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<四番のすべて>四番論かく語りき 重圧と戦ったバットマンたち

 

いつの時代もファンを魅了してきたプロ野球。幾多の真剣勝負が繰り広げられたグラウンドには、特異なオーラを放つ四番打者の姿があった。チームの顔でもあるだけにプレッシャーがかかる。四番に座り続けることは並大抵のことではない。重圧とも戦ったバットマンは四番をどうとらえてきたのか。球界が誇る唯一無二のスーパースター、海を渡ったホームランアーチスト、今なお選手、監督としてグラウンドに立つ男たちの頭の中を紹介しよう。

長嶋茂雄「実績のほかになおかつイメージが大切。欠かせない一つはカリスマ性でしょう」



 プロ野球ファンを魅了し続けてきた男だからこそ説得力がある。「常識的に言えば、攻撃陣の中心を担ってきっちりとその役割を果たし、チームの勝利に貢献する打者」が四番論だが、『真の』が修飾されるなら話は別。「認知を超越したもの。科学的な分析をはさむ余地のないもの」。すなわちカリスマ性が、ファンの評価を得ていき、特別な存在となっていく。「英語で言えばサムシング……そういうものを持ち合わせているのがヒーローであり、スターと言われるゆえん」。ただ打てばいいだけではないのが四番。記録だけでなく、人々の記憶に残り続けるのが真の四番だ。

松井秀喜「チームが苦しいとき、逆境に立たされたときにどういう力が発揮できるかが四番の真価」


松井秀喜[巨人-ヤンキース-エンゼルス-アスレチックス-レイズ]


 日米で勝敗を背負う重責は身をもって感じてきたが、“客観視”して胸に刻んでいたことがある。「自分が四番になれるかどうかは、そのときのチーム内での立場が関係してくるけど、チーム全体に『四番はあいつだ』と言われた人が本当の四番」。認められる存在であるべきだからこそ「ホームランよりも打点」と勝利に導くことが最優先の思いを持ち続けたのは、「チームの中心。精神的な柱ですから」の言葉がすべて。チームを救う一打を放ってこそ“真の四番”だ。

新井貴浩「弱っているところを見せるわけにはいかない。そういう意味で四番は孤独です」



 打線の顔であり、チームの顔。影響力は計り知れない。広島時代の2017年には鈴木誠也がもがく姿を見守ってきた中で「負の感情はグッと堪えて我慢していくしかない」と伝えたという。それは自身の経験に基づくもの。「私自身も、いら立ちを抑えることができず、暴れることもありました」。ただ、自分との葛藤は“人目に付かぬ場所”と決めていたとも言うのは「ベンチの雰囲気が悪くなってしまう」から。チームを背負うことは、自分との戦いでもある。

新庄剛志「四番の雰囲気は生まれ持ったもの。僕にはその雰囲気がないんですよ」


新庄剛志[阪神-メッツ-ジャイアンツ-メッツ-日本ハム]


 ファンを魅了し続けるスターでさえ、醸し出せないオーラがある。日本人初のMLB四番打者。阪神時代もその役割を担うことがあったが、「僕もイチローも、ずっと四番に座っていたとしても、たぶん四番の雰囲気は出せない」。つくり上げていくものではなく、元から備わっているもの。誰でもなれないからこそ、四番は特別であり続ける。

中田翔「渡したくない気持ちでやらないとチームにも失礼ですから」


中田翔[日本ハム-巨人-中日]


 日本ハム4年目途中に代役四番に抜てきも当初は「気負いもなければ、こだわりもなかった」。だが、特別なポジションであることに気づき、「責任感を持ってやらなければ」と意識を変えた。以後10年間、北の大地の四番であり続けた男は、巨人を経て今季より中日の主砲へ。どのユニフォームを着ていても、四番の重みが変わることはない。

吉田正尚「大事なのは自分の仕事を理解して打席に入ること。そこを整理すれば打順で大きく変わることはない」


吉田正尚[オリックス-レッドソックス]


 昨春のWBCでも四番を張ったが、「4人目に打席に入るという考えだけ」と特別な意識はない。ただ、初回の第1打席に限れば話は別。「走者がいるケースが大半で、得点のチャンス」と状況が想定できる。つまり、打順以前に大事なのは状況整理だ。求められる役割は何か──。展開に応じて変わる戦況を把握して、勝負強さを示してきた。

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