コワモテで実際怖いけど、本当はすごくいい人。俺は大好きさ
宗教じゃないよ
今回は、人には不思議な縁があるって話から書こう。大丈夫だよ、塚原千恵子さん、「宗教みたい」な話じゃないから。
でもさ、大相撲、アメフト、ボクシング、体操と次から次へ、よく出てくるよな。今回は、どこまでがパワハラなんだろうと思わなくもない。もうちょっと詳しく事情を知りたいな……。と言っても、俺はテレビのワイドショーを見ているだけだし、このコラムで体操問題続報はないよ、たぶん。
話を戻そう。8月29日、横浜スタジアムで
DeNA─
中日戦があったけど、俺は愛知のCBCラジオの解説で球場に行ったんだ。東海地区だけに流れる中継ね。その日のアナウンサーが、29歳の江田亮君だった。ラジオは映像がないから時々、試合と関係あるようでない掛け合いをはさむんだけど、突然、彼が「川口さん、その節はお世話になりました」と言った。何のことか分からなかったから「え、何?」って聞いたら、「実は僕、川口さんがいま住んでる近くにある西生田中の卒業生なんです」って。
びっくりした。娘も通っていた中学校だからね。
江田君は西生田中から桐蔭学園高に進み、その後、早大を経てCBCに入ったらしい。スポーツアナウンサーになりたくて、関東や
広島の局も受けたけど全部落ち、たまたま名古屋のCBCに受かったと言っていた。
江田君は「ずっと川口さんと中継やりたかったんです!」と目を輝かせて言ってくれたんだけど、正直、家が近かっただけで大げさだなと思ったら、実は俺と縁があったんだ。昔のことで忘れていたけど、俺、西生田中で野球教室をやったことがあった。野球部にじゃないよ。体験授業というのかな、ケーキ屋さんのパティシエや大工さんを呼んで、実際に1時間授業をするんだ。その中に江田君がいたらしい。
彼は野球をやっていたけど、昔から、将来、アナウンサーになってプロ野球の中継をしたい、という夢があったという。何が響いたかは聞かなかったけど、俺の「授業」がずっと心に残ったとも言ってくれた。不思議だね。若者の歩みの中に、知らないうちに俺がいて、こうやって一緒に仕事をしてるんだからね。
たまたまだけど、あの日、俺もプロ入り前にちょっと縁がある人と会った。まあ、何度も会ってる人だから、不思議な出会いじゃないけどね……。
厳しさは絶対必要
あの日、球場に着いて、練習中のグラウンドに顔を出したら、遠くから「おいっ!」ってドスのきいた声がした。
誰だ、怖いな、と思って声の主を見たら、やっぱり怖い顔だった。中日の
森繁和監督さ。いや、怖いは冗談。確かに見た目は怖いけど(しつこいかな)、ほんとは優しくて、俺は大好きなんだ。
このモリシゲさんが、俺の不思議な縁の人。出会いは1978年、俺のデュプロ時代にさかのぼるんだけど、都市対抗で住友金属和歌山に補強で呼ばれ、宿舎の同じ部屋だったんだ。プロで同じチームになったことはないけど、何かと気にかけてもらった。
で、仲がいい、ということで勘弁してもらいたいんだけど、試合前なのに30分以上話をしてしまった。しかも、脱線しまくって世間を騒がせてるパワハラの話題にもなった。
いわゆるオッサントークだけど、「腹が立たないですか。いまの若いヤツと話していて。あいつら糠(ぬか)に釘じゃないですか」と言ったら「俺、話をしないようにしているんだ。話をすると、ぶん殴りたくなるからね」って。
たぶん半分冗談、半分本気だね。俺は外部の人間だけど、中日の投手陣を見ていてじれったくなるときがある。だって、ポテンシャル的には高い選手がたくさんいるのに、なかなか一本立ちしてくれない。一番は、
大野雄大だよね。モリシゲさんは年齢差もあるし、監督と選手って、どうしても一方的になるから、できるだけ投手コーチに任せているらしいけど、内心はイライラしているらしい。
打者もそうだよね。
大島洋平、
平田良介はいいとしても、
高橋周平、
福田永将あたりがはっきりしない。結果が出る出ないは運もあるけど、ここという場面でボール球に手を出して投手を楽にしているケースをよく見る。広島だって、そんなに飛び抜けてる選手がいるわけじゃないけど、そういうことはほとんどない。中日の選手は、来年広島のキャンプを見に行くべきじゃないかな。キツイよ、カープは。
やっぱり厳しさは必要さ。俺は、そこはコーチが悪役になってもやらきゃいけないと思う。だって2013年からずっとBクラスで、今年も最下位争いだろ。いま変えないで、いつやるの!
残念ながら、いまの中日を支えているのは、モリシゲさんが中南米から探してきた選手たち。
ビシエド、
アルモンテとかね。でも、助っ人はあくまで助っ人。投打とも軸になり、ほかを引っ張る日本人選手が出てこないと、このままズルズル行くよ。中日だけじゃない。
巨人だって、もう4年連続V逸。待ってて現れるわけじゃないからね。
ゲレーロはなぜダメだった?
モリシゲさんにドミニカ共和国での話も聞いたけど、いいね、いい塩梅(あんばい)にいい加減で。たとえば、試合を見て、いいと思った選手に試合の後、話しかける。そのとき「代理人はいるのか」と聞くんだけど、たいていは「いない」と答えるらしい。無名の選手ばかりだからね。
ただ、モリシゲさんがその選手から離れると、必ずスタンドから誰かが近寄ってきて「俺はあいつの代理人だ」という。しかも、3人くらいが次々来て、「あいつは偽物だ、俺が本物の代理人だ」って。あとで選手に聞くと「あんな人たち、誰も知らない」って言うから、途中から気にしなくなったらしいけどね。
ただ、確かにダイヤの原石みたいな選手がゴロゴロいるけど、拾いたい放題かというと、少しずつ事情が変わってきているみたい。
一つはメジャーのスカウトの「青田買い」。明らかにすごい選手は、10代の半ばくらいで、メジャーが6年とか8年契約しちゃう。しかも億単位のカネでね。
こうなると、日本で育てるしかないかなという話をしていた。実際、広島の
フランスアなんて典型じゃないかな。日本に来たばかりのころは、とにかく体力がなくて。投げたら次の日、練習できないくらい。それを日本で鍛えて、いまや救世主だからね。要は、日本で修正できる課題には目をつぶって、肩の可動域とか体の柔らかさとか天性の部分を見極めて取るというね。
加えて外国人選手の場合、扱い方も大事。巨人が高いカネを出して中日から引き抜いた
ゲレーロなんて、もう完全にいらんでしょ。これから帳尻合わせに打ったとしても、もう遅過ぎだよね。
モリシゲさんは「ゲレーロがこうなるのは分かっていた」と言っていた。要はむちゃくちゃ性格が弱い男なんだ。それを周囲に隠すため虚勢を張るけど、少し結果が出ないと、すぐイライラしちゃう。こういう選手をうまく扱うには、時には厳しいことも言いながらコントロールできる人がいなきゃいけない。中日時代は、モリシゲさんが自らそれをやったと言ってた。敵ながら、あるGMにも忠告したらしいけどね。あれ、匿名になってないかな。