは開幕2戦目に今季初登板も、1回2安打3失点と振るわず。翌日、背中の張りのため登録を抹消された。4月16日に一軍に戻ってきたが、登板の機会はまだ少ない。

 また、牧田は13日のロッテ戦(楽天生命パーク)では2点ビハインドの8回に登板。失策絡みだったものの3失点を喫した。さらに17日の日本ハム戦(東京ドーム)で中田翔に一発を浴びてしまう。石井一久GM兼任監督は「もう一度低くキレのある、精度の良い球を今のうちに調整してほしい」と、加入2年目で初となる二軍再調整を命じた。

 現在は宋家豪酒居知史、左腕・渡邊佑樹らの奮闘もあり、何とかしのげているが、主役2人の不調はチームにとって大きな誤算。ブルペンの負担を考えれば2人の復調が不可欠となる。上位をキープするためにも、万全な態勢を模索したい。

5月決戦のKEY PLAYER 茂木栄五郎

内野手


 スタートダッシュはこの男のバットで成し遂げられたと言っていい。だが、体の張りによる欠場すると、打線の威力は一気に目減りした。復帰後も本調子には戻っていない。投手陣の負担を減らす一打が求められる。

ソフトバンクの大誤算 エースの離脱に止まらない四球


四球でリズムを悪くして失点。その悪循環からなかなか抜け出せない


【パ2位 15勝11敗3分 打率.260 防御率3.48】

 打率リーグトップながらなかなか得点力が伸びない打線も気になるところだが、それ以上に深刻なのが投手陣だ。4月6日の日本ハム戦(札幌ドーム)でエース・千賀滉大が今季初先発を果たすも、試合中に左足首を負傷。じん帯損傷の診断を受け、前半戦は絶望となった。

 ただでさえ東浜巨、新戦力の外国人を欠く中でエースもいなくなり、投手陣はますます踏ん張りが必要な状況に。だが、誤算というか、相変わらずというか、制球難、四球苦が試合展開に大きな影響を及ぼしている。与四死球144はリーグワースト2位で、1試合2ケタ与四死球は4度。特に先発陣が不安定さを露呈して5回もたずに降板するケースも多く見られ、シーズン序盤からリリーフ陣は過度な負担を強いられている。投手陣が悪くした流れの中では、攻撃陣もリズムを作りづらい。

 4月だけで2度の4連敗を喫した。自滅さえ避けられれば、投打もかみ合っていくはずだ。

5月決戦のKEY PLAYER 東浜巨

投手


 右肩のコンディション不良などでファーム調整が続く中、4月2日の試合で左足首に打球を受けるも大事には至らず。二軍戦で100球をめどに投げて問題がなければ一軍昇格も。千賀がいない中、もう1本の柱がもうじき戻ってくる。

ロッテのちょっとうれしい誤算 中軸が好調の打線


リーグ打点トップ29をマークする安田


【パ3位 14勝12敗4分 打率.244 防御率3.59】

 昨季2位躍進の原動力は、四球をもぎ取り少ない好機をモノにして、盤石の勝ち継投で逃げ切る形を維持できたこと。チーム打率は12球団ワーストの.235と、打ち勝つことは多くはなかった。だからこそ、今季はキャンプから振り込み増で打線の強化を図って得点力アップを期していた。

 序盤戦で成果が出ている。攻撃型・二番として起用するマーティンがリーグトップの10本塁打、主将の三番・中村奨吾が打率3割超と好調を維持し、21打点を挙げて奮闘。さらには、四番・安田尚憲がリーグトップの29打点と、打率こそ2割台前半ながら5本塁打、加えてしっかり犠飛も放つなど得点機をモノにしている。

 4月21日の日本ハム戦(ZOZOマリン)では5点を追う展開も7、8回で4点を奪い、9回に岡大海の逆転サヨナラ弾で劣勢を跳ね返した。開幕5連敗スタートも、貯金生活に転じているのは打線の奮起が大きい。貧打線は過去のこと。目指した打力アップが実を結んでいる。

5月決戦のKEY PLAYER 益田直也

投手


 打線の奮起で逆転する試合が多い一方で、守護神が不安定。早くも3敗を喫し、しかもすべての黒星がソフトバンク戦。上位チームを相手に星を落とすわけにはいかない。貯金を積み重ねていくには、抑えの安定感が不可欠だ。

