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2023ドラフト特集

2023スカウト布陣から読む12球団補強ポイント【パ・リーグ編】

 

チームの将来を担う新人選手の発掘。それは優れた素材を見抜くスカウトの手腕に託されている。果たして、どのような人材が地道なスカウティング活動を日々行っているのか。2023年シーズンの12球団スカウト布陣をチェックしながら、補強ポイントを占っていこう。


オリックス・独立L元監督の眼を加えて


 東北・北信越・関西を担当した内匠政博氏が今年からプロ調査グループに移り、昨季までBCL/群馬で監督を務めていた牧野塁氏が就任。東北・関東を担当する。牧野氏は2019年には四国IL/徳島で指揮を執って金の卵を間近で見てきただけに選手を見る眼は確かだ。そんなスカウト陣は現場と一体となって選手育成を掲げ、19年から人事交流としてスカウトとコーチの入れ替えも行ってきた。指名で終わらない体制へ。現場と一体となって選手を育成し続ける。

【2023補強ポイント】競争意識を高めるためにも求むポスト・吉田正尚

 先発ローテは20代が中心で、今年のドライチ左腕・曽谷龍平も加わり層は厚い。一方の野手はレッドソックスに移籍した吉田正尚の後継者が求められる。左の来田涼斗、右の元謙太池田陵真ら有望若手は多数おり、期待値は高いものの競争相手の意味も込め、今秋は『強打の即戦力野手』がターゲットになっても不思議ではない。

■編成&スカウト一覧
氏名[担当地区]=主な担当選手
牧田勝吾[全国]=中川圭太(東洋大・内)
山口和男[全国]=山本由伸(都城高・投)
上村和裕[北海道・東北・関東]=頓宮裕真(亜大・内)
谷口悦司[北陸・関西]=太田椋(天理高・内)
小松聖[北信越・関東]=内藤鵬(日本航空石川高・内)
下山真二[東海・関西]=阿部翔太(日本生命・投)
乾絵美[中国・四国・関西]=来田涼斗(明石商高・外)
早川大輔[中国・四国・関西]=大城滉二(立大・内)
縞田拓弥[九州]=宮城大弥(興南高・投)
岡崎大輔[関東]=曽谷龍平(白鴎大・投)
(新)牧野塁[東北・関東]
★=編成副部長、☆=グループ長

ソフトバンク・多様な視点で多彩な選手を


 チーム同様に層が厚いアマチュアスカウト陣。昨年限りで退団したスカウトクロスチェッカーの岩井隆之氏に代わり、新たに仲間入りしたのが古澤勝吾氏だ。2020年限りで現役を引退後、球団職員としてジュニアアカデミーのコーチなども務めてきた。まだ26歳と若く、現役選手にも近い視点からチームに適した新戦力の発掘を進めていく。そのほか、山本省吾氏が新設ポストのスカウティングスーパーバイザーに就任するなど、組織として広く、多くの選手に目を配る。

【2023補強ポイント】将来を見据えてポテンシャル重視

 今オフの超大型補強を見る限り、近々で足りない戦力はFAなどが現実的。となると、ドラフトでは将来を見据えた戦略がとられる。高校生を中心に、大学・社会人の場合はチーム内競争をあおるだけのポテンシャルを持っているかがポイントに。今年から始動する四軍制がうまくハマるようなら、今秋も育成ドラフトは大量指名の可能性が高い。

■編成&スカウト一覧
氏名[担当地区]=主な担当選手
永井智浩
☆福山龍太郎[(全国)]=甲斐拓也(楊志館高・捕)
作山和英[北海道・東北(全国)]=三森大貴(青森山田高・内)
□宮田善久[関東・静岡]=東浜巨(沖縄尚学高・投)
松本輝[関東・北信越]=吉田賢吾(桐蔭横浜大・捕)
福元淳史[関東]=井上朋也(花咲徳栄高・内)
稲嶺誉[関西]=野村勇(NTT西日本・内)
山崎賢一[中国・四国]=森唯斗(三菱自動車倉敷オーシャンズ・投)
加藤領健[九州・沖縄]=大野稼頭央(大島高・投)
(新)古澤勝吾[東海など]
◆山本省吾[(全国)]=イヒネ・イツア(誉高・内)
小川一夫[(中国・四国・東海など)]
★=球団統括本部 編成育成本部本部長 兼 スカウト部 部長、☆=チーフ、■=チーフ補佐、□=関東統括、◆=スカウティングスーパーバイザー、◎=球団統括本部 GM補佐 兼スカウト部アドバイザー

