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最終回 対立軸が曖昧になった両リーグ vs 「東西」という対抗意識の軸|「対決」で振り返るプロ野球史

 

対抗意識が消えたオールスター、CSもアイマイ化に拍車


大谷翔平もメジャーへ旅立った。今後、日本のプロ野球はどこへ向かうのか


 この連載も最終回となった。「対決」を軸にプロ野球史を振り返ってみれば、案外面白い切り口が見え、そこから意外な展開になるのでは、という勝手な期待をもって始めたのだが、終わりに近づくに従って、対立軸がアイマイになったり、見えにくくなったりで、かなり強引に「対決」を仕立て上げざるを得ない仕儀に立ち至った。

 これは、こちらの能力不足にもよるが、プロ野球という組織自体が、アイマイになり、対立を好まないものに変わってしまったことによるのではないか、と考えている。09年に新しい「野球協約」が発効し、コミッショナーが、オーナー会議の下に置かれることになったのも大きい。かつての内村祐之、下田武三両元コミッショナーとオーナー連の“対決”のようなことがあり得なくなったことで、組織としてのダイナミズムが、かえって失われてしまったのではないか。

 30年前に日本を離れ、今年の春帰国したプロ野球ファンがいたとする。さて、彼の目にいまのプロ野球はどう映るか。

 セ、パ両リーグの2リーグ体制は変わっていないが(04年はピンチだったことは書いた)、両リーグ会長職はなくなり、両リーグの連盟事務局もなくなった。さらに審判も統一された。交流試合が始まったのは、喜ばしいことだったが、これもある面、両リーグのアイマイ化、流動化と言えなくもない。

 セ、パ両リーグ会長が消え、交流戦が当たり前になれば、オールスター・ゲームが変質してしまうのは、またやむを得ないことだった。ファンは交流戦でセ、パの選手の対決を見せられたあとのオールスターに、それほどの興味を持たなくなった。選手たちも、「やあ、また会ったね」という感じで、かつての「我々のリーグの強さを見せてやる!」とまなじりを決したオールスターの戦いにはもうなりにくい。

 さらにクライマックスシリーズがアイマイ化に拍車をかける。プロ野球は優勝しなければ、2位も6位も同じ。オール・オア・ナッシングの世界のハズだった。それが3位まで日本シリーズに出場できる可能性があるペナントレースになってしまった(これによってペナントレースと日本シリーズの関係が切れてしまった)。選手とファンは怒るかもしれないが、最近の小学校の運動会でかけっこで順位をつけないのと、何となく似ているのである。対立を好まない悪平等――。

 30年ぶりに日本に戻ってきたファンは、自分の目が信じられなかったことだろう。そして、思わず「オイ、オイ、これじゃあ、1リーグと同じじゃないか」と口走ってしまったのではないか。

 セ、パという対立軸が消えたとは言わないまでも、それが極めて見えにくいものになっているのだから、そう口走るのは自然な反応なのである。

東西対抗意識を盛り上げて、77試合ずつの2シーズン制を


 筆者は、新しい対決軸を見つけることが大事になってくると思うのだ。それをここで提示したい。それは、対立軸を東西に定めることである。これは昔から日本人が大好きな構図だ。例えば、オールスターを東西対抗試合にすればどうだろうか。東日本、北日本には日本ハム楽天西武ロッテ巨人ヤクルトDeNA。西日本、南日本には中日オリックス阪神広島ソフトバンク。7球団対5球団になってしまうが、このアンバランスをかえって逆手に取るのだ。東京とその周辺の5球団から、毎年1球団を西側に組み入れる。関ケ原の戦いの“寝返り”のようなものだ。もっとも、あの戦いでは、西から東への寝返りだったが……。

 それはともかく、この対立軸を持ち込めば、オールスターは生き返ると思う。“寝返り”は、お祭りということで、ファンは許してくれるのではないか。

 これに関連して、交流戦はオールスター後にしてはどうだろうか。ペナントレース終盤近くになって、直接対決ではなく、“間接対決”での順位争いを見せられるのはじれったいというファンもいるだろうが、クライマックスシリーズは、当分なくなりそうもないから、交流戦で3位争いをする4チームの“間接バトル”も面白いのではないか。ただ、それにはやはり、ホームとアウェーですべての顔合わせがある今年と同じ24試合が必要になってくる。そのためには、154試合に増やすべきだと思う。ポストシーズンゲームが多くなっているいま、選手には、さらに負担を強いることになるが、154試合なら、200本安打50本塁打の達成が容易とは言わないが、達成の可能性がかなり高まる。プロ野球は、やはり、“大きな数字”が魅力なのである。

 筆者の理想は、154試合の2シーズン制である。77試合ずつの前後期制なら、かつてのパ・リーグの65試合ずつよりもじっくりと戦える。ここに前後期12試合ずつの交流戦を入れる。前後期ともに制覇したチームが出た場合は、勝率2位のチームとプレーオフを行う。ただし、優勝チームに大きなアドバンテージを与える。前後期優勝同士ならもちろんアドバンテージはなしだ。前後期通算して、前後期どちらかのVチームより勝率の良いチームが出た場合は(どちらも上回ることだってあり得る)、ワイルドカードとして勝率の悪いVチームと1試合のプレーオフを行う。とにかく、必ずプレーオフは行う。最後まであきらめずに戦える形にする。これが最優先。そうすれば、消化試合が少なくなる。付け加えれば、プレーオフの勝者がペナントレースの優勝チームとなる。そうすれば、いまのような“二本立て”は解消される。

 とまあ、いろいろ考えたのだが、いずれにしろ、現在のシステムが最善などということはあり得ないのだ。ダイナミックに変貌を続けるプロ野球、これが21世紀のプロ野球のあるべき姿だと思う。

文=大内隆雄 写真=Getty Images

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