西武の超大誤算 野手にケガ人続出


復活を期待された山川の離脱は痛い


【パ4位 12勝13敗3分 打率.223 防御率3.98】

 チーム打率、得点はともにリーグ5位。打線が苦しんでいる西武だが、やはり野手にケガ人が続出したのが超大誤算だ。一時は開幕オーダーに名を連ねた栗山巧山川穂高外崎修汰木村文紀の名前が一軍から消えた。主軸の代わりに呉念庭愛斗、新人の若林楽人らが奮闘し、貯金を5まで増やしたが、主軸不在の穴は大きい。投打がかみ合わず徐々に下降。4月20日に栗山が、23日にスパンジェンバーグが一軍復帰したが、チームは17日から2分けを挟む6連敗を喫した。その間の1試合平均得点は2.88。先発投手が試合をつくれず、それをカバーする力が打線にはなかった。

 借金も2まで増えたが、4月27、28日のロッテ戦(メットライフ)に連勝して5割復帰。ただ、いずれも3対1、3対2と辛勝だった。特に主砲・山川が戻ってくるまでは僅差のゲームをモノにしていくしかない。そのためには先発陣の奮起も、より一層求められる。

5月決戦のKEY PLAYER スパンジェンバーグ

内野手


 昨年は150三振を喫したスパンジェンバーグ。新型コロナ禍で来日が遅れた今季だが、打撃に安定感が増した。積極的な攻走はチームに活気を与える。どの打順もこなせる万能性も頼もしい。使い勝手の良さがチームの大きな力になる。

オリックスの超大誤算 定まらぬクローザー


代役抑えのヒギンスも離脱


【パ5位 10勝13敗6分 打率.241 防御率3.02】

 勝ち切れない。打線が復調し、中でも杉本裕太郎、T-岡田らが勝負強さを見せて逆転する試合も増えていった。が、今度は抑えが不安定で逆転負け……。開幕は漆原大晟を抑えに抜てきも制球が不安定で、火消しに平野佳寿を起用するも4月16日に頸部痛で登録を抹消。代わりに9回にヒギンスを送り込んだが、18日のロッテ戦(京セラドーム)では2/3イニング4四球の大乱調、25日の日本ハム戦(札幌ドーム)では同点被弾と、制球が乱れてストライクを取りにいけば痛打の悪循環。しまいには腰痛で27日に離脱した。

「(適任者が)いないでは困る」と頭が痛い中嶋聡監督は27日の楽天戦(京セラドーム)でK-鈴木を3点リードの9回に起用も、四球と三塁の失策でピンチを招いて降板。その後、同点に追いつかれて手痛いドローに。早くも6分けで、うち2つは9回に追いつかれてのもの。負け越している現状では、引き分けは負けに等しいだけに、抑え不在を早々に解消したい。

5月決戦のKEY PLAYER 平野佳寿

投手


 今後も若手を抑えで起用する可能性は高いが、「若いヤツのケツを拭くのが役目」と中嶋監督が話すように、ピンチを招けば背番号16を送り込む。27日に一軍合流し、5月に復帰へ。メジャー帰りの37歳がブルペンの精神的支柱になる。

日本ハムの大誤算 予想外の打線低迷


不振の中田は四番を外れている


【パ6位 9勝15敗4分 打率.221 防御率4.01】

 最大の誤算は予想外の打線低迷だ。チーム打率、得点はリーグ最低。残塁が多く、得点につながらないシーンが目立った。昨季の打点王・中田翔の不振は響いているが、新四番・近藤健介の調子が上向きで5本塁打、21打点と機能し始めている。野村佑希のケガによる離脱も誤算だった一方で、淺間大基郡拓也らスタメンを張る若手の台頭はうれしい誤算だ。

 投手陣の誤算は、先発ローテに予定していたバーヘイゲンアーリンの来日遅れ。開幕直前まで上沢直之以外の先発ローテが決まらない異常事態となったが、楽天から移籍の池田隆英が救世主に。2勝を挙げて先発ローテの一角を担う活躍はうれしい誤算と言える。ルーキー・伊藤大海も5試合連続のクオリティースタートでついに初勝利。懸念された先発ローテは固まりつつある。問題はリリーフ陣。鉄腕・宮西尚生が3度の救援失敗で二軍降格など、計算できるはずのリリーフの不調は誤算で、今後のチーム浮上を占うカギとなる。

5月決戦のKEY PLAYER 近藤健介

外野手


 天才打者が復調の気配だ。4月28日のソフトバンク戦(PayPayドーム)で今季5号を放ち、4月だけで3試合連続弾を含む5本目の本塁打。昨季の5本に27試合目で並んだ。5月も得点力不足に苦しむ打線を救うことができるか。

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