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2022ドラフト特集

2022スカウト布陣から読む12球団補強ポイント【パ・リーグ編】

 

徐々に平常を取り戻しつつあるとはいえ、依然、コロナ禍でのスカウティング活動が続きそうだ。選手をチェックする限られた機会&情報を選りすぐって、優れた素材を見抜くスカウトの眼力は、ますます重要となる。パ・リーグのスカウト布陣をチェックしながら、補強ポイントを占う。


オリックス・続・視察&育成で逸材発掘へ


 大きな動きはないものの昨季限りで引退した岡崎大輔氏が新任。今年24歳と、より選手に近い目線で逸材の動きに目を光らせていく。そんなスカウト陣は現場と一体となって選手育成を掲げ、スカウトを務めた由田慎太郎氏がコーチに就き、コーチだった小松聖氏がスカウトに就くなど、2019年から人事交流としてスカウトとコーチの入れ替えを行ってきた。育成に重きをおくだけに現場と一体となり、指名だけで終わらない体制を続けていく。

【2022補強ポイント】将来性を含めた能力重視が色濃く

 左腕・宮城大弥、遊撃手・紅林弘太郎と今年高卒3年目の両者が一軍定着。左の強打者・来田涼斗も新人年の昨季に一軍で結果を残してポスト・吉田正尚の期待も大。昨秋のドラフトは大卒・社会人出を中心に、投手・野手とも即戦力候補を指名しただけに、現段階で補強点は浮かび上がらない。より将来性を含めた能力重視の視察が続くだろう。

■編成&スカウト一覧
氏名[担当地区]=主な担当選手
牧田勝吾[全国]
山口和男[全国]=山本由伸(都城高・投)
上村和裕[北海道・東北・関東]=頓宮裕真(亜大・内)
谷口悦司[北陸・関西]=太田椋(天理高・内)
内匠政博[東北・北信越・関西]=村西良太(近大・投)
小松聖[北信越・関東]=福永奨(国学院大・捕)
下山真二[東海・関西]=阿部翔太(日本生命・投)
乾絵美[中国・四国・関西]=来田涼斗(明石商・外)
早川大輔[中国・四国・関東・関西]=大城滉二(立大・内)
縞田拓弥[中国・九州]=宮城大弥(興南高・投)
(新)岡崎大輔[関東]
★=編成副部長、☆=グループ長

ロッテ・昨年2月から独立L担当も


 昨年2月にBCL担当として永森大士氏が就任し、昨秋のドラフトでは育成2位で速水将大を指名。高校・大学・社会人に加えてプロ入りを目指す独立リーガーから金の卵を発掘し、今年は昨年12月に発足したNOLも担当する。また、関東地区は柳沼強氏、中川隆治氏に加え、九州地区の福澤洋一氏が大学生の東都リーグを視察するなど複数の眼で逸材をチェック。柳沼氏は昨年から北海道も担当地区に加わり、新スカウト部長・榎康弘氏の下、スカウト一丸で眼を光らせる。

【2022補強ポイント】ポジション問わず柔軟に幅広く

 有望若手が芽を出し、明確な補強点があるわけではない。今年のドライチ・松川虎生が高卒捕手、佐々木朗希ら若手投手も豊富で主軸打者候補も安田尚憲山口航輝のほか、下の世代にも西川僚祐ら次代を見据えたチームづくりが進む。補強点は今季次第で浮かび上がるだけに、指名候補を絞る際もポジション、年齢は問わないだろう。

■編成&スカウト一覧
氏名[担当地区]=主な担当選手
松本尚樹
☆榎康弘=古谷拓郎(習志野高・投)
柳沼強[北海道・東北・関東・栃木]=佐々木朗希(大船渡高・投)
中川隆治[関東]=鈴木昭汰(法大・投)
福澤洋一[九州]=佐藤都志也(東洋大・捕)
黒木純司[中国・四国]=中森俊介(明石商高・投)
小林敦[東海・北陸・千葉]=藤岡裕大(トヨタ自動車・内)
三家和真[関西]=松川虎生(市和歌山商高・捕)
永森大士[BCL・NOL]=速水将大(BCL/富山・内)
★=球団本部長、☆=スカウト部長