西武・スカウト一丸で金の卵発掘


 昨年まで関東地区を担当していた大島裕行氏が今年からファーム打撃コーチに就任。新たに昨年限りでユニフォームを脱いだ十亀剣氏が同地区担当としてスカウト陣に加わった。「高校、大学、社会人といろいろな環境で野球をしてきた自分の経験を生かして、選手発掘のため走り回りたいと思います」と決意を語ったが、これはどのスカウトにも共通した思いだ。昨年は大学No.1スラッガー・蛭間拓哉の一本釣りに成功。今年もスカウト一丸となり、逸材に目を光らせる。

【2023補強ポイント】未来の四番となるスラッガーの獲得を

 順当に行けば今年中に国内FA権を取得するのが山川穂高だ。オフの契約更改では球団から4年契約を提示されたが、悩んだ末に単年契約を選択。四番が流出する可能性はぬぐえないだけに未来の主砲は手に入れたい。佐々木麟太郎(花巻東高)、真鍋慧(広陵高)、佐倉侠史朗(九州国際大付高)といった高校生らの、スラッガーの動向は追い続けるだろう。

■編成&スカウト一覧
氏名[担当地区]=主な担当選手
渡辺久信
潮崎哲也
○前田俊郎=高橋光成(前橋育英高・投)
渡辺智男[育成アマチュア担当チーフ補佐・四国]=水上由伸(四国学院大・投)
水澤英樹[北海道・東北]=秋山翔吾(八戸大・外)
竹下潤[関東]=蛭間拓哉(早大・外)
後藤光貴[近畿・中国]=金子侑司(立命大・内)
鈴木敬洋[独立リーグ・信越]=滝澤夏央(関根学園高・内)
(新)十亀剣[関東]
安達俊也[東海・北陸]=源田壮亮(トヨタ自動車・内)
岳野竜也[九州・沖縄]=隅田知一郎(西日本工大・投)
★=球団本部GM、☆=編成グループ(ディレクター)、○=編成グループ(アマチュア担当チーフ)

楽天・引き続き東北の選手を注視


 昨年、球団広報から転身した益田大介氏が4位・伊藤茉央(東農大北海道オホーツク)、現役を引退したばかりの足立祐一氏が5位・平良竜哉(NTT西日本)の入団に尽力。“ルーキー”たちが新たな風を送り込んだ。キャリアが不可欠と言われる職業ではあるが、新たな視点が加わるのは球団にとってもメリットがある。佐々木麟太郎(花巻東高)という東北ゆかりの目玉選手もおり、引き続きその動向を注視することになりそうだ。

【2023補強ポイント】生え抜きの大成へ高校生がメインか

 昨年のドラフトでは支配下6選手中、5選手が大学・社会人投手という明確な意図を持った指名を実現。今年は佐々木麟太郎(花巻東高)や佐倉侠史朗(九州国際大付高)など、注目スラッガーが多いだけに、上位が高校生中心となってもおかしくない。2014年入団の松井裕樹以来、高卒の生え抜きスターが育たない悪しき流れを何とか打破したい。

■編成&スカウト一覧
氏名[担当地区]=主な担当選手
後関昌彦=松井裕樹(桐光学園高・投)
愛敬尚史=辰己涼介(立命大・外)
益田大介[北海道・東北]=伊藤茉央(東農大北海道オホーツク・投)
沖原佳典[関東]=荘司康誠(立大・投)
部坂俊之[関東]=高田孝一(法大・投)
山田潤[東海]=安田悠馬(愛知大・捕)
足立祐一[関西]=平良竜哉(NTT西日本・内)
山下勝己[中国・四国]=安樂智大(済美高・投)
大久保勝也[九州・沖縄]=泰勝利(神村学園高・投)
★=スカウト部部長、☆=アマスカウトグループマネジャー ※1月15日時点で未発表。布陣は2022年

