新天地でのプレーを選択するまでに至った経緯は人それぞれだ。復活を期す者、ブレークを目指す者。いずれにせよ、彼らに期待されていることはチームを変革することだ。そこでセ・リーグから注目すべき5人の“新戦力”をピックアップする。 ヤクルト・西川遥輝 消えることのない闘志
4度の盗塁王を誇るスピードスターだが、昨季はわずか2盗塁。出場数も一軍デビューを果たした2年目以降では最少の35試合にとどまった。2年間過ごした
楽天を自由契約となり、舞台は初のセ・リーグへ。「まだまだ体は元気なので」との言葉どおり、特守をこなすなど精力的に汗を流している。ただ、現役最多通算332盗塁の実績をしても定位置が確保されているわけではない。外野の定位置は
塩見泰隆と
サンタナが既定路線で、残すは1枠。2月18日の
中日との練習試合(浦添)では2打数無安打。「頭一つ抜けられるように」とあとは実戦で結果を残していくだけだ。キャンプ中には若手に走塁指導を行うシーンも見られるが、「まだまだプレーヤーとしてやっていきたいので」。未だ闘志は消えていない。
中日・上林誠知 実力発揮でレギュラー奪取
上林誠知[中日/外野手][写真=橋田ダワー]
まさかの戦力外通告から「真っ先に声を掛けてくれた」中日への入団が決まった。攻守走と三拍子がそろった期待の新戦力。2014年ドラフト4位で仙台育英高から
ソフトバンクに入団。強打の外野手で18年には22本塁打を放った。ただ故障も多く、22年には右アキレス腱断裂の大ケガを負い、23年は思うような成績が残せなかった。獲得に乗り出した球団は中日だけではなかったことからも、その評価の高さが分かる。「一度は死んだ身だと思っています。レギュラーを狙う気持ちで頑張りたい」と上林。
立浪和義監督も「外野の一角を狙ってほしい」と期待を込める。春季キャンプでは第3クールで右脇腹を痛め、右肋間筋損傷と診断された。それでも「そんなに悪くないと思います」と二軍の練習に合流。別メニューとなるが、大きな心配はなさそうだ。
DeNA・森唯斗 復活期す2018年セーブ王
ソフトバンクで主にリリーフとして470試合に登板した実績を持ち、2018年には37セーブを挙げパ・リーグの最多セーブに輝いた右腕。23年は先発へ転向するも、一軍では6試合、防御率4.60に終わりオフに戦力外通告を受けた。それを聞きすぐさま声を掛けたDeNAに恩義を感じ入団を決意。豊富な経験を持ちながら、大きな声で守備練習に取り組み、チームメートからいじられる場面も見られるなどすでにチームになじんでいる。先発ローテの一角として期待され、移籍後対外試合初登板となった2月15日の
日本ハムとの練習試合(宜野湾)では、調整段階ではありながら先発して2回を1安打1奪三振無失点に抑えた。自身の復活とともにチームの26年ぶりの頂点を後押しする。
広島・内間拓馬 変幻自在でゼロに抑える
現役ドラフトで明確となった自らの役割。新天地で居場所をつかむ。昨季は二軍戦で先発も経験していた右腕だが、今季に向けては
新井貴浩監督にリリーフ専念を直訴。指揮官も「彼はショートイニング限定。先発で使うことはない」と希望どおりの活躍に背中を押した。そうと決まれば、あとはやるだけ。移籍後初実戦となった2月10日の紅白戦では、最速149キロの直球を軸に球数少なくテンポ良く投げ込み、1イニングで三振2つを奪う“4者凡退”(特別ルール)に抑え込んだ。「ゼロで抑えることは一番いいこと」。そのために直球にはより力を込める。クイックでタイミングをズラすなど「打者を見ながらやっている」と変幻自在なフォームで打者を困惑。チームのために全力で──右腕の覚悟は強い。
巨人・K.ケラー リリーフ陣再建の切り札
昨季は12球団ワーストのリリーフ防御率3.81だったブルペン立て直しの切り札として、ライバルの
阪神から「禁断の移籍」を果たした。「巨人軍の一員になれて光栄」という言葉のとおり、キレイさっぱりとヒゲをそり落として春季キャンプへと乗り込んできたのは意気込みの表れだろう。日本一に輝いた阪神の強力ブルペン陣にあって、時に抑えを任された実力に疑いはない。
阿部慎之助監督は「もちろん(勝ちパターンに)入ってきてほしい。終盤のいいところを任せたい」と期待を懸ける。
大勢が右ふくらはぎ痛でキャンプを途中離脱したこともあり、守護神のコンディション次第ではクローザーへの抜てきもあるだろう。盤石のリリーフ陣形成へ、その先頭に立つ。