楽天・益田氏と足立氏が新加入


 後関昌彦部長、愛敬尚史アマスカウトグループ・マネジャーのトップ体制は変わらず、新たに2人が加わった。前球団広報の益田大介氏が異動し、関西地区を担当する。足立祐一氏は昨季限りで現役を引退し、アマチュアスカウトに転身。「これからの楽天を背負って立つ選手たちを発掘し、違う形で恩返しをしていきたい」と意気込んでいる。独自目線での有望捕手の発掘が期待できそうだ。他の地区担当に大きな変動はなく、それぞれが引き続き逸材獲得へ目を光らせる。

【2022補強ポイント】育成路線を継続か標的は高校生投手

 昨年は1位から3位で野手を指名したことから、今年は高校生投手を中心とした指名を選択する可能性が高い。例年のような超目玉に乏しいが、左腕では森下瑠大(京都国際高)、大野稼頭央(大島高)、右腕では田中晴也(日本文理高)ら、先発候補がターゲットとなる。また、即戦力では矢澤宏太(日体大)、片山皓心(Honda)らもマークする。

■編成&スカウト一覧
氏名[担当地区]=主な担当選手
★後関昌彦=松井裕樹(桐光学園高・投)
☆愛敬尚史=辰己涼介(立命大・外)
(新)益田大介[北海道・東北]
沖原佳典[関東]=吉野創士(昌平高・外)
部坂俊之[関東]=高田孝一(法大・投)
山田潤[東海]=安田悠馬(愛知大・捕)
(新)足立祐一[関西]
山下勝巳[中国・四国]=安樂智大(済美高・投)
大久保勝也[九州・沖縄]=泰勝利(神村学園高・投)
★=スカウト部部長、☆=アマスカウトグループ・マネジャー

ソフトバンク・逸材発掘にもより力を入れて


 昨年の布陣に新たに加藤領健氏が仲間入り。昨季まで4年にわたり三軍バッテリーコーチを務めて若手選手の育成に携わってきていただけに、現場の目線を生かして、プロ入り後の大化けを予感させる一芸に秀でた選手たちを発掘していく。特に今季から三軍制を拡充し、さらなる育成システムの強化と独自プログラムの確立を目論む球団。“自前で育てて強いチームをつくり出す”ためには、ドラフト戦略も重要となってくる。スカウト陣の腕の見せどころだ。

【2022補強ポイント】目先の強化より数年後を見据えて

 レギュラー陣の高齢化が進むものの、選手層の厚さを考えると後継者獲りを特段焦る必要性はない。1位指名の「その年最も評価が高い選手」という方針は変わらず、投手・野手、高校生・大学生・社会人に関しても特に限定せずに広い視野で見ていき、候補者を絞り込む。今秋も数年後を見据えたチームづくりを続けていく。

■編成&スカウト一覧
氏名[担当地区]=主な担当選手
永井智浩
☆福山龍太郎[全国]=甲斐拓也(楊志館高・捕)
作山和英[北海道・東北(全国)]=風間球打(明桜高・投)
山本省吾[東海・北陸(全国)]=栗原陵矢(春江工高・捕)
□宮田善久[関東]=石川柊太(創価大・投)
岩井隆之[全国]=渡邉陸(神村学園高・捕)
山崎賢一[中国・四国]=千賀滉大(蒲郡高・投)
松本輝[関東・信越]=山本恵大(明星大・外)
稲嶺誉[関西]=野村勇(NTT西日本・内)
福元淳史[関東]=井上朋也(花咲徳栄高・内)
(新)加藤領健[九州]
小川一夫[九州]
★=球団統括本部 編成育成本部 本部長 兼 スカウト部 部長、☆=チーフ、■=チーフ補佐、□=関東統括、◎=球団統括本部 GM補佐 兼 編成育成本部 企画調査部アドバイザー

日本ハム・体制強化で戦力発掘に尽力


 昨年から陣容が1人増えて11人体制となった。アマスカウトグループ長に山本一徳氏が就任。これまで編成部門の要職を担い、客観的な数値で選手の実力を見てきた山本氏が、新戦力発掘の最前線に立つ。また、昨季まで二軍監督を務めた原田豊氏が九州地区担当として4年ぶりに復帰する。近畿地区担当として国内の独立リーグでプレー経験がある武部義人氏も新たに加わり、ノンプロ出身のスカウトが半数以上を占めることになった。

【2022補強ポイント】新球場で躍動するスター獲得目指す

 今季は一気に若返り、誰が台頭するかでドラフト戦略も大きく変わる。その中で2023年開業の新球場を見据え、エース級の投手や長距離砲など、投打で天性の才能を持つ逸材の確保は、確固たる主力が少ない現状では必須。昨年は育成ドラフトで捕手を1人指名したが、支配下では0人。次代のレギュラー捕手候補も補強ポイントだ。

■編成&スカウト一覧
氏名[担当地区]=主な担当選手
★大渕隆=近藤健介(横浜高・捕)
(新)○山本一徳
山田正雄[関東]=大谷翔平(花巻東高・投)
白井康勝[北海道・北東北]=吉田輝星(金足農高・投)
高橋憲幸[南東北・北関東]=有薗直輝(千葉学芸高・内)
今成泰章[関東]=上沢直之(専大松戸高・投)
坂本晃一[関東]=五十幡亮汰(中大・外)
熊崎誠也[東海・北陸・近畿]=達孝太(天理高・投)
加藤竜人[中国・四国・近畿]=堀瑞輝(広島新庄高・投)
(新)武部義人[近畿]
(復)原田豊[九州]=清水優心(九州国際大付高・捕)
復=復帰、★=GM補佐兼スカウト部長、○=アマスカウトグループ長、☆=アマスカウト顧問

西武・大成功ドラフトと同じ布陣


 昨秋のドラフトでは大学球界屈指の左腕・隅田知一郎を1位、佐藤隼輔を2位で獲得して大成功に終わった。特に隅田は事前に1位指名を公表し、4球団競合となったが飯田光男球団本部長が見事に当たりクジを引き当てた。今年のスカウト布陣は昨年からメンバー、担当地区に変更はなく、同じ布陣で逸材の発掘に力を注いでいく。今年も各地区の担当がしっかりと有望選手をマークし、チームの弱点を補強する選手を見極め、“大成功”のドラフトにつなげる。

【2022補強ポイント】育成か、即戦力か投手陣の再建次第

 一昨年は野手中心、昨年は大卒好左腕2人をはじめバランス良く選手を獲得した。今季の戦いぶりで当然ドラフト戦略も変わってくる。4年連続チーム防御率最下位の投手陣の不安が解消されなければ河野佳(大阪ガス)ら即戦力投手に触手を伸ばすか。いずれにせよ目玉不在と言われる今年のドラフト戦線。ドラフト巧者と言われる西武の動きには注目だ。

■編成&スカウト一覧
氏名[担当地区]=主な担当選手
渡辺久信
潮崎哲也
○前田俊郎=高橋光成(前橋育英高・投)
渡辺智男[育成アマチュア担当チーフ補佐・四国]=水上由伸(四国学院大・投)
水澤英樹[北海道・東北]=秋山翔吾(八戸大・外)
竹下潤[関東]=佐藤隼輔(筑波大・投)
後藤光貴[近畿・中国]=金子侑司(立命大・内)
鈴木敬洋[独立リーグ・信越]=伊藤翔(四国IL/徳島・投)
大島裕行[関東]=愛斗(花咲徳栄高・外)
安達俊也[東海・北陸]=源田壮亮(トヨタ自動車・内)
岳野竜也[九州・沖縄]=隅田知一郎(西日本工大・投)
★=球団本部GM、☆=編成グループ(ディレクター)、○=編成グループ(アマチュア担当チーフ)

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