ロッテ・3人の球団OBが就任


 福澤洋一氏がコーチに復帰し、新たに3人の球団OBが就任した。2012年に引退し、昨年まで東洋大でコーチを務めた田中良平氏が東海・北陸を担当。九州・千葉は21年途中にDeNAにトレード移籍した有吉優樹氏が担当し、昨年限りで引退して古巣復帰。関東・東北が担当となる松田進氏は21年限りで引退し、昨年はプロスカウト兼育成担当を務め、今年からアマスカウトとなった。新たな体制でアマスカウトグループディレクター・榎康弘氏の下、逸材に眼を光らせる。

【2023補強ポイント】若手が充実するだけにターゲットは即戦力!?

 高卒2年目捕手・松川虎生、同5年目の長距離砲・山口航輝、同4年目投手・佐々木朗希ら有望若手が芽を出すだけに明確な補強点があるわけではない。ただ、ベテランに依存する面も否めず、打撃面では長打力が求められるとあって“即戦力”がターゲットとなる可能性は高い。いずれにしても補強点は今年の結果次第だろう。

■編成&スカウト一覧
氏名[担当地区]=主な担当選手
松本尚樹
☆高橋薫
◎榎康弘=古谷拓郎(習志野高・投)
柳沼強[北海道・東北・関東・栃木]=佐々木朗希(大船渡高・投)
中川隆治[関東・甲信越]=鈴木昭汰(法大・投)
黒木純司[中国・四国]=中森俊介(明石商高・投)
三家和真[関西]=松川虎生(市和歌山商高・捕)
永森大士[独立リーグ]=速水将大(BCL/富山・内)
(新)田中良平[東海・北陸]
(新)有吉優樹[九州・千葉]
(新)松田進[関東・東北]
★=球団本部長、☆=編成管理部長、◎=アマスカウトグループディレクター

日本ハム・さらなる増強で体制強化


 陣容を昨年までから2人増員して12人体制となった。体制をさらに強化して新戦力の発掘に尽力していく。新任は昨年までファーム打撃コーチを務めていた矢野謙次氏と、ベースボールオペレーション部プロスカウトだった石本努氏。矢野氏は関東地区や独立リーグ、石本氏は大分・長崎を中心とした九州地区を担当していく。昨年も武部義人氏と原田豊氏が新任として加わっており、スカウト陣は大きく増強。球団の発掘に対する意気込みの表れだろう。

【2023補強ポイント】「その年のNo.1」をどう評価していくか

 昨年はチームの若返りが加速した一方で、ドラフトでは即戦力中心に補強を進めた。新球場で迎える今年、さらなる新戦力として誰が台頭するかによって戦略は変わっていくが、「その年のNo.1を指名する」という大きな軸に変わりはない。大谷翔平(エンゼルス)の後輩である佐々木麟太郎(花巻東高)はドラフトの目玉だが、果たして。

■編成&スカウト一覧
氏名[担当地区]=主な担当選手
★大渕隆=近藤健介(横浜高・捕)
山本一徳=矢澤宏太(日体大・投&外)
山田正雄[関東]=大谷翔平(花巻東高・投)
白井康勝[北海道・北東北]=吉田輝星(金足農高・投)
高橋憲幸[南東北・北関東]=有薗直輝(千葉学芸高・内)
坂本晃一[関東]=五十畑亮汰(中大・外)
(新)矢野謙次[関東]
熊崎誠也[東海・北陸・近畿]=達孝太(天理高・投)
加藤竜人[中国・四国・近畿]=堀瑞輝(広島新庄高・投)
武部義人[近畿]
原田豊[九州]=清水優心(九州国際大付高・捕)
(新)石本努[九州]
★=GM補佐兼スカウト部長、○アマスカウトグループ長、☆=アマスカウト顧問

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