2022年ドラフトの傾向は「目玉不在」と言われる。1位入札確実など、軸となる選手が見当たらない年ほど、スカウトの腕の見せどころだ。カテゴリー別に注目選手を紹介しながら、5つの見どころを探っていきたい。

矢澤宏太　話題性トップは「リアル二刀流」

「ネクスト大谷」と言われている。二刀流の先駆者はエンゼルス・大谷翔平だが、矢澤宏太も負けてはいない。スケール感では本家に劣るかもしれないが、スピードと、体全体がバネのようなしなやかな動きを見せる。最速150キロ。50メートル走5秒8、遠投100メートルと野球センスの塊。矢澤は投打両方で「ドラフト1位評価」を目指しており、貪欲な姿勢もプロ向きと言えるだろう。

松尾汐恩・山田陽翔・米田天翼　センバツで躍動した超高校級

　3年ぶりに甲子園のアルプス席でブラスバンドによる応援が復活した今春のセンバツは、大阪桐蔭高が4年ぶり4度目の優勝。松尾汐恩は正捕手として打率.353、2本塁打、4打点と「打てる捕手」を証明した。好リードに遠投110メートルの強肩も見逃せない。


　大阪桐蔭高との決勝で惜敗したが、近江高の準優勝投手・山田陽翔はインパクトを残した。京都国際高の出場辞退による繰り上げ出場ながら、立派な戦いを展開。チャンスをつかむあたり、運を持った選手かもしれない。8強進出の原動力となった市和歌山高の最速149キロ右腕・米田天翼は総合力の高さを披露した。1学年上の小園健太(現DeNA)の前年センバツを上回る2勝で大きな自信をつかんでいる。

蛭間拓哉・山田健太　東京六大学の左右のスラッガー

　神宮を本拠地とする東京六大学には、左右のスラッガーがいる。立大・山田健太は大阪桐蔭高3年時に春夏連覇を達成。同期で中日・根尾昂、ロッテ・藤原恭大、巨人・横川凱、日本ハム・柿木蓮と4人が高卒でドラフト指名を受け、刺激を受けており、現役最多67安打(4月25日現在)を放っている。現役最多10本塁打の早大・蛭間拓哉はパワーヒッターながら、50メートル走6秒1と脚力もある。左打席からオーラがあり、相手バッテリーはフルスイングに震え上がる。

青山美夏人・菊地吏玖　東都大学の実力派右腕

　亜大は4月27日、3季ぶり27度目の東都大学リーグ制覇を決めた。Vの原動力となったのは、無傷の6勝をマークした青山美夏人である。2年秋に最優秀防御率のタイトルを獲得しているが、3年秋までに通算3勝。勝ち点制(2勝先勝)が復活した今春、1回戦と3回戦で勝利投手となったのは2カードと、大学野球における理想のエース像を見せた。東都二部に潜む逸材は専大の151キロ右腕・菊地吏玖である。立正大との開幕カードでは3連投で勝ち点奪取に貢献し、心身におけるタフネスさを証明している。表舞台とは無縁だが、見逃せない存在であることは間違いない。

益田武尚・河野佳　百戦錬磨の社会人投手

　社会人出身選手は一般的に、プロ1年目から「即戦力」の活躍が見込まれている。その評価をつかみそうな可能性があるのが、2人の右腕である。東京ガスの153キロ右腕・益田武尚は昨年の都市対抗制覇に貢献し、黒獅子旗を手にした。昨年7月の社会人日本選手権で優勝し、最高殊勲選手に輝いたのは大阪ガス・河野佳である。昨年は2021年社会人野球表彰においてベストナイン、最多勝利投手賞、最優秀防御率賞を受賞。安定感があり、信頼感抜群